本編
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『おじちゃん、おじちゃん! おねーちゃんが死んじゃう、たすけて』
夜遅くにミノルから連絡があって飛び起きる。ライブキャスターに映し出されたミノルは泣きじゃくっていた。
「どうしたんや、何があったんや」
『おねーちゃん、洋服着ておふろ入ってるの。おゆが赤くて、話しかけても何も言わないの。テーブルに、おくすりの紙、いっぱい落ちてて』
「わかった、今すぐ行くで。ミノル、お風呂のお湯抜けるか?」
『うん。あとはなにすればいいの?』
「よし、ええ子や。あとはわしがするから大丈夫やで。すぐ行くから待っててくれな。一回ライブキャスター切るで」
『うん』
目的の家を見つけて扉を叩くと、ミノルが勢いよく扉を開けて抱きついてきた。来る途中に救急隊に連絡を入れたのだが、まだ来ていないようだった。ミノルに連れられて風呂場へ行くと、ナナシは浴槽に腕をだらりと垂らして倒れていた。腕からは血が流れている。切ったあとにお湯の中に腕を入れることで、血流を良くして出血量を多くする魂胆なのだろう。近くには血のついたカミソリが落ちていた。
ナナシを抱えて運び、リビングに寝かせる。テーブルの上には飲んだ薬のシートが散らばっていて、口に入らなかった分は床に転がっていた。それなりの量を飲んだようで、腕からの出血が止まらないのもその所為かもしれない。
ハンカチで止血する。腕には白く膨らんだ傷跡もあった。
「おねーちゃん、死んじゃう?」
「大丈夫や、ちゃんと息してるで。もうじき、救急隊も来るはずや」
「ママも宙ぶらりんで死んじゃったのに、おねーちゃんも死んじゃうのやだ」
『姉は病気で亡くなった』『ママも宙ぶらりんで死んじゃった』
姉は精神的な病気だったのだろう。そして、それはおそらくナナシも。
しばらくしてサイレンの音と扉を叩く音がした。そして、ナナシは救急隊によって病院に搬送された。
「おねーちゃん、今なにしてるの?」
「腹ん中きれいにしてるんや」
吐いた形跡がないのと、ミノルが一度布団に入ってからナナシを見つけるまでにそれほど時間が経っていなかったため、一応胃洗浄をしている。それから、精神が安定していないため、目を覚ましてもこのままここに入院することになった。
「ミノル、今日はもう遅いから、一回お前ん家で支度を済ましたあと、わしの家に泊まるぞ。保育園もしばらく休むよう、明日先生に連絡しに行こか。そんで、わしと一緒にギアステ行って、昼になったらまたここに来よう。ええな」
「ぼく、ここにいちゃダメ?」
「ここは泊まる場所ないで。それに、ナナシもしばらくは寝たままや。心配せんで大丈夫や。ナナシは死んだりなんかせん。ミノルはわしの言葉、信じられんか?」
首を横に振りながら、ぎゅっと服を掴んできた。
「さあ、帰るで」
ミノルは手を握ると、ナナシの寝ている部屋にバイバイと手を振った。
ふたりの家に着いてから、テーブルや床に散らばった薬を片付け、風呂場についた血も拭き取る。それから、しばらく入院するため、ナナシとミノルの着替えなどをバッグに詰め、ナナシの手持ちのパッチールとボーマンダのボールも預かった。
「おねーちゃん、このぬいぐるみ好きなんだよ」
「そうか。ならそれも持って行こか」
ミノルが持ってきたぬいぐるみはだいぶ年季の入ったパッチールのぬいぐるみだった。バッグにいれると潰れてしまいそうなので、ミノルに抱えて持って行ってもらう。
自分の家に戻りミノルをベッドに寝かせると、眠れないのか一緒にいて欲しいと言われた。なので、隣で横になるとじっと見つめられた。
「おじちゃん。おじちゃんは、おねーちゃんのこと好き?」
「なんや、藪から棒に。そうやな、ナナシはわしのかわいい後輩やで」
「コウハイだからかわいいの? おじちゃんのコウハイいっぱいいるよね?」
「うーん、まあそうやけど。他の後輩は男やからなあ」
「おねーちゃんが女の人だからかわいいの?」
「ミノルはなかなか難しい質問をしてくるなあ。確かに、女の子の後輩はナナシがはじめてやけど、ナナシはな、頑張り屋さんなんやで。仕事のことも、ミノルのことも。でも、ひとりで抱えがちで、そんなナナシを守ってやらなあかんって思うんや……」
「好きって言わないの?」
「ナナシがわしのことどう思ってるかわからんしなあ」
「おじちゃん、意外とよわごしなんだね」
「おいおい、そんな言葉、どこで覚えてきたんや」
「あのね、カズマサおにーちゃんと見たテレビで覚えた」
休憩中にドラマでも見ていたのか。子どもがいるときになんてものを見ているのかと少し呆れてしまう。
「パパはね、ママにひどいこといっぱいしたんだよ。ママ以外の女の人となかよくしたり、ママの顔たたいたり。おじちゃんは、おねーちゃんにひどいことしないよね?」
「ああ、そんなことせんで」
「おねーちゃんはママじゃないけど、ぼくのもうひとりのママなんだよ。ママが動けないときは、おねーちゃんがごはん作ったり、一緒にほいくえん行ったりした。あと公園で遊んでくれた。ふたりで住むのはママが死んじゃってからだけど、おねーちゃんとはいつも一緒。
おばあちゃんね、おねーちゃんが小さいときに死んじゃったから、ママがおねーちゃんのママをしてたんだって。だからおねーちゃん、ママのことすごい好きだったんだよ。
明日もっていくぬいぐるみね、ママがおねーちゃんに作ったんだって。おねーちゃんのお部屋、ぬいぐるみでいっぱいだけど、ママが作ったやつは特別なの」
夜遅くにミノルから連絡があって飛び起きる。ライブキャスターに映し出されたミノルは泣きじゃくっていた。
「どうしたんや、何があったんや」
『おねーちゃん、洋服着ておふろ入ってるの。おゆが赤くて、話しかけても何も言わないの。テーブルに、おくすりの紙、いっぱい落ちてて』
「わかった、今すぐ行くで。ミノル、お風呂のお湯抜けるか?」
『うん。あとはなにすればいいの?』
「よし、ええ子や。あとはわしがするから大丈夫やで。すぐ行くから待っててくれな。一回ライブキャスター切るで」
『うん』
目的の家を見つけて扉を叩くと、ミノルが勢いよく扉を開けて抱きついてきた。来る途中に救急隊に連絡を入れたのだが、まだ来ていないようだった。ミノルに連れられて風呂場へ行くと、ナナシは浴槽に腕をだらりと垂らして倒れていた。腕からは血が流れている。切ったあとにお湯の中に腕を入れることで、血流を良くして出血量を多くする魂胆なのだろう。近くには血のついたカミソリが落ちていた。
ナナシを抱えて運び、リビングに寝かせる。テーブルの上には飲んだ薬のシートが散らばっていて、口に入らなかった分は床に転がっていた。それなりの量を飲んだようで、腕からの出血が止まらないのもその所為かもしれない。
ハンカチで止血する。腕には白く膨らんだ傷跡もあった。
「おねーちゃん、死んじゃう?」
「大丈夫や、ちゃんと息してるで。もうじき、救急隊も来るはずや」
「ママも宙ぶらりんで死んじゃったのに、おねーちゃんも死んじゃうのやだ」
『姉は病気で亡くなった』『ママも宙ぶらりんで死んじゃった』
姉は精神的な病気だったのだろう。そして、それはおそらくナナシも。
しばらくしてサイレンの音と扉を叩く音がした。そして、ナナシは救急隊によって病院に搬送された。
「おねーちゃん、今なにしてるの?」
「腹ん中きれいにしてるんや」
吐いた形跡がないのと、ミノルが一度布団に入ってからナナシを見つけるまでにそれほど時間が経っていなかったため、一応胃洗浄をしている。それから、精神が安定していないため、目を覚ましてもこのままここに入院することになった。
「ミノル、今日はもう遅いから、一回お前ん家で支度を済ましたあと、わしの家に泊まるぞ。保育園もしばらく休むよう、明日先生に連絡しに行こか。そんで、わしと一緒にギアステ行って、昼になったらまたここに来よう。ええな」
「ぼく、ここにいちゃダメ?」
「ここは泊まる場所ないで。それに、ナナシもしばらくは寝たままや。心配せんで大丈夫や。ナナシは死んだりなんかせん。ミノルはわしの言葉、信じられんか?」
首を横に振りながら、ぎゅっと服を掴んできた。
「さあ、帰るで」
ミノルは手を握ると、ナナシの寝ている部屋にバイバイと手を振った。
ふたりの家に着いてから、テーブルや床に散らばった薬を片付け、風呂場についた血も拭き取る。それから、しばらく入院するため、ナナシとミノルの着替えなどをバッグに詰め、ナナシの手持ちのパッチールとボーマンダのボールも預かった。
「おねーちゃん、このぬいぐるみ好きなんだよ」
「そうか。ならそれも持って行こか」
ミノルが持ってきたぬいぐるみはだいぶ年季の入ったパッチールのぬいぐるみだった。バッグにいれると潰れてしまいそうなので、ミノルに抱えて持って行ってもらう。
自分の家に戻りミノルをベッドに寝かせると、眠れないのか一緒にいて欲しいと言われた。なので、隣で横になるとじっと見つめられた。
「おじちゃん。おじちゃんは、おねーちゃんのこと好き?」
「なんや、藪から棒に。そうやな、ナナシはわしのかわいい後輩やで」
「コウハイだからかわいいの? おじちゃんのコウハイいっぱいいるよね?」
「うーん、まあそうやけど。他の後輩は男やからなあ」
「おねーちゃんが女の人だからかわいいの?」
「ミノルはなかなか難しい質問をしてくるなあ。確かに、女の子の後輩はナナシがはじめてやけど、ナナシはな、頑張り屋さんなんやで。仕事のことも、ミノルのことも。でも、ひとりで抱えがちで、そんなナナシを守ってやらなあかんって思うんや……」
「好きって言わないの?」
「ナナシがわしのことどう思ってるかわからんしなあ」
「おじちゃん、意外とよわごしなんだね」
「おいおい、そんな言葉、どこで覚えてきたんや」
「あのね、カズマサおにーちゃんと見たテレビで覚えた」
休憩中にドラマでも見ていたのか。子どもがいるときになんてものを見ているのかと少し呆れてしまう。
「パパはね、ママにひどいこといっぱいしたんだよ。ママ以外の女の人となかよくしたり、ママの顔たたいたり。おじちゃんは、おねーちゃんにひどいことしないよね?」
「ああ、そんなことせんで」
「おねーちゃんはママじゃないけど、ぼくのもうひとりのママなんだよ。ママが動けないときは、おねーちゃんがごはん作ったり、一緒にほいくえん行ったりした。あと公園で遊んでくれた。ふたりで住むのはママが死んじゃってからだけど、おねーちゃんとはいつも一緒。
おばあちゃんね、おねーちゃんが小さいときに死んじゃったから、ママがおねーちゃんのママをしてたんだって。だからおねーちゃん、ママのことすごい好きだったんだよ。
明日もっていくぬいぐるみね、ママがおねーちゃんに作ったんだって。おねーちゃんのお部屋、ぬいぐるみでいっぱいだけど、ママが作ったやつは特別なの」