本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
カズマサさんにナナシさんと付き合っているのか聞かれたけれど、別に僕たちはそんな関係じゃない。向こうは僕のことを友達だと思っているようだし、そもそもシママの件ではっきりとそう言っていた。距離感が近いのも、僕のことを異性として見ていないからこそできる芸当だろう。
ナナシさんは確かにかわいいと思う。ニコニコと笑顔で手を振ってきたり、キラキラした目で勢いよく話し始めたり、かと思えばちょっとしたことで頬を膨らませて拗ねてみせたり。一緒にいると表情がころころ変わって面白い。
しかし、ナナシさんはときどきさびしそうに笑うことがある。何に対してそう思っているのか彼女は何も言わないし、僕も特別聞いたりしない。唯一、30年前の友達との約束を破ってしまった話を聞いたくらいで、それ以外はほぼ知らない。彼女にとって、僕はきっとなんの力にもなれないんだろうなと思う。
ふと、くだらないことでケンカした日のことと、休日に僕の部屋で一緒に雑誌を読んだことを思い出す。ナナシさんは服装のことで少し悩んでいて、別に今のままで十分だと思っていたけれど、確かに雑誌を読んでみたらナナシさんに似合いそうな服も載っていた。ジャッジさんがナナシさんに言った理由もなんとなく理解できる。
ナナシさんがおしゃれをしてデートしたい相手、というのは誰なんだろう。あのときは冗談で答えたんだろうけれど、仮にジャッジさんだとしたら少しムカつく。
そういえば、夏だから水着特集も載っていた。ナナシさんは結構細身っぽいし、どんなものが似合うんだろう。幽霊だから触れることはできないけれど、女の子の肌はふわふわしているものなんだろうか。触ってみたいなんて、思ったり、思わなかったり。
下腹部に不快感を覚えて、いつもより早い時間に起きた。そして、不快感の原因に気づき、顔が青くなるのを感じる。思春期の子どもじゃあるまいし、まさかそんなことあるだろうか。そうやって少し現実逃避をしてみたけれど、事実に変わりはなかった。思わずため息をついてしまう。 着替えてから洗面所へ移動する。何が悲しくてこんな時間に洗濯をしないといけないのか。罪悪感がすさまじく、彼女と顔を合わせることも後ろめたかった。
「ジャッキーおはよ」
「うわっ、お、おはようございます」
今一番会いたくない人物に会ってしまい、つい吃ってしまった。ナナシさんは少しムッとした表情を見せた。
「普通、人の顔見てそんなに驚く? ちょっと心外」
「いや、その、ぼーっとしてて」
なんで? と言いたげにナナシさんは不思議そうな目でこちらを見た。その純粋な目を見ると、余計に罪悪感が増す。
「ジャッキー、体調悪い? なんか元気ないけど」
「そんなことないです、それでは」
「え……うん」
気の利いた言い訳もできず、そそくさと場を離れる。ナナシさんには悪いけれど、一緒にいるのが今は気まずい。
「ジャッキー、どうしたのさ」
午前の業務を終えて休憩室でぐったりしていると、ラムセスさんに声をかけられた。隣にはキャメロンさんもいる。なかなかめんどくさいコンビだ。
「別に、なんでもないです」
「ナナシニ振ラレタトカ?」
キャメロンさんはケラケラと笑いながら、マア元気出セヨ、と言っている。
「違いますよ! 僕とナナシさんはそういう関係じゃないし」
「またケンカしたとか?」
「それも違いますけど……」
今回はケンカしたわけじゃない。僕がただ一方的にナナシさんを避けているだけだ。ナナシさんと顔を会わせるのが気まずい、と言うと、ラムセスさんとキャメロンさんは、はあ? と言いたげな表情をした。
「罪悪感がひどくて……」
「ナナシに何したのさ」
何かしたか、と言われると、別に現実世界でやらかしたわけではない。それでも少し口に出すのは躊躇われる。なので少し黙ったあと、ばつが悪そうにぽつりと「……夢の中で」と呟くと、その言葉で察したラムセスさんとキャメロンさんが大笑いした。恥ずかしいからあまり言いたくなかったのに、そんなに笑わなくてもいいじゃないか、と少しイラっとする。
「ジャッキーもまだまだお子様なのさ」
「健全ナ男ノ子ダモノ、仕方ナイヨネー!」
「うるさいですよ」
僕より少し年上なだけのくせに子ども扱いしやがって。
「ジャッキー、耳マデ真ッ赤! オクタンミタイ」
「ナナシさんに言わないでくださいよ」
ふたりの性格的に大丈夫だろうとは思うが、一応釘を刺しておく。ラムセスさんはやれやれと言いたげに苦笑いをした。
「流石にそんなかわいそうな真似はしないさ」
「自分ガネタニサレタトカ知ッタラ、ショックヲ受ケルカモシレナイシネ」
「僕は別にそういうつもりじゃ」
「生理現象だから仕方ないさ、それにそんなに気に病む必要もないのさ」
「夢ダモンネー、不可抗力ダモンネー」
「もう、いいです!」
ケラケラと笑うふたりを置いて、僕は早めに午後の配置についた。
ナナシさんは確かにかわいいと思う。ニコニコと笑顔で手を振ってきたり、キラキラした目で勢いよく話し始めたり、かと思えばちょっとしたことで頬を膨らませて拗ねてみせたり。一緒にいると表情がころころ変わって面白い。
しかし、ナナシさんはときどきさびしそうに笑うことがある。何に対してそう思っているのか彼女は何も言わないし、僕も特別聞いたりしない。唯一、30年前の友達との約束を破ってしまった話を聞いたくらいで、それ以外はほぼ知らない。彼女にとって、僕はきっとなんの力にもなれないんだろうなと思う。
ふと、くだらないことでケンカした日のことと、休日に僕の部屋で一緒に雑誌を読んだことを思い出す。ナナシさんは服装のことで少し悩んでいて、別に今のままで十分だと思っていたけれど、確かに雑誌を読んでみたらナナシさんに似合いそうな服も載っていた。ジャッジさんがナナシさんに言った理由もなんとなく理解できる。
ナナシさんがおしゃれをしてデートしたい相手、というのは誰なんだろう。あのときは冗談で答えたんだろうけれど、仮にジャッジさんだとしたら少しムカつく。
そういえば、夏だから水着特集も載っていた。ナナシさんは結構細身っぽいし、どんなものが似合うんだろう。幽霊だから触れることはできないけれど、女の子の肌はふわふわしているものなんだろうか。触ってみたいなんて、思ったり、思わなかったり。
下腹部に不快感を覚えて、いつもより早い時間に起きた。そして、不快感の原因に気づき、顔が青くなるのを感じる。思春期の子どもじゃあるまいし、まさかそんなことあるだろうか。そうやって少し現実逃避をしてみたけれど、事実に変わりはなかった。思わずため息をついてしまう。 着替えてから洗面所へ移動する。何が悲しくてこんな時間に洗濯をしないといけないのか。罪悪感がすさまじく、彼女と顔を合わせることも後ろめたかった。
「ジャッキーおはよ」
「うわっ、お、おはようございます」
今一番会いたくない人物に会ってしまい、つい吃ってしまった。ナナシさんは少しムッとした表情を見せた。
「普通、人の顔見てそんなに驚く? ちょっと心外」
「いや、その、ぼーっとしてて」
なんで? と言いたげにナナシさんは不思議そうな目でこちらを見た。その純粋な目を見ると、余計に罪悪感が増す。
「ジャッキー、体調悪い? なんか元気ないけど」
「そんなことないです、それでは」
「え……うん」
気の利いた言い訳もできず、そそくさと場を離れる。ナナシさんには悪いけれど、一緒にいるのが今は気まずい。
「ジャッキー、どうしたのさ」
午前の業務を終えて休憩室でぐったりしていると、ラムセスさんに声をかけられた。隣にはキャメロンさんもいる。なかなかめんどくさいコンビだ。
「別に、なんでもないです」
「ナナシニ振ラレタトカ?」
キャメロンさんはケラケラと笑いながら、マア元気出セヨ、と言っている。
「違いますよ! 僕とナナシさんはそういう関係じゃないし」
「またケンカしたとか?」
「それも違いますけど……」
今回はケンカしたわけじゃない。僕がただ一方的にナナシさんを避けているだけだ。ナナシさんと顔を会わせるのが気まずい、と言うと、ラムセスさんとキャメロンさんは、はあ? と言いたげな表情をした。
「罪悪感がひどくて……」
「ナナシに何したのさ」
何かしたか、と言われると、別に現実世界でやらかしたわけではない。それでも少し口に出すのは躊躇われる。なので少し黙ったあと、ばつが悪そうにぽつりと「……夢の中で」と呟くと、その言葉で察したラムセスさんとキャメロンさんが大笑いした。恥ずかしいからあまり言いたくなかったのに、そんなに笑わなくてもいいじゃないか、と少しイラっとする。
「ジャッキーもまだまだお子様なのさ」
「健全ナ男ノ子ダモノ、仕方ナイヨネー!」
「うるさいですよ」
僕より少し年上なだけのくせに子ども扱いしやがって。
「ジャッキー、耳マデ真ッ赤! オクタンミタイ」
「ナナシさんに言わないでくださいよ」
ふたりの性格的に大丈夫だろうとは思うが、一応釘を刺しておく。ラムセスさんはやれやれと言いたげに苦笑いをした。
「流石にそんなかわいそうな真似はしないさ」
「自分ガネタニサレタトカ知ッタラ、ショックヲ受ケルカモシレナイシネ」
「僕は別にそういうつもりじゃ」
「生理現象だから仕方ないさ、それにそんなに気に病む必要もないのさ」
「夢ダモンネー、不可抗力ダモンネー」
「もう、いいです!」
ケラケラと笑うふたりを置いて、僕は早めに午後の配置についた。