本編
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休憩時間になり、僕も休憩室に入る。僕の姿を見つけたナナシさんは笑顔で手を振ったが、すぐに心配そうな表情に変わった。
「どうだった? トレーナー、迎えに来そう?」
ナナシさんの言葉に僕は首を横に振った。
「いいえ、全く来る気配がありません。それに、迷子の捜索願いも出てませんでしたし」
「やっぱり捨てられちゃったのかなあ……嫌なやつ。体があったら蹴り上げたい」
「ずいぶんと過激な発言ですね……確かに気持ちはわかりますけど」
ほぼわかりきっていた答えだったが、やはりトレーナーに捨てられてしまったという事実を悲しく思う。僕はちらりとシママを見る。シママは足を伸ばして座っているナナシさんの太ももあたりに顎を乗せるような仕草をしていた。ナナシさんには全く警戒していないようだった。
ふと、昼前に僕が用意した容器を見ると、中身が全く減っていなかった。
「あれ、ポケモンフーズ、全然減ってませんね。シママ、食べなかったんですか?」
「うん。ご飯食べようよって促しても、わたしに擦り寄るだけで食べてくれないんだ」
「僕が用意したものだから警戒しているのでしょうか」
「そんな、わたしじゃご飯用意できないよ」
「困りましたね……」
ナナシさんには警戒していないので、きっと彼女が用意したものならば安心して食べられるのだろうが、何しろナナシさんはものに触れられる体ではない。ナナシさんが再びシママに説得を試みる。
「シママー、ご飯食べようよ。じゃないと、わたしみたいにスケスケスケルトンになっちゃうよ」
「スケスケスケルトンってなんですか……」
ナナシさんの言葉遊びにはときどきついて行けない。なんだそれ……と僕が思っているとナナシさんは何かを思いついたようでバッと顔を上げた。
「そうだ、ポケモンと一緒だったら安心するかな? ねえねえ、フローゼルももうご飯の時間でしょ」
「ええ、そうですね」
「フローゼルもシママと一緒にご飯食べようよ」
「効果あるかはわかりませんが、とりあえずやってみましょうか」
僕がボールを投げるとフローゼルが飛び出す。その様子にシママは驚いて少し警戒を始めた。しかし、僕のときと比べると幾分かマシなように見える。
「シママ、フローゼルは怖い子じゃないよ。わたしと友達だよ。ほら、フローゼル、ぎゅーっ」
ナナシさんはフローゼルのことを抱きしめる真似をした。フローゼルもそれを真似してナナシさんに腕を回す。シママはその様子をじっと見ている。
「シママも、ぎゅーっ」
ナナシさんはフローゼルを抱きしめたあと、シママのことも抱きしめる真似をした。フローゼルがシママの隣に座り、僕もフローゼル用の食事を近くに置く。先ほどよりもだいぶ警戒を解いたようではあるが、それでも食事を取ることを躊躇っていた。
「まだ怖い? だめ? 悪いものは何も入ってないよ?」
そのとき、休憩室にシャララランという音が響いた。ノボリさんのシャンデラがこちらへ遊びに来たようだった。ナナシさんは笑顔でシャンデラを呼ぶ。
「あ、シャンデラ! 今ね、シママと友達になろうとしてるの。シャンデラもシママと友達になってくれる?」
シャララランと鳴きながらシャンデラがくるりと回る。ナナシさんの言葉に了承しているようだった。すると、シママの様子がフローゼルのときと違っていた。シャンデラの動きに合わせて周りをぴょこぴょこ跳ねている。その姿に思わず隣にいるフローゼルも目をぱちくりさせた。
「あれ、シママ、シャンデラのことは怖がってないね。ゴーストタイプは大丈夫なの?」
しかし、後から入ってきたノボリさんを見るとまた威嚇を始めた。僕とフローゼルのことは警戒して、ナナシさんとシャンデラのことは警戒しない違い。ナナシさんとシャンデラは一応ゴーストという共通点があるが、その他に警戒するものとしないものの共通点。
「これもしかして、男性に対してだけ威嚇してないですか?」
僕の問いにナナシさんは、あー、と声を上げる。
「確かに、もしかしたらそうかも。構内にいたときも、男の人を見るたびに怯えてたような気がする。それに、さっきから休憩室に入ってくるのも男の人ばっかりだし。えー、じゃあ、ジャッキー女装する?」
「なんでそんな発想に至るんですか……」
「うーん……あ。じゃあ、整備士さんに頼む? ほら、クダリのとこの」
どうも、ナナシさんはクダリさんの彼女のことを言っているようだった。しかし残念なことに、整備班の方が鉄道員よりも30分休憩時間が早い。
「整備班とは休憩時間が少しずれてますからね……ちょうど今から午後の業務が始まるところですよ」
「えー! じゃあ、さっき見かけたときに頼めばよかった。残念……」
ナナシさんは失敗した、というように肩を落とした。
このシママのトレーナーは男だったのだろうか。そいつに何か嫌なことをされたのだろうか。だから怖がっているのだろうか。ナナシさんの言うように、ポケモンを傷つけるやつは許せない。
「ねえねえ、シママ、このお兄さんはわたしの友達だよ。怖い人じゃないよ」
「ええ、あなたに怖い思いはさせません」
僕はシママの目線の高さに合わせて片膝をついた。するとナナシさんは徐に立ち上がり僕の方へ移動すると、先ほどフローゼルやシママにやったことと同じことを僕にもやってのけた。
「そうだよシママ、怖い思いなんてさせないよ。ほら、ジャッキー、ぎゅーっ。わたしたち仲良しでしょ」
「ちょ、ちょっとナナシさん!」
ここ休憩室なんですけど、ちょうど今鉄道員たちの休憩時間なんですけど、という思いはナナシさんに伝わらない。彼女としてはとても真剣な行動なのだ。しかし、周りの鉄道員からの視線が熱い。
シャンデラとフローゼルもシママに何か言っている。すると、シママは僕とナナシさんを交互に見ながら、おずおずとポケモンフーズを食べだした。
「あ、やった! ジャッキー、シママがご飯食べたよ! フローゼルとシャンデラもありがと! シママ、ご飯おいしい?」
シママはキュルルルと鳴いてみせた。まだ食べるのが下手なようで、口からポロポロとこぼしている。それに見かねたフローゼルがシママの食事を手伝い始めた。
ナナシさんが嬉しそうに跳ねているのは微笑ましい。僕もシママが食事を取ってくれたことを嬉しく思う。しかし、周りからの視線が痛い。この中で僕はこれから昼食を取らねばならないのか。
「わしらは一体何を見せられてるんや……」
「すごい! ナナシさんってば大胆だなあ!」
「ジャッキー固マッテテ超ウケル」
「ナナシからすると、ジャッキーの扱いとポケモンの扱いは同じようなものなのさ」
「ナナシ様にはもう少し恥じらいの心を持っていただきたいものです」
「やっほー! あれ? みんな、どうしたの? 何かいいことあった?」
「あー! 遅いですよ白ボス! もう少し早ければおもしろいものが見られたのに」
「そうなの? あらら、残念」
「どうだった? トレーナー、迎えに来そう?」
ナナシさんの言葉に僕は首を横に振った。
「いいえ、全く来る気配がありません。それに、迷子の捜索願いも出てませんでしたし」
「やっぱり捨てられちゃったのかなあ……嫌なやつ。体があったら蹴り上げたい」
「ずいぶんと過激な発言ですね……確かに気持ちはわかりますけど」
ほぼわかりきっていた答えだったが、やはりトレーナーに捨てられてしまったという事実を悲しく思う。僕はちらりとシママを見る。シママは足を伸ばして座っているナナシさんの太ももあたりに顎を乗せるような仕草をしていた。ナナシさんには全く警戒していないようだった。
ふと、昼前に僕が用意した容器を見ると、中身が全く減っていなかった。
「あれ、ポケモンフーズ、全然減ってませんね。シママ、食べなかったんですか?」
「うん。ご飯食べようよって促しても、わたしに擦り寄るだけで食べてくれないんだ」
「僕が用意したものだから警戒しているのでしょうか」
「そんな、わたしじゃご飯用意できないよ」
「困りましたね……」
ナナシさんには警戒していないので、きっと彼女が用意したものならば安心して食べられるのだろうが、何しろナナシさんはものに触れられる体ではない。ナナシさんが再びシママに説得を試みる。
「シママー、ご飯食べようよ。じゃないと、わたしみたいにスケスケスケルトンになっちゃうよ」
「スケスケスケルトンってなんですか……」
ナナシさんの言葉遊びにはときどきついて行けない。なんだそれ……と僕が思っているとナナシさんは何かを思いついたようでバッと顔を上げた。
「そうだ、ポケモンと一緒だったら安心するかな? ねえねえ、フローゼルももうご飯の時間でしょ」
「ええ、そうですね」
「フローゼルもシママと一緒にご飯食べようよ」
「効果あるかはわかりませんが、とりあえずやってみましょうか」
僕がボールを投げるとフローゼルが飛び出す。その様子にシママは驚いて少し警戒を始めた。しかし、僕のときと比べると幾分かマシなように見える。
「シママ、フローゼルは怖い子じゃないよ。わたしと友達だよ。ほら、フローゼル、ぎゅーっ」
ナナシさんはフローゼルのことを抱きしめる真似をした。フローゼルもそれを真似してナナシさんに腕を回す。シママはその様子をじっと見ている。
「シママも、ぎゅーっ」
ナナシさんはフローゼルを抱きしめたあと、シママのことも抱きしめる真似をした。フローゼルがシママの隣に座り、僕もフローゼル用の食事を近くに置く。先ほどよりもだいぶ警戒を解いたようではあるが、それでも食事を取ることを躊躇っていた。
「まだ怖い? だめ? 悪いものは何も入ってないよ?」
そのとき、休憩室にシャララランという音が響いた。ノボリさんのシャンデラがこちらへ遊びに来たようだった。ナナシさんは笑顔でシャンデラを呼ぶ。
「あ、シャンデラ! 今ね、シママと友達になろうとしてるの。シャンデラもシママと友達になってくれる?」
シャララランと鳴きながらシャンデラがくるりと回る。ナナシさんの言葉に了承しているようだった。すると、シママの様子がフローゼルのときと違っていた。シャンデラの動きに合わせて周りをぴょこぴょこ跳ねている。その姿に思わず隣にいるフローゼルも目をぱちくりさせた。
「あれ、シママ、シャンデラのことは怖がってないね。ゴーストタイプは大丈夫なの?」
しかし、後から入ってきたノボリさんを見るとまた威嚇を始めた。僕とフローゼルのことは警戒して、ナナシさんとシャンデラのことは警戒しない違い。ナナシさんとシャンデラは一応ゴーストという共通点があるが、その他に警戒するものとしないものの共通点。
「これもしかして、男性に対してだけ威嚇してないですか?」
僕の問いにナナシさんは、あー、と声を上げる。
「確かに、もしかしたらそうかも。構内にいたときも、男の人を見るたびに怯えてたような気がする。それに、さっきから休憩室に入ってくるのも男の人ばっかりだし。えー、じゃあ、ジャッキー女装する?」
「なんでそんな発想に至るんですか……」
「うーん……あ。じゃあ、整備士さんに頼む? ほら、クダリのとこの」
どうも、ナナシさんはクダリさんの彼女のことを言っているようだった。しかし残念なことに、整備班の方が鉄道員よりも30分休憩時間が早い。
「整備班とは休憩時間が少しずれてますからね……ちょうど今から午後の業務が始まるところですよ」
「えー! じゃあ、さっき見かけたときに頼めばよかった。残念……」
ナナシさんは失敗した、というように肩を落とした。
このシママのトレーナーは男だったのだろうか。そいつに何か嫌なことをされたのだろうか。だから怖がっているのだろうか。ナナシさんの言うように、ポケモンを傷つけるやつは許せない。
「ねえねえ、シママ、このお兄さんはわたしの友達だよ。怖い人じゃないよ」
「ええ、あなたに怖い思いはさせません」
僕はシママの目線の高さに合わせて片膝をついた。するとナナシさんは徐に立ち上がり僕の方へ移動すると、先ほどフローゼルやシママにやったことと同じことを僕にもやってのけた。
「そうだよシママ、怖い思いなんてさせないよ。ほら、ジャッキー、ぎゅーっ。わたしたち仲良しでしょ」
「ちょ、ちょっとナナシさん!」
ここ休憩室なんですけど、ちょうど今鉄道員たちの休憩時間なんですけど、という思いはナナシさんに伝わらない。彼女としてはとても真剣な行動なのだ。しかし、周りの鉄道員からの視線が熱い。
シャンデラとフローゼルもシママに何か言っている。すると、シママは僕とナナシさんを交互に見ながら、おずおずとポケモンフーズを食べだした。
「あ、やった! ジャッキー、シママがご飯食べたよ! フローゼルとシャンデラもありがと! シママ、ご飯おいしい?」
シママはキュルルルと鳴いてみせた。まだ食べるのが下手なようで、口からポロポロとこぼしている。それに見かねたフローゼルがシママの食事を手伝い始めた。
ナナシさんが嬉しそうに跳ねているのは微笑ましい。僕もシママが食事を取ってくれたことを嬉しく思う。しかし、周りからの視線が痛い。この中で僕はこれから昼食を取らねばならないのか。
「わしらは一体何を見せられてるんや……」
「すごい! ナナシさんってば大胆だなあ!」
「ジャッキー固マッテテ超ウケル」
「ナナシからすると、ジャッキーの扱いとポケモンの扱いは同じようなものなのさ」
「ナナシ様にはもう少し恥じらいの心を持っていただきたいものです」
「やっほー! あれ? みんな、どうしたの? 何かいいことあった?」
「あー! 遅いですよ白ボス! もう少し早ければおもしろいものが見られたのに」
「そうなの? あらら、残念」
