本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
水曜日、サンヨウレストラン。よくデパートや飲食店で〇〇デーというのを聞くけれど、このレストランでは水曜日がカップルデーで、限定のスイーツが提供されるらしい。ナナシちゃんは前からこのスイーツが気になっていたようだけれど、一緒に行ける人がいなかったため半ば諦めていたようだ。けれどもこうして都合のいい男(というと悲しい)ができたため、表情が明るい。
レストランに入ると熱血! といった具合の男の子に案内された。外装が豪華な造りだったのでドレスコードを気にした方がよかったのか少し焦ったけれど、思っていたよりフランクな印象だった。店内は女性客とカップルで賑わっている。
「オーダー、このポッド様が承るぜ!」
「ああ、はい」
ウエイトレスのテンションとナナシちゃんのテンションの差が激しすぎて、見ているこちらが風邪を引きそうになる。それでも、限定スイーツを頼めることに嬉しそうだ。
「にしても、はじめて見る顔だな。ここ、基本的にリピーターばっかりだから」
リピーター客というのは、先ほどから黄色い声を上げている女性客のことだろうか。ウエイトレスがホールとキッチンを出入りするたびに表情を変え、〇〇くん推しみたいなことを話しているので、ウエイトレスの中に意中の人がいるらしい。
「僕はライモンシティに住んでるから、こっちにはあんまり……ナナシちゃんは来たことなかったの?」
「格式高そうなレストランにはなかなか入りづらくて」
確かに外装は高級そうなレストランだけどまだ一度も来店したことないのか、と思っていると、赤髪のウエイトレスは不思議そうな顔をした。
「ん? お前はサンヨウシティに住んでんの? 見たことないけど」
「昔から住んでますよ。今度からちゃんと街を散策することですね」
少し苛立った様子でナナシちゃんが赤髪のウエイトレスを見る。すると、奥から落ち着いた印象のウエイトレスが出てきて頭を下げた。どうも赤髪の子はフランクすぎてズケズケとものを言いがちならしい。僕も似たようなことをやってしまう癖があるので、緑髪の子に注意されているウエイトレスを見ながら自戒する。その後、お詫びに別のスイーツもつけてくれたので、一旦ナナシちゃんの機嫌はよくなった。
「おいしい?」
「おいしいです。カズマサさん、また水曜日に休み入れてくださいね」
「休みの希望は20日までに申請しないといけないから、行きたい日が決まってたら早めに教えてくれると嬉しいな」
よっぽど気に入ったようで、遠回しにデート(と僕が勝手に思っているだけだけど……)の誘いをしてくれた。了承すると嬉しそうな顔を見せた。
スイーツを食べ終わると、どこか行きたいところはあるかと尋ねられた。特にこれといったものは決めていなかったのでナナシちゃんおすすめの場所がいいと答えたら、おすすめは特にないと切られてしまった。一応ライモンシティからカノコタウンまでは配達ルートなのでどこに何があるかということを知っているけれど、その中で興味を惹かれるものはないらしい。ただ、森など配達時に寄らないところは少し気になると言うので、サンヨウシティから歩いてヤグルマの森へ向かうことにした。
「いつもはペリッパーさんに乗るから、ヒウンシティとシッポウシティの間はすっぽかしていくんです。だからこうやって森の中にちゃんと入るのははじめてかも」
郵便屋さんになってから2ヶ月近く経つのに、家の近所ですら配達ルート以外の場所はまだ知らないんだな、と思いながら森へ入る。もう11月ということもあって、葉は赤や黄色に染まっていた。落ち葉を見て、1年ってあっという間だなあ、と思っていると、足元でパキッと枝の折れる音がする。それに驚いて、近くのポケモンたちが草陰に隠れて行った。ナナシちゃんはその様子を珍しそうに見ている。
「サンヨウシティから近いんだし、たまにはこうして散歩でもすればいいのに。季節によって表情が違うから、案外来てみると面白いと思うよ」
「森はくさタイプが多いからあんまり。タイプ相性的によくないし」
「ペリッパーさん以外のポケモンもみずタイプなの?」
「そうですね、海の多いところで育ったし」
「サンヨウシティに海はないけど」
「セイガイハシティに祖父母がいるんです。それより早く行きましょ」
「待って、こんなところでローラーシューズなんか走らせたら」
危ないよ、と言い切る前にナナシちゃんは体勢を崩した。足元は落ち葉によって普段走る道路よりも滑りやすく、ときどき落ちている枝のせいで凸凹している箇所もある。ぎりぎり転ばないように体を支えられたけれど、顔を少し歪ませていた。足を挫いたのかもしれない。近くにあった切り株に腰をかけ試しに靴を脱がせると、左の足首が赤くなっていた。
「そうやって急ぐから。もうすぐ森の出口だし、ヒウンシティのポケモンセンターで手当てしてもらおう! ペリッパーさん、場所わかるよね?」
ペリッパーさんはナナシちゃんを乗せるとゆっくりとはばたいた。僕の歩く速度に合わせてくれているらしい。スカイアローブリッジをゆったりと進む。ポケモンセンターに着いてジョーイさんに手当てをしてもらうと、ナナシちゃんはひどく落ち込んだ様子だった。
「カズマサさん、すみません」
「ううん。僕は大丈夫だけど、今度からああいうところでローラーシュズを走らせたらダメだよ。それより、足の痛みはどう?」
「だいぶ平気になりました」
申し訳なさそうな顔をして足元を見ているので、また限定スイーツの日は付き合うから元気出してと言っても表情を曇らせたままだ。先ほどのやり取りを思い出しているのだろうか。
ナナシちゃんの本当の出身地は、いったいどこなんだろう。
レストランに入ると熱血! といった具合の男の子に案内された。外装が豪華な造りだったのでドレスコードを気にした方がよかったのか少し焦ったけれど、思っていたよりフランクな印象だった。店内は女性客とカップルで賑わっている。
「オーダー、このポッド様が承るぜ!」
「ああ、はい」
ウエイトレスのテンションとナナシちゃんのテンションの差が激しすぎて、見ているこちらが風邪を引きそうになる。それでも、限定スイーツを頼めることに嬉しそうだ。
「にしても、はじめて見る顔だな。ここ、基本的にリピーターばっかりだから」
リピーター客というのは、先ほどから黄色い声を上げている女性客のことだろうか。ウエイトレスがホールとキッチンを出入りするたびに表情を変え、〇〇くん推しみたいなことを話しているので、ウエイトレスの中に意中の人がいるらしい。
「僕はライモンシティに住んでるから、こっちにはあんまり……ナナシちゃんは来たことなかったの?」
「格式高そうなレストランにはなかなか入りづらくて」
確かに外装は高級そうなレストランだけどまだ一度も来店したことないのか、と思っていると、赤髪のウエイトレスは不思議そうな顔をした。
「ん? お前はサンヨウシティに住んでんの? 見たことないけど」
「昔から住んでますよ。今度からちゃんと街を散策することですね」
少し苛立った様子でナナシちゃんが赤髪のウエイトレスを見る。すると、奥から落ち着いた印象のウエイトレスが出てきて頭を下げた。どうも赤髪の子はフランクすぎてズケズケとものを言いがちならしい。僕も似たようなことをやってしまう癖があるので、緑髪の子に注意されているウエイトレスを見ながら自戒する。その後、お詫びに別のスイーツもつけてくれたので、一旦ナナシちゃんの機嫌はよくなった。
「おいしい?」
「おいしいです。カズマサさん、また水曜日に休み入れてくださいね」
「休みの希望は20日までに申請しないといけないから、行きたい日が決まってたら早めに教えてくれると嬉しいな」
よっぽど気に入ったようで、遠回しにデート(と僕が勝手に思っているだけだけど……)の誘いをしてくれた。了承すると嬉しそうな顔を見せた。
スイーツを食べ終わると、どこか行きたいところはあるかと尋ねられた。特にこれといったものは決めていなかったのでナナシちゃんおすすめの場所がいいと答えたら、おすすめは特にないと切られてしまった。一応ライモンシティからカノコタウンまでは配達ルートなのでどこに何があるかということを知っているけれど、その中で興味を惹かれるものはないらしい。ただ、森など配達時に寄らないところは少し気になると言うので、サンヨウシティから歩いてヤグルマの森へ向かうことにした。
「いつもはペリッパーさんに乗るから、ヒウンシティとシッポウシティの間はすっぽかしていくんです。だからこうやって森の中にちゃんと入るのははじめてかも」
郵便屋さんになってから2ヶ月近く経つのに、家の近所ですら配達ルート以外の場所はまだ知らないんだな、と思いながら森へ入る。もう11月ということもあって、葉は赤や黄色に染まっていた。落ち葉を見て、1年ってあっという間だなあ、と思っていると、足元でパキッと枝の折れる音がする。それに驚いて、近くのポケモンたちが草陰に隠れて行った。ナナシちゃんはその様子を珍しそうに見ている。
「サンヨウシティから近いんだし、たまにはこうして散歩でもすればいいのに。季節によって表情が違うから、案外来てみると面白いと思うよ」
「森はくさタイプが多いからあんまり。タイプ相性的によくないし」
「ペリッパーさん以外のポケモンもみずタイプなの?」
「そうですね、海の多いところで育ったし」
「サンヨウシティに海はないけど」
「セイガイハシティに祖父母がいるんです。それより早く行きましょ」
「待って、こんなところでローラーシューズなんか走らせたら」
危ないよ、と言い切る前にナナシちゃんは体勢を崩した。足元は落ち葉によって普段走る道路よりも滑りやすく、ときどき落ちている枝のせいで凸凹している箇所もある。ぎりぎり転ばないように体を支えられたけれど、顔を少し歪ませていた。足を挫いたのかもしれない。近くにあった切り株に腰をかけ試しに靴を脱がせると、左の足首が赤くなっていた。
「そうやって急ぐから。もうすぐ森の出口だし、ヒウンシティのポケモンセンターで手当てしてもらおう! ペリッパーさん、場所わかるよね?」
ペリッパーさんはナナシちゃんを乗せるとゆっくりとはばたいた。僕の歩く速度に合わせてくれているらしい。スカイアローブリッジをゆったりと進む。ポケモンセンターに着いてジョーイさんに手当てをしてもらうと、ナナシちゃんはひどく落ち込んだ様子だった。
「カズマサさん、すみません」
「ううん。僕は大丈夫だけど、今度からああいうところでローラーシュズを走らせたらダメだよ。それより、足の痛みはどう?」
「だいぶ平気になりました」
申し訳なさそうな顔をして足元を見ているので、また限定スイーツの日は付き合うから元気出してと言っても表情を曇らせたままだ。先ほどのやり取りを思い出しているのだろうか。
ナナシちゃんの本当の出身地は、いったいどこなんだろう。