申し訳ない気持ちになりながら紅茶を啜っていると扉が開く音がする
出てきたイソップくんは目を伏せてつつこちらに近寄ってきた
比較的に新しいその衣装は確か…【琴師】だったかな

「…」
『えっと…』

戸惑うようにイソップくんの視線が様々な方に向く
そういえば衣装説明に男が、その音色以外で何かを語ることは決してない。っていう文があったけれどもしかしたらピアノがない安心しないのかな…

『イソップくん、少し待っていて』

自室からおもちゃの鍵盤を引っ張り出し急ぎ足でイソップくんの部屋に戻る
椅子に座って待っていた彼の前におもちゃの鍵盤を置くと驚いた表情でこちらを見た

『これがあった方が安心すると思って…どうかな？』
「…」

ポロンっと音が響く、まるで同意をしてくれたみたいで安心からか息を吐いた
隣に腰を下ろして彼の手元を見ていると少し指先を彷徨わせてから両手の指を鍵盤に乗せゆっくりと音を奏でる
その音に耳を傾ける…優しい曲調から楽しそうな曲調に変わるのはなんだか意外だった
もっと柔らかい曲を弾くと思った…

「…ジュトゥヴ…という曲です」
『え…』

それだけを言って、その場にある適当な服を取りウォークインクローゼットの方へと入ってしまった
ジュトゥヴ…詳しくは知らないけれど確か恋の曲だったっけ…
イソップくんが恋愛ソングを弾くなんて意外だ…

【琴師】
fin