人狼
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ガラスの割れる音が響き私は目を開く
空には大嫌いな満月が輝き海の音が耳に入ってくる
自分がいた船の上から辺りを見渡すと丁度下辺りに人影が見えた
私は迷わずその人影の前に降り立つと驚いた顔でこちらを見られる
『初めまして、とても月が綺麗な夜だね』
私が微笑むと戸惑うようにその場から動かなくなる男性を観察する
観ることは大事だ。生きるためにも狩りをするためにも
マスクをしているけれど美丈夫な顔立ちなことがわかる程綺麗な人。線が細くて食べ応えはなさそうだけど…
それにしても、サバイバーはハンターが近づくとすぐに逃げると聞いたけれどなかなか逃げないことを不思議に思いハッとした
私は今は人の姿だったなっと彼も逃げるべきか悩んでるのだろう、私としたことが失礼なことをしてしまった
獲物だとしてもちゃんと鬼ごっこしてくれないと
楽しくないしね
「…っ!!?」
息を飲む音が聞こえた。さっきよりもちゃんと音がハッキリ聴こえるし感覚が鋭くなるのも感じる
ああ、でも本調子まではいかないかな…そういえば黄色い鳥…ナイチンゲールとか言ったかな?が、ゲームバランスがどうの言っていたっけ…
そのせいか…まぁ、いいや。ハンデがあっても遊べれば何でもいいし
『ねぇ、ちゃんと逃げてね…これ鬼ごっこなんでしょう?
楽しいゲームの開幕と行こうじゃない』
さぁ、いっぱい遊び回りましょ!っと気持ちが昂る
が目の前の獲物はなお動こうとしない
私の姿がそんなに恐ろしいのだろうか??いや、ここは異形な姿のモノたちが他にも存在すると聞いた。まだ会っていないけれど
もしかしたら体調でも悪かったのだろうか?それじゃあツマラナイ遊びがいがない
「綺麗…」
『は?』
「え、あ…っす、すみません…
いや、綺麗と思ったのは本当で…っ!あ、いやよく見ると可愛らしさの方がとても強いとも…えっと…」
『貴方…友達いないでしょ?』
「ひぃ、すみませ…っ」
ボソボソと呟くように話す彼の目の前まで距離を詰める。私は耳が良いから離れていても聞こえたけれど、目を逸らしながら話されるのはあまり好きじゃない
私よりも背がある彼を近づいた時の勢いのまま押し倒し、顔を私の方に固定するように両手で抑えると戸惑いながらも目を合わせてくれる
久々に感じる暖かさに少しだけ安心感が湧いたのは気のせいだと思いたい
「…つめたい」
『あはっ!それは死人である私を侮辱してるのかな!?』
「ち、ちが!死者を侮辱なんて…!」
『…そこは必死に否定するんだ』
「え…」
『貴方…とても変な人。それに、髪色が狼みたいて素敵…』
彼の手を掴み口で手袋を外し手のひらを見ると予想に反し少し爛れていた。これは薬品とかでついたものなのだろうか、人によっては醜いと感じるものだとは思うけれど
私にはとても美味しそうな綺麗な手に見えた。その手のひらをイタズラに舐めるとごくりと生唾を飲み込む音が彼から鳴った
『ねぇ、犬が手を舐めるのってなんでか知ってる?』
「ふぇっ!?あ、えっと…」
『遊んで…って甘えてるんだよ
ねぇ…貴方は、私と遊んでくれるよね?』
顔を赤くする彼に手袋を落とすように返して立ち上がる
他の場所から物音が聞こえた気がしたからそっちの方に行ってみようとすると足を掴まれる
少し前につんのめったけれど転ぶことはなく原因である彼を見ると、捨てられた子犬のような瞳で私を見つめていた
足を軽く払えば簡単に抜け出せてしまうことに少し寂びしさを感じたけれど、まだ伸ばしてくる手から逃れるように少しだけ距離をとる
「あ、すみません…あの…」
『貴方が私を捕まえるには首輪か何かで繋がないと無理なんじゃない?
じゃあね、今度はちゃんと遊んでね』
何かを言いかけた彼のことを無視し足に力をいれて物音がする方に駆ける
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ああ、やっぱり前よりも速度が落ちたと思いながらも私は獲物を定める。そして見つけた瞬間に今度は声もかけずに切りかかる
「…っ、ぶね」
『よく避けたね!すごいすごい!
ふふっ初めまして!遊びましょ!』
緑のフードを深く被った人は私の爪を寸での所で避けていた
とても目付きが鋭い人だ。でも嫌な感じがしない人だなぁと思いながらも逃げ出した彼を追いかける
人にしては足が速い人で遊びがいがありそうな人だ。あと少しで服に触れられると思ったら壁に肘当てをぶつけ一瞬で私から距離を取られた
何あれ何あれ何あれ…!!??とてつもなく面白い
昂ってきちゃった…!
『待ってよ!!もっともっと遊ぼう!!もっと楽しもう!!』
足に力をいれて追いかけ回す。相手は身軽に窓を越えたり、こちらの攻撃が当たっても効果が出るのは遅いみたいだった
ということは…この人はたくさん遊べるってことだよね?逃げるのも上手でいっぱい鬼ごっこができるなんて、なんて素敵なんだろう
「あと2台…肘当てもあと1回…
まぁ、1人に執着するタイプで良かった、ぜ!」
『執着??違うなぁ!私は楽しければいいの!!貴方との鬼ごっこはとっても楽しい!!だから…もっともっと遊んでよ!!』
このゲームに勝つというよりも、遊ぶ方が大事だ。ここに呼ばれた時もいっぱい遊べるってナイチンゲールがそう言っていた
遊ぶことが好き、狩りも好き、そして何より…私は自由が大好き
緑フードの彼を追い越すように目の前に行き爪を当てようとすると、どこからか飛んできた梟に当たってしまった
「ナイス!イライ!」
『また変なのが出てきた…
でも、これでまだ…いっぱい遊べるね!』
「なかなかあんたもイカれてる、な!」
まだ距離を取られるけれど、目が慣れてきたからか追えない速さじゃない…居場所はわかる。前ほど早く走れないのが残念だけれど
でも追いつけない速さでもない!本当に楽しいやっぱりお外は素敵!!こんなにも心が踊るものが沢山あるんだもん!!
強く踏み込み彼に爪を立てるとその場に倒れ込む
『はぁ…はぁ…ふぅ……久びさに思いっ切り走り回った…』
「そーかよ」
バタバタと風船に吊られても暴れる彼を横目にロケットチェアに座らせることに成功した
深呼吸して息を整えながら、さて、ゲートが開いてしまって他の人はもう出てしまうかなと思った矢先
ロケットチェアが急に黒くなり溶けてゆく
『え、え??』
「ハッ!じゃあな!!鬼さん!!」
『あらら…』
こんな抜け出す能力もあるのか。とても面白い…まるで、死者蘇生のよう…
急に視界が赤くなり、嗅覚の感覚が戻る。匂いの先は…近い方のゲートみたいね間に合うかな
捕まえれなくても良いの…この不思議な力の持ち主をちゃんと見てみたい
本当にここは飽きない場所!!
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匂いを追い、ついた時にはもうゲートが開いた後で、そこには銀髪の彼のみが私を待っていたかのように立っていた
他の人は出ていったようでもう姿も気配も無い
何にせよここから私が勝つことは無いし、参加したばかりの私は減るポイントもない
『あれ?待っていてくれたの?』
「はい…」
冗談のつもりで言ったつもりが本当に私のことを待っていたらしい
短い返事に驚きと戸惑いを覚えたけれど、それよりも嬉しい気持ちが湧き上がる
『待っていてくれたっていうことは…
私ともっと遊んでくれるってこと!?
ふふっもちろん、大歓迎だよ!』
大歓迎という言葉に驚いた後に安置と感嘆をもらすような表情をされた
人によってはその表情引かれるよ。とツッコミそうにもなったけれど私には関係の無いことだしいいかと言葉を飲み込む
「その…お名前を、聞きたくて…」
『あら、意中の名前を聞きたい時は殿方から名乗るのが礼儀じゃない?』
「ぅ、えっ!?い、いいい意中だなんて…そんな…!?」
『冗談だよ。そう否定されるとなんだか悲しいなぁ』
「い、いえ!そういうわけでは…!あ、いや…その、そうでもなくて…」
『ふふっ。からかいがいがある人だなぁ…それで?貴方のお名前は?』
きっと普段から人と話すことがないのか、真面目なのか…はたまたその両方なのか
あたふたとする彼はとても愉快で面白いから、直さなくても良いから指摘はしないけれどね
「あ…えっと…イソップ・カールです…」
『イソップ…ね…
私はルーヴ……ファミリーネームはないの!』
ファミリーネームはいらない。私にはもうそれは必要が無いものだから
イソップは私の名前を刻むかのように小声で数回、名前を繰り返し呼んだ
なんだか彼の声は落ち着く…麻薬のようだ…何度も呼んで欲しくなってしまう…イヌ科の本能かな?
『さて、と。お話もこの辺りでお終いにしよう…
今はまだ楽しいゲームの時間なんだから!!』
私が足に力を入れて未だに動かずにいるイソップに爪を向ける
それを受け入れるように目を瞑る彼が一瞬お母さんの最後の時と同じように見えて、勢いのまま爪を立てた
【第1話】
fin