私と兄の話
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「あのさ、カナリア」
『なぁに?』
学校終わりにクラスメイトから声を掛けられ帰ろうとしていた足を止める
彼は確か…2つ後ろの席の人だ。挨拶や掃除当番が被った時に何度か話したことがあったと思う
「…お前家から出た方がいいんじゃね?
あまり言いたくねぇけど、ほら、お前の兄貴おかしいじゃん
心配でさ…良かったら俺ん家来ねぇ?学校からもちけぇしさ」
『…心配してくれてありがとう
とても、嬉しい…でも、ごめんなさい
私は叔父と兄がいないと生きていけないから
それに…兄はとてもまともな人だよ』
私と違って。とまでは言えないけど
引き止める声は聞こえないふりをして帰路へと足を進める
…きっと、彼は好意から私を助けようとしてくれていたのだろう。とても優しくて良い人なんだと思う
だけど、大事な家族をおかしいと言われたら誰でも怒りを覚えるものでしょう?
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「あ、おかえり…」
『兄さん…ただいま』
家に着くと兄が夕飯の支度をしていた。すぐにカバンを部屋に置き手を洗って手伝うようにサラダを作り出す
叔父は…仕事部屋から音が聞こえないから書斎にでもいるのだろう
あの人は本を読むのも好きだから仕事をしない日は気長に本を読み続けることがある
たまに、兄と私も一緒に本を読むことがある。言葉は交わさないけれどその時間は好きだ
兄も別に叔父を嫌っている訳では無い…ただ間違いを正せない自分が嫌いなんだと思う
否定も肯定もできない…壊れることができない自分自身が…
「…何かあったの?」
『え…』
「何だか悲しそうだったから」
顔を覗き込むように見てくる兄に目を合わせる
最初は目を合わせてくれなかったのに、最近はこんな風に自分から合わせてくれる
『ちょっと、嫌なことがあって』
「それは…学校で?」
『うん…ねぇ、兄さん
兄さんは私たち家族のことは好き?』
「…僕はジェイのやり方は賛同できない
でも、2人のことを愛してるよ…大事な人達だから」
愛おしそうに微笑む兄は男性なのにとても綺麗で…女の私よりも美人な表情に少し惚けてしまった
日に日に表情が崩れにくくなっているけど、私たち家族の前ではとても豊かに変わる事は少なからず嬉しさを感じた
「カナリア?」
『あ…ごめんなさい、惚けてた…』
「疲れてるなら休んでも大丈夫だよ」
『ううん。兄さんと夕餉作りするのが好きだから
手伝わせて』
「…そ、れなら…いいけど」
兄は視線を鍋へと戻し忙しなくお玉を回す
今日はクリームシチューとパンとサラダにするみたいだから、後は器を準備しておこう
「おや、帰っていたんだね
おかえり」
『ただいまジェイ
兄さんが作ったクリームシチューとても美味しそうだよ』
「それは楽しみだ」
「…あまり期待しないで」
照れたように兄が器にシチューを移すそれを私が運び水も準備して、お祈りをしてから暖かいシチューを口に含む
優しいミルクの味が口に広がり心が安らぐ
『兄さん、とても美味しいよ』
「上手にできてる」
「本当に…?良かった…」
安心したように食べ始める兄は本当に嬉しそうだ
ここに来た時は家事は苦手そうだったのに、暇な時は手伝ってくれるようになり
最近はこんな風にご飯を作ってくれる
そのおかげで、私も好きな服作りをできる時間が増えて楽になった
この時間がいつまで続くかはわからないけど
終わりが来るまでは2人と一緒に過ごせたらいいなって思う
【第4話】
fin