私と兄の話
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天気が良い休みの日だからシーツをお外に干した。きっと今夜は心地よいお布団で寝れそうだと自然と口元が緩む
暖かいシーツを持ち玄関に向かうと叔父が丁度帰ってきたところだった
傍らには大きな麻袋があり、中身は聞かずとも何かわかってしまう事に顔を顰めそうになるのを堪える
「ただいま」
『…おかえり、ジェイ』
「早速で悪いがイソップに仕事部屋に来るように声をかけといてくれ
それと、ここに書かれた通りの服を作っておいて欲しいんだが…」
紙を受け取ると成人男性であろう人の採寸された服のサイズなどが細かく書かれていた
これなら、今日の夕方にでも仕上げれる。さすがにサイズは違えど似た服をつくっていれば出来上がりも早い
『わかった…服は夕方になるけど大丈夫?』
「ああ、問題ない…頼んだよ」
玄関を開きまっすぐ仕事部屋に向かうおじを見送り、私は兄の部屋へと向かう
ノックをすると静かに扉が開いた
扉の隙間からこちらを伺い私だとわかった瞬間に腕を引かれ抱きしめられる
『…兄さん、ジェイが仕事部屋に来て欲しいって』
そう伝えると抱きしめる力が痛いくらいに強まる。顔を顰めてしまうけれど声を出すのは我慢した、きっと兄さんは気にしてしまうから
ゆっくりと兄さんの背に腕をまわし優しく撫でると力を緩めながら離してくれた
「…行ってきます」
『うん…行ってらっしゃい』
引き止めて欲しそうに仕事部屋に向かう兄をただ見送ることしかできない
心の中では何度も謝る。きっとこの選択は間違っているのに…私は兄を助けることは出来ないから
叔父から渡された紙を握り直し自室に入る
紙に書かれた通りに裁断をし、ミシンで布を縫い合わせる。服を作っている間はまわりの音を気にせず集中できるから良い…
いや、嫌でもそうなってしまったのかもしれない
仕事部屋から聞こえる声…外に漏れるほどではない声量のそれは多少なりとも防音である部屋のお陰だろう
『…ごめんなさい』
小さく呟き死者を説得する叔父の声とたまに聞こえる兄の小さな短い悲鳴…
そして怒鳴るような死者の叫びに気付かないふりをしながら大きくミシンの音を鳴らす
ただ、頼まれた服を作ることに集中する
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出来上がった服を仕事部屋まで持っていくと扉が開き、兄が顔を青くしながら出てきた
焦点が合わない瞳が私を見た途端に小さく悲鳴が漏れたけれど、すぐに私と気づいたのか安置の息をついた
『終わった?』
「…後は服を着せて化粧をすれば終わり」
『そっか…じゃあ、服をジェイに渡さないと』
「…っ!待って…僕が持っていくから…
カナリアはこの部屋には入らないで…」
縋るような声で私の手から服を奪うように仕事部屋に戻る兄を見送る
元々、私はこの仕事部屋には立ち入り禁止だった
でも兄が来て、少ししてから入っても良いとジェイが言い出した
それを聞いた兄ははっきりとそれを反対した。多分、これが目的地でもあったんだと思う
ジェイは何故か兄に納棺師の仕事を受け継がせたがる…その理由はわからないけれど
『…ごめんなさい』
意味の無い謝罪が零れる
私は夕飯の支度をする為に仕事部屋から離れる
神様…そんなものは存在しないけど…もしも、本当にいるなら叔父や兄を狂わせる運命を止めてくれない貴方を私は許さない
【第3話】
fin