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「サボお疲れ。じゃあ、私ちょっと急いでるから」
長期での任務を終えて、いの一番に愛しい彼女に会いに来たおれにこれである。
当然、抱きついて喜んでくれると思っていた。
それは、コアラに言わせると妄想だと言われるが。
でも、おれはそう思っているわけで。だから、腕を掴んで引き止めてしまうのも仕方ないはずだ。
「どうかした?」
なのに、なまえはまたもあっさりとそう言うわけである。
そんな彼女になんでもない、と答える以外言葉は出なくて、おれの手からするりと抜けた細い腕にさらに寂しさが増した。
彼女を見送ったその場には甘い匂いだけがふわりと残った。
なまえ、香水なんてつけてなかったよな…?
それから同じことが何回もあって、さすがのおれも参っている。
なまえ成分が足りないし、このままだと仕事にも支障が出かねない。
加えて、あの甘い匂いも気になる。
他の男の香水が移ったとか、…いや、そんなわけないか。
とりあえず、なんにしても限界なわけだ。
だから、こんなことを考える。
こういうのはやっぱり本人に直接訊くに限ると思う。
「なまえ、ちょっと来てくれ」
「ぅあ、えっ、サボ?なになになに!?」
自分が思ってるよりも余裕がなかったのか、廊下で見つけたなまえをその場から連れ去るように片腕で抱き上げていた。
多くの視線が刺さるが、おれは気にもならない。むしろ、見せつけてやればいいとさえ思っている。
「ん?ああ、少し乱暴だったか。すまん」
それでも、確かにかわいい恋人に対してこんな持ち方は良くなかったと反省してお姫様抱っこに変えると、おでこにキスをして謝罪する。
「いや、持ち方の問題じゃなくて!私、自分で歩けるし!それにまだ仕事…ていうか、おでこ…!」
「忙しいやつだなァ」
「誰のせいだと…!ここには他の人の目もあるんだからね!?」
「へェ?他の人の目、な」
なんだかそれは、特定の誰かに見られたくないと言われてるようで心がざわつく。
感情のまま、首すじに近づいて嗅ぐ仕草をすれば、なまえからは予想通りの甘く小さな息がもれる。
「それは、この匂いのやつか?」
「っもう、こらっ、やめなさい!!!」
殴られたけど、全然痛みはなくて。これで全力なんだから、かわいい。
でも、今日のおれはそれで絆されたりしない。
堪えてないのがわかったのか、なまえはため息をひとつ吐くと、怒ってる理由は何かと訊いてくる。
「…最近、ずいぶん忙しそうだな」
遠回しな言い方だったが、なんとなく察したらしい。
当然すぐに否定してくれると思っていた。
でも、なまえはバツが悪そうに視線を逸らすだけで、胸のあたりがざわりとして落ち着かなくなる。
まさか本当に、なんて思いたくもないけど。
「言っとくが、おれはおまえを離す気はねェぞ」
「いやいや!違う!」
「違わねェ」
「だから、そうじゃなくて!」
「?」
「護身術教えてもらってただけ!」
「そんなの、おれに言えよ」
「やだよ。サボには休んでほしい。それに……すぐいやらしく触ってくるでしょ」
「うん、間違いねェな」
間髪入れずに肯定するおれをジト目で見てくるが、仕方ない、男だからな。
「じゃあ、この甘い匂いはなんだ?」
「甘い匂い…?ああ!開発部が新しく作ったボディーシートかな」
なまえが言うには、汗をかいたときの使い捨てタオルみたいなもんだそうだ。
いい匂いもするんだよ、と見せてもらったソレからは確かにいつも感じていた甘い匂いがした。
「しかも、サボってばいつもタイミング悪くて、終わって汗かいてるときに声かけるから。ちょっと冷たかったかも。ごめん」
すべての謎が解けて、やっとホッと息をつく。
なまえは嘘をついてないし、休んでほしいってのも本心だと思う。
そう思うと、少し乱暴が過ぎたかもしれない。
「おれも、ごめん。嫉妬した。なまえのこととなると、どうも頭が回らなくなる。好きなんだ」
「〜っ、サボずるい…」
おれの腕の中で、恥ずかしさからか自分の顔をおおう小さな手。指の隙間から赤くなった顔は見え隠れしていて。
そらァ、かわいいに決まってる。
なまえはおれをずるいと言うが、そうやって無意識におれを煽るなまえも大概だと思う。
まァ、我慢する気はサラサラないし、これまでの分、今から癒してもらうことにしますか。