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目が覚めると、いつも賑やかな船内は静まり返り、外も真っ暗で、もう夜なんだとぼやけた頭で理解した。
起き上がれば痛む身体に昼間のことを思い出して泣きそうになる。
事の発端はサンジくんが欲しいと言っていた珍しい調味料が、この島にあると知ったこと。好きな人のために1人で手に入れたいと探し回っていると、あれよあれよと山賊に捕まり、いざこざに巻き込まれてしまったのだ。
私は今でこそ海賊をやっているけど、元はと言えばルフィに助けられたただの町娘で、特別強いわけではない。サンジくんが助けに来てくれたから、この程度で済んだけど死んでいたかもと思うとゾッとする。
でも、何より今回の件ではサンジくんにこっぴどく叱られてしまった。私に対してあんなに怒ってるサンジくんは初めて見た。嫌われたかも、そう思うと死んでしまうことよりも恐ろしい。
私のこの部屋にはサンジくんの吸ってるタバコの匂いが残っていて、ついさっきまで私の看病をしてくれていたことが分かる。サンジくんは優しいから、きっと私のことを嫌っていても看病してくれる。
それがまた愛しくて悲しい。
突然扉が開き、驚いてそちらを向くと、同じく驚いた表情のサンジくんがいた。
「目が覚めたんだななまえちゃん!よかった、ホントによかった…!っと、ごめん。病み上がりに。あと、部屋にもノックなしで勝手に入っちまってごめんな。起こすと悪いと思って…」
サンジくんがものすごいスピードで私の元まで来ると、ただ心配してくれる。それは紛れもなくいつものサンジくんだった。
瞬きと一緒に自然と涙がポロリとこぼれ落ちる。
「なまえちゃん、どっか痛むのか!?」
ああ、そうか。私は安心したんだ。
あんなに怒っていたのによかったって言ってくれるサンジくんに。
「サンジくん……怒って、る…?」
嗚咽混じりに訊けば、最初は困ったような顔をしたけど、何か考えた素振りの後、口を開く。
「……どうしてそう思うんだい?」
「わ……私が、勝手なことして怪我して…愛想つかされたかと、思って…」
「ああ、正解」
わかってたことだったけど、肯定されて悲しくて、でも、これ以上泣いたら優しいサンジくんは気にして本当に言いたいことを言えなくなっちゃうかもしれないから下を向いてぐっと堪える。
「半分な」
そう続けて聞こえた言葉に顔を上げたら、優しい顔で私を見つめるサンジくんがいた。
「おれがなまえちゃんに愛想つかすことは天地がひっくり返ってもないよ。今回の件は1人で無茶しすぎだ。それでもし死ぬことがあったら、おれ生きていけないよ。これからはクルーの誰かを呼ぶこと。いいかい?」
サンジくんに見放されてなくて嬉しくてまた流れ出した涙と共に静かに頷いた。
「うん、いい子だ」
でも、本音は呼ぶのはおれだけにして欲しい、と言ったサンジくんに思わず笑ってしまう。
そして、危ないことはしないで、とさらに念を押されて、強く抱きしめられた。
やっぱりサンジくんからはタバコの匂いがして、元々苦手だったそれはいつからかサンジくんの匂いだと思うと落ち着く匂いに変わっていた。それがくすぐったいようで、心地よくてゆっくり息を吸った。
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