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「かわいいですねィ、お嬢さん」
その聞き覚えのありすぎる声に、ぎくりと肩が揺れる。
これは非常にまずい。冷や汗もたらりと流れる。
私は万事屋で働いていて、依頼が来たらなんでもこなすわけだけど、今は人手が足りないとお妙ちゃんからの依頼でスナックすまいるで働いている真っ最中だ。そのため、普段は着ない背中や肩が出ている露出の高いドレスを着ている。
このことは恋人の沖田さんに話しても面倒なことになるだけだと秘密にしていて、どうせ来ないとも思ったからバレない自信もあった。
そして、冒頭に戻る。
「おい、なまえ。こんなとこでそんな格好で何してんだ」
いつもよりワントーン低い声は背中越しでもわかるほどお怒りの様子。
ドSと言われている沖田さんだけど、実は私に対して怒りを露わにすることはあまりない。なので、とっても恐い。恐すぎるので私は正直に話すよりも誤魔化すことに決めました。
「人違いでは…」
目は合わせられず勇気を持ってそれだけ絞り出す。
でも、やっぱり気になってチラリと盗み見ると、とんでもなく鋭い眼光でこちらを見ていて喉がひゅっとなる。
「そらァ、すいやせん。知り合いにそっくりだったもんで」
危うくそのまま地獄行き決定かと思いきや、あっさりと納得して解放される。
ほっと安心したのが半分、残りの半分はあまりのあっさり具合にモヤモヤと胸のあたりがすっきりしない。考える時間もなく、それはすぐに思い知ることになる。
「アンタもキャバ嬢ってことは指名できますよね?」
「え!?いえ、あのー、私、まだ新人なので…」
「なら、余計に客取っときなせェ。練習にもなりやすぜ」
結局、あれやこれやと押し切られて同じ席でお酒を呑むことになってしまい、合間で何度か抜け出そうとするもことごとく失敗。
一体どのくらい経ったのか、呑ませ上手な沖田さんに乗せられて頭もあんまり回らなくなる。
「新人って言ってやしたが、ここで働き始めてどんくらいになるんですかィ?」
「えーっと…まだ3日目?くらいですかねぇ」
「チッ、もう3日か。で、何人の男にどこ触られた?」
「さわ…?あ、」
おかしな質問するな、なんてふわふわした頭で思って隣を見れば、沖田さんはそれはもう恐ろしい顔をしていて酔いも一気に醒める。
悪夢再び、と思いきやまたもや一転、顔が陰り、うつむく沖田さん。
「アンタ、俺が何も感じねェとでも思ってんのか」
ぽつりこぼされた言葉に、え、とマヌケな声だけがもれる。
「こんな乳首が見えそうな服着て、男共に愛想ふりまいてベタベタ触られて…。想像したくねーが、仮に想像しただけで全員ぶっ殺してェ、ってくらいには俺もイラつくんでィ。なぁ、なまえそんなこともわかんねぇのか」
その目はいつもの沖田さんのように気だるげでも自信満々でもない。苛立ちと悲しみが入り混じったような瞳だった。
断じて乳首は見えないし、大げさに思える表現もあるけど、言っていることは理解できる。そもそも隠していたことも含め完全に私が悪い。
明らかに普段とは違う弱気な沖田さんを前に胸が締めつけられ反省する。私がここまで傷つけてしまったと痛感した。
「沖田さん…⋯あの、ごめんなさい。私、」
「はい、ギルティー」
遮られるように発せられた言葉。雰囲気ががらりと変わり、言っている意味も理解できず、同じ言葉を繰り返してしまう。
ギルティー?有罪?
「今度こそなまえだって認めたな?もう人違いなんてふざけた言い逃れはさせねェ」
弱気な沖田さんはどこへやら見る見る嬉々とした表情になる。対象的にようやく罠だったと理解した私の顔はきっと青ざめていることだろう。
そして、沖田さんは言った。誰もが見惚れるくらいの天使のような笑顔で。
「アフター、もちろん付き合ってくれますよねィ?」
〈返事はハイかイエスか〉
