ss
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なまえちゃーん。きみ、他の教科はほぼ満点だって聞いてるけど、何で俺の教科だけ赤点なの?なに、イジメ?」
「そんなまさか。特別苦手なんです」
「ふーん。その割には補習になって嬉しそうね」
気だるげに頬杖をつきながらもこちらをしっかり見る目にギクリとするが、そんなまさか、そう笑って誤魔化す。
私は自慢じゃないけど勉強はできるほうだと思う。でも、想い人である先生と合法的に少しでも多く話すためにどうするかと考えたとき、これしか思いつかなかった。要は先生の言っていることは大正解である。
「ま、いーわ。これ終わったら俺に提出な。職員室にいっから」
プリントを私に手渡し、早々に教室を出ようとする先生に戸惑う。これでは何のために補習をしているのか。
確かに、思えば何にでも適当で面倒くさがりの先生がマンツーマンで教えてくれるはずがなかった。
思ってたのと違う、そうは思っても勇気のない私は恨みがましく閉じられた扉を眺めながら、仕方なくシャーペンの芯を出すしかなかった。
*
ずいぶん集中していて、気づけば外はもう夕日が差していた。
「お疲れさん」
待っていたのかちょうど終わったタイミングで声をかけられ、その声をたどれば先生が隣の席に座っていた。
「全問正解。やっぱり、やりぁできるじゃねェか」
横から赤ペンで花まるをされながら褒められて嬉しくなる。
雑な花まるが先生らしくて、さらに頬も緩む。
「でもなァ、なまえ。まだココ教えてねーとこなんだけど」
ココ、と赤ペンで指す先は最終問題。にやりと笑う先生と目が合う。
「先生は一生懸命がんばる子が好きだぜ。ウソつかないでな」
その言葉に完全に理解した。最初から私の計画はバレバレだったと。
恥ずかしさで顔が熱くなる。穴があったら入りたい。
「……先生の性悪」
せめてもの抵抗で悪態をつく私に今度は優しく笑って、頭をくしゃくしゃに撫で回す。
子ども扱いされてるようで悔しいけど、やっぱり撫でられるのは嬉しくて少し複雑だ。
「ばーか。もっと正攻法でいいだろ。わからねェとこ聞きに来るでもいいし、進路相談でもいい。わざわざ自分を下げる必要なんざねェよ」
普段適当なのに、こういうとこ。実はちゃんと見てたり、フォローもする。やっぱり好きだなと思う。
でも、先生、私の気持ちを分かってる上で会いに来ていいって、それって…期待しちゃうんですけど。
「先生、覚悟しておいてくださいね」
「上等だ。お手並み拝見といこーか」