tennis【short】
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跡部さんがどれだけ人の視線を集めようと興味はない。
でも、ただ1人…みょうじ先輩の視線だけは奪わないでいて欲しかった。
教室の一室から静かに注がれるその視線に気づいたのは、俺がまだテニス部に入部してからあまり日にちが経っていない頃。
最初目にしたときはただのミーハーだと嘲っていた。
でも、彼女の表情はいつも悲し気で不思議だった。
「みょうじなまえ先輩」
「は?」
「跡部さんの彼女だよ」
「別に訊いてない」
何に対してなのか分からないけど、なぜかイライラした俺は鳳のその説明に冷たく返す。
「元だけど」
「だから、訊いてな…は?」
付け加えられた言葉に思わず聞き返す。
それが嬉しかったのかニコリと笑う鳳に少し後悔。
「跡部さん、女遊び激しかったから。今なら日吉にも脈、あるかもよ?」
「っ、なんの話だ」
「さぁ?」
笑いを含んだ声で言われて、顔に熱が集まる気がした。
ああ、なるほど。
俺は彼女のことが好きなのか。
不本意だが、鳳のおかげで気づかされた。
「脈がある、か」
そう呟き、また彼女を下から見上げた。
なんの因果か、俺が2年になり入った委員会はみょうじ先輩と同じで、さらには同じ雑務をこなすことになった。
まぁ、だからといって必要最低限は話すつもりがなかった。
そもそもみょうじ先輩は俺のことを知らないだろうし。
でも……
「日吉若くん、だよね?」
そう話しかけられた。
「なんで俺の名前…」
俺らしくもなく、突然のことに緊張して上手く言葉が出てこない。
先輩に話しかけられたことと名前を知られていた事実が嬉しくて舞い上がってしまう。
「テニス部って有名だから」
それに日吉くん準レギュラーでしょ?
そう付け足した彼女の言葉を聞いて、さっきの理由は嘘なんだと思った。
嘘というには少し語弊があるが、大抵の奴らは俺がレギュラーだと思ってる。
準レギュラーだとかレギュラーだとかあんまりよく分かってない連中が多いんだ。
「嘘を吐かなくてもいいですよ。跡部さんでしょう?」
「ぇ…」
「元彼女だと聞きました」
別に隠すことではないのでは?
驚いてる彼女にそう付け加えれば、今度は悲しそうに目を伏せた。
「そう、だね」
「…すみません、余計なお世話でしたね。俺には関係のないことでした」
「ううん、いいの。なんか景吾の話題はまだ少し、辛くて避けてただけだから」
無理やり笑みを浮かべてそう言う彼女に何かがプツンと切れた。
「余計なお世話ついでに訊きます。"少し"なんて嘘でしょう?まだ跡部さんのこと好きなんですよね」
最後は疑問じゃなかった。
実際、最初から訊くとかいうつもりは更々なく、確信だったから。
「そんなこと、ないよ…」
「そうですか。なら、俺と付き合ってください」
「えっ!?」
「跡部さんが好きじゃないなら付き合えるでしょう?」
初めて会話をした相手にとんでもない無茶ぶりだ。
初対面同然の奴にこんなことを言われたら、俺なら間違いなく即NOと答えるだろう。
それ以前に今の俺の言葉は滅茶苦茶すぎるのだが。
「…優しいんだね、日吉くん」
だから、みょうじ先輩が発した言葉に俺は驚いた。
「なぜそうなるんですか」
「だって励まそうとしてくれてるんでしょ?」
「素晴らしいポジティブシンキングですね」
そうは言いながらも実は図星だったりする。
もちろん半分は本気だった。
鳳に気づかされた恋心はムクムクと膨れ上がり止まらないのに、みょうじ先輩の悲しい顔はもう見たくなくて。
好きだからこそ笑った顔のほうが見たくて。
例えそれが恋心に相反する行動だったとしても。
「ふふ、よく言われる」
初めて見たあなたの心からの笑顔は眩しいくらい輝いているのに胸はズキリと痛んだ。
(胸の痛みは笑顔の代償か)
視線を奪った、なんて笑える。
彼女はもともと俺のものじゃない、視線を奪いたかったのは俺だった。
でも、ただ1人…みょうじ先輩の視線だけは奪わないでいて欲しかった。
教室の一室から静かに注がれるその視線に気づいたのは、俺がまだテニス部に入部してからあまり日にちが経っていない頃。
最初目にしたときはただのミーハーだと嘲っていた。
でも、彼女の表情はいつも悲し気で不思議だった。
「みょうじなまえ先輩」
「は?」
「跡部さんの彼女だよ」
「別に訊いてない」
何に対してなのか分からないけど、なぜかイライラした俺は鳳のその説明に冷たく返す。
「元だけど」
「だから、訊いてな…は?」
付け加えられた言葉に思わず聞き返す。
それが嬉しかったのかニコリと笑う鳳に少し後悔。
「跡部さん、女遊び激しかったから。今なら日吉にも脈、あるかもよ?」
「っ、なんの話だ」
「さぁ?」
笑いを含んだ声で言われて、顔に熱が集まる気がした。
ああ、なるほど。
俺は彼女のことが好きなのか。
不本意だが、鳳のおかげで気づかされた。
「脈がある、か」
そう呟き、また彼女を下から見上げた。
なんの因果か、俺が2年になり入った委員会はみょうじ先輩と同じで、さらには同じ雑務をこなすことになった。
まぁ、だからといって必要最低限は話すつもりがなかった。
そもそもみょうじ先輩は俺のことを知らないだろうし。
でも……
「日吉若くん、だよね?」
そう話しかけられた。
「なんで俺の名前…」
俺らしくもなく、突然のことに緊張して上手く言葉が出てこない。
先輩に話しかけられたことと名前を知られていた事実が嬉しくて舞い上がってしまう。
「テニス部って有名だから」
それに日吉くん準レギュラーでしょ?
そう付け足した彼女の言葉を聞いて、さっきの理由は嘘なんだと思った。
嘘というには少し語弊があるが、大抵の奴らは俺がレギュラーだと思ってる。
準レギュラーだとかレギュラーだとかあんまりよく分かってない連中が多いんだ。
「嘘を吐かなくてもいいですよ。跡部さんでしょう?」
「ぇ…」
「元彼女だと聞きました」
別に隠すことではないのでは?
驚いてる彼女にそう付け加えれば、今度は悲しそうに目を伏せた。
「そう、だね」
「…すみません、余計なお世話でしたね。俺には関係のないことでした」
「ううん、いいの。なんか景吾の話題はまだ少し、辛くて避けてただけだから」
無理やり笑みを浮かべてそう言う彼女に何かがプツンと切れた。
「余計なお世話ついでに訊きます。"少し"なんて嘘でしょう?まだ跡部さんのこと好きなんですよね」
最後は疑問じゃなかった。
実際、最初から訊くとかいうつもりは更々なく、確信だったから。
「そんなこと、ないよ…」
「そうですか。なら、俺と付き合ってください」
「えっ!?」
「跡部さんが好きじゃないなら付き合えるでしょう?」
初めて会話をした相手にとんでもない無茶ぶりだ。
初対面同然の奴にこんなことを言われたら、俺なら間違いなく即NOと答えるだろう。
それ以前に今の俺の言葉は滅茶苦茶すぎるのだが。
「…優しいんだね、日吉くん」
だから、みょうじ先輩が発した言葉に俺は驚いた。
「なぜそうなるんですか」
「だって励まそうとしてくれてるんでしょ?」
「素晴らしいポジティブシンキングですね」
そうは言いながらも実は図星だったりする。
もちろん半分は本気だった。
鳳に気づかされた恋心はムクムクと膨れ上がり止まらないのに、みょうじ先輩の悲しい顔はもう見たくなくて。
好きだからこそ笑った顔のほうが見たくて。
例えそれが恋心に相反する行動だったとしても。
「ふふ、よく言われる」
初めて見たあなたの心からの笑顔は眩しいくらい輝いているのに胸はズキリと痛んだ。
(胸の痛みは笑顔の代償か)
視線を奪った、なんて笑える。
彼女はもともと俺のものじゃない、視線を奪いたかったのは俺だった。