逆転サンドリヨン
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デフォルト名は「ナマエ」
男装夢主なので、特にこだわりのない方は中性的なお名前にするとしっくりくるかもしれません。
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「……なるほどなぁ、国王にお世継ぎがなく、仕方なくキミが王子として……」
「まあそこはしょうがないんだよ。国のためだもん」
誰もいないトイレ付近のベンチ。すでに舞踏会は始まっている時刻でしたが、ナマエ王子は所在なく項垂れています。その隣で、自販機のコーヒーをすすりつつ相槌を打っている松野家次男。コーヒーは王子のおごりです。
「でも、王子として生きるには、将来的に世継ぎがいないとダメ。いままで王子として頑張ってきたけどさ、さすがにお嫁さんを迎えて子ども作れって言われたらどうしようもないよ……私女なんだもん」
正体がバレたからか、ナマエ殿下はすっかりあけすけな口調でカラ松に弱音を吐きます。彼女の手元にもコーヒー。普段はカフェオレが好きな王子さまですが、いまは苦いものを口にしたい気分。なのでブラック。
「……どうすればいいのかなぁ、私……」
憂鬱そうにうつむくナマエ殿下です。そんな彼女を、カラ松はじっと見つめています。
「なぁ、オレ思ったんだが……」
ふと、カラ松は口を開きました。そして飛び出すのはとんでもない提案です。
「オレとキミとで結婚してはどうだろう」
「んぶふッ」
女装野郎の提案はとんでもないものでした。思わず松田○作ばりの勢いで王子がコーヒーを吹き出します。
「ゲホッ、ゴホッ……なんて?」
「だから、オレとキミとで結婚を……」
聞き返されて。カラ松も先程の台詞を復唱しますが、やっと自分の発言がどういうものか、自覚したようです。
「んごフッ!!」
松○優作二号爆誕。
「あ、い、いや! 結婚といっても偽装結婚というか! ほら、いまキミは男の格好で、オレは女の格好をしてるだろ?」
口からボタボタとコーヒーをこぼしながら、カラ松は真っ赤な顔で続けます。
「だからこのまま、キミは王子として、オレは女性として結婚したということにする。そしたら世間の目はしばらく欺けるだろ?」
さも名案とでも言いたげに、女装野郎は語りますが。
「む……むり……だってめっちゃ女装って分かるし……」
「フッ、こんなに妖艶なのにか?」
「きみが思っている以上にそのカッコ男まるだしだからね。すぐバレるからね?」
自信満々な彼にひとしきりツッコミを入れて。
「ぷふっ」
ナマエ王子は堰を切ったように笑い始めました。テレビや宮中行事では見せることのない、一国の王子ではなく、ナマエとしての素の笑顔。隣に座る童貞は胸をキュンキュンさせていました。
さて、そんな童貞の心境いざしらず。ナマエ殿下は笑いで目尻にたまった涙をぬぐいながら、カラ松へ話しかけます。
「あははははは……! 面白い人だねあなた。王子やってるといろんな人に会うけどさ、あなたみたいな人初めて」
「そ、そうか!? そうかそうか、オレのようなハンサムボーイは初めてかい?」
「ハンサムには同意しづらいけど」
「フッ…………………つれない子猫ちゃんだぜ!」
女装姿で盛大にカッコつける不審者なのに、なぜか心を開いてしまうナマエ殿下です。
「そういえば、きみはどうしてそんな格好でこの城に?」
「魔法にかけられたのさ……キミに会うために」
「……さっきからよくそういう受け答え思いつくよね」
呆れながら王子は苦笑しました。
「……変な人」
本当に変な人。でも、この人なら……
彼女が心の中で、そうつぶやいたときでした。
「あーーーーっ! ここにいたザンス王子~~!」
「大臣!」
慌てた様子で駆け寄ってきたのは、イヤミ大臣でした。なぜか全身ボロボロで、頭にはフォークやナイフが刺さっています。
「……どうしたの、そのケガ」
「どうしたもこうしたもないザンスー! 王子がいつまで経っても来ないから、会場中の女どもが暴動を起こしてるザンスよ~~!」
「うわぁ……」
それを聞き、王子の舞踏会行きたく無さはマックスまで上昇します。
ふと、会話の途中で大臣は、王子の隣の女装マスラオへ視線を投げかけました。
「シェーー! ちょっとちょっと、何なんザンスか王子! せっかくミーがパーチーのお膳立てをしてあげたというのに、こんな男みたいなのとしけこんでるなんて!」
「男みたいなのっていうか……」
まあ、正真正銘男なんだけど。見て分からんのんかい。
王子は言いたいのを我慢して、ぽけっとしてるカラ松へアイコンタクトを送ります。きみが男だっていうのは、ひとまず大臣には秘密にしとこう。ね?
一方、王子から意味深に眼差しを交わされた次男は、完璧に勘違いしていました。この子……オレに気がある!
「さあさあ王子! さっさと行くザンス! そこのメスゴリラといちゃつきたいなら、後で充分時間取ってあげるザンスから!」
「フッ、メスゴリラとは心外だ……いうなればオレはイケゴリ……そう、シャ○ーニのような」
大臣に対してよく分からない反論をしているカラ松でしたが、予想外の出来事が彼を襲います。
「それでは、麗しのプリンセス」
王子はそっと女装姫の前に跪くと、そっとその手を取って口づけました。
「……え?」
「申し訳ないが私は行かなければなりません。願わくば、後ほど舞踏会でお会いできますよう」
そして意味ありげなウインク。立ち上がりながら、姫の耳元で囁く「待ってるよ」の一言。
「それじゃあ行こうか、大臣」
「はぁ……会場でもそのタラシっぷりで頼むザンス」
颯爽と去っていく王子さま……と大臣。
あとには呆然としたまま、コーヒーのカップを取り落とす女装野郎が残されます。
「やだ……女の子になっちゃう……」
かくして、王子は舞踏会前にさっそく一人を、恋の弓矢で射止めるのでありました。