逆転サンドリヨン
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デフォルト名は「ナマエ」
男装夢主なので、特にこだわりのない方は中性的なお名前にするとしっくりくるかもしれません。
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「うっうっ、オレも……オレもビュッフェで肉食べたかった……!」
その晩。カラ松は泣きながらお皿洗いをしていました。
両親は久々のニートほぼ不在に浮かれたのか、夫婦水入らずで外食です。カラ松には夕飯の費用として二百円が支給されています。カップ麺くらいしか買えません。
とはいえ、ご飯は待てばきっと、兄弟がビュッフェの戦利品をお城から持って帰ってくれるでしょう。けれども。
「くうぅっ、逢いたかったぜ……カラ松Girls……!」
カラ松Girlsとの出会いはお城でなければ果たせません(と本人はそう思っています)。
今宵、せっかくお城には彼を待つGirlsが大量にいるというのに(と本人はそう思っています)。
来週から新アニメ『カラ松 of LOVE』を放映できる最大のチャンスだというのに(と本人はそう思っています)。
「あ゛あ゛~~~~!! やだ~~~~!! カラ松Girlsとラブロマンスができないなんてやだやだやだやだ~~~~!! アアーーーーーーーッ!! オレも舞踏会に行きた~~~~~い!!!!」
しまいにはお皿を投げ出して、年甲斐もなく駄々をこね始める始末。しっかりしなさい成人済み。
号泣する成人男性でしたが、そんな彼を見つめる視線が一人分。
「ホエホエ。二十歳超えた大人がみっともないダス」
「デ、デカパン! いつからそこに!?」
いつの間にか部屋の中に不法侵入していたのは、六つ子達の知り合い・デカパンでした。トレードマークのデカいパンツのほかは何も身に着けないという堂々とした不審者スタイルが定番のデカパンでしたが、今日はパンツの他に、魔法使いのような三角帽をかぶっています。どうでもいいけど帽子の柄がパンツとおそろ。
彼の出現により、カラ松はようやく我を取り戻します。
「ン、ンッンー! いや少々取り乱していたぜ、少々な!」
「ホエ~。ま、いいダス。それより、舞踏会に行きたいダスか?」
デカパンは話の尺の都合上、さっそく核心をつきます。もちろんカラ松が食いつかないわけはなく。
「話が早いじゃないかデカパン! ああ、もちろんだ! いまオレは舞踏会に行きたくてたまらないんだ!」
「ホエホエ。なら行かせてあげるダス。なんせ今日のワスは魔法使いデカパン……できないことは何も無いダスよ!」
「ほ、ほんとうか!?」
「本当ダス! 信じていいダスよ!」
ぱぁ……っ! とカラ松は瞳を輝かせました。そんな彼へ、デカパンはさらに言葉を続けます。
「う~ん、それにしても……舞踏会へ行くのにそのカッコじゃ、ちょっとみっともないダス」
「あー、いつものパーカーだからな……」
「だからワスが舞踏会にぴったりの服装に変身させてあげるダス!」
「す、すごいな! そんなことできるのかデカパン!」
わくわくと期待に胸をはやらせるカラ松の目の前で、デカパンはパンツから魔法のステッキを取り出しました。
そしてステッキをしゃらんらしゃらんら☆ と振り回し。
「テクマクホエホエ、テクマクホエホエ!」
「ワーオ! 原作者繋がりの危ない呪文!」
変身アイテムが魔法のコンパクトでなかったのはご愛嬌。ステッキから溢れ出したキラキラとした光が、カラ松の姿を覆い隠し……
そして変身! 舞踏会にぴったりの……お姫さまの姿に!
「ん? なんだこれ?」
「お姫さまダス! 青基調の上品なドレスに、サファイアをあしらったネックレスにイヤリング! ティアラ! ブロンドのウィッグ! どこからどう見てもお姫さまダスー!」
そう、変身した彼の姿はどこからどう見てもお姫さま。
……顔と体格以外は。
「いや、女装じゃないかコレ!」
「舞踏会向けの服装ダスよ。違うダスか?」
「違う違う! オレはだな、こう、男らしくイケてるメンズとしてカラ松Girlsを……!」
「この靴とかワス自信作ダスが」
「って聞いて! デカパン聞いてー!」
カラ松の話を微塵も聞かずに、デカパンはドレスの裾をちょいとめくって見せました。
話を遮られて悲しい思いをしながらも、カラ松はなんだかんだお人好しの六つ子の次男です。「靴?」と一応デカパンの話を聞いてあげます。ドレスの裾から、ちょいと足を出して見下ろせば。
「……ってガラスの靴! 危ない! こけて割れたら足がズタズタになる!」
「大丈夫ダス、強化ガラスダス!」
「ていうかこれハイヒール! オレ履いたことないよハイヒール!?」
「大丈夫ダスったら大丈夫ダス」
試しにカラ松は二、三歩あるいてみました。
ガクガクブルブル。生まれたての子ヤギみたいな歩みになりました。
「いやいやいやいや、無理だってこんなの。オレにはさ、ほら……もっとイカした靴があるだろ? そうだな、ガラス製にこだわるのならオレにはスワロ○スキーのラインストーンを散りばめた……」
「もうめんどくさいからさっさと行ってくるダス」
「急に投げやりーー!?」
そんなこんなで、カラ松は松野家から蹴り出されました。
しかしこのままでは、慣れないハイヒールでぷるぷるしながらお城へ向かうことになってしまいます。
「ちょ、ちょっと待ってデカパン! オレ知ってるぞ! この話あれだ……かぼちゃの馬車とかが出てくるあれだろ!? おいデカパン! 交通手段! 交通手段をくれーー!!」
「……やれやれ、ほしがりやさんダスな」
家の前で喚く女装男に辟易としながら、デカパンはパンツの中から何かを差し出しました。
「デカパン……これは?」
「お金ダス」
「えっ」
「タクれ」
「えっ……」
急に夢も魔法もクソもなくなりました。
「あ、そうそう。十二時の鐘が鳴り終わる前に帰ってくるダスよ? さもなくばその場で変身が解け、チミは全裸になってしまうダス! お城で全裸は即逮捕ダス! 気をつけるダスよ?」
「あ……ハイ」
そんなわけで、お姫さまになったカラ松はその辺でタクシーをつかまえてお城へ向かうのでした。