第3章 高校三年のお話
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※注意 山王工業高校の学校生活に関する記述は著者の妄想です。
金ヶ峰高校と湘北高校の試合は59-98という点差で湘北が勝利した。
流れる汗でユニフォームは湿り、脚を中心に身体がずっしりと重い。
でもこれは試合を完走しきったからこそ、本気を出さなければ味わえないものだ。
第45話 高校三年、ウィンターカップのお話②
すぐに後の試合が始まるためベンチを占有することはできない。荷物を早々にまとめて体育館を出なければ次の高校の迷惑になる。息をつく暇もなく更衣室に入って着替えを済ませ、私と先生が先頭に立って体育館のロビーへ部員達を誘導した。
ウィンターカップの試合は都内にある複数の体育館で行われている。どの体育館でどの学校が試合をするかは事前にポスターやパンフレットで告知されているため、準々決勝や決勝のようにロビーや廊下がごった返すことはない。
あまり居ないスペースはないものかと辺りを見回していると、白いジャージを着た数人の坊主頭が片手を上げて挨拶してきた。
「一成! 皆も!」
「お疲れ様ピニョン」
「夢子、絶好調だったな! どっと疲れたべ」
「観客も面白そうに観てたぞ」
「湘北の奴らも嬉しそうだったしな」
一成を筆頭に慣れ親しんだ山王バスケ部員が表情を緩ませながら勝利を祝い、労ってくれた。
「ゆっくり話したいところだけど、湘北で話したいこともあるピニョン? 俺達は向こうで待ってるからここで話せばいいピニョン」
後ろで私達を見守っている湘北勢を一瞥すると、ぺこりと頭を下げた一成は仲間を引き連れて少し離れた柱のほうへと歩いて行った。
その気遣いを有難く受け取り、部員達に私のそばへ寄るよう手でこまねく。「キャプテンから話をどうぞ」と振ったが、彼女は自分でなく私から話してほしいというような視線を向けてきた。断る理由もないので引き受ける。
「まずは一回戦お疲れ様でした! ウィンターカップを何度も経験してる金ヶ峰を相手に39点も点差を付けれたのはまぐれじゃない。皆が朝晩頑張って練習して、技術が向上したからこその結果です」
荷物を足元に置き、部員達は私の話に真剣に耳を傾ける。一言も聞き逃すまいと集中している。試合後なんだからもっと力を抜いてもいいんだけどなぁ。
「相手の戦力バランスやファウルに助けられた部分は勿論あります。だけど、それを差し引いても各々の武器を最大限に活用できたのはとても良かった。この試合でしか得られないものがあったと思います」
いくら真剣に練習をしていても試合の緊張感とは別物だと思う。
奇跡は起こらない。練習で出来ないことが試合で出来ることはほぼ無い。
でも。試合にしか生じないギリギリの空気が、想像以上の実力を発揮させるきっかけに繋がることは有り得るだろう。
苦手なスリーポイントを敢えて打ってみるだとか。いつもより低く重心を落としてディフェンスをしてみようだとか。実験的に試すだけの行動であっても結果に結びつくなら上々だ。たとえ点が取れなくても、その行動を起こすことにこそ意味がある。
「私は今日の試合とても楽しかった。一人でもバスケを続けてきて、ここのバスケ部に再入部して皆とプレーが出来て良かったって心から思いました。この楽しさを少しでも長く味わいたい。この先もひとつひとつの試合に全力で挑みましょう。私からは以上です」
言い終えると、先生と部長が滂沱の涙を流していた。
「どうしたんですか二人とも。引退試合にはまだ早いですけど」
「気にしないで……あと私からはもう言うこと無いわぁ……全部早乙女さんが言ってくれたから」
「私も同じく。今日、すっごく楽しかった。すっごく疲れたけどそれ以上に楽しかったの。練習の成果が出せて良かった。やってきたことが強い学校にも通用するって分かって、本当に嬉しかったの。だからありがとおぉ」
「だ、誰かタオルを部長に!」
「部長、目ェ腫れるから擦らないでください!」
床に泣き崩れるんじゃないかと心配した部員達が部長を取り囲む。部長と頑張ってきた三年生は貰い泣きしていた。一回戦を突破したばかりなのに、傍から見たら惜敗した高校なのかと勘違いされそうな状況である。
気を取り直した先生がハンカチで涙を拭いながら今後の行動について説明する。
「今日の試合に関する詳しい反省は夕食後のミーティングでやります。この後のことだけど、体調が悪い人は副顧問の杉本先生と一緒に宿泊所に戻って休んでください。試合を観る元気がある人は明日の二回戦で当たる可能性がある高校の試合を観に行きます。試合は一時間後くらいだから、それまでは自由行動とします」
自由行動があるのか。一成達と話せる時間がつくれそうで良かったと安堵する。
「全員集合してからバスに乗るから、試合後はなるべく早めに外の自販機横に集まるように」
「「「はい!」」」
「では解散!」
部員の数人と一緒に試合を観る約束だけをして、私は足元に置いていたリュックに手を掛ける。肩に背負いながら歩き出そうとしたその瞬間、名前を呼ばれたので振り返ると明稜体大の道明寺先生が立っていた。後ろには見たことのある大学バスケ部の女生徒も居る。
「道明寺先生!」
「やあ早乙女さん、お疲れ様。さっきの試合も大活躍だったね」
「ありがとうございます。まだ一回戦なのにご覧になってたんですね」
「君の本気が見られる数少ない機会だからね」
道明寺先生は微笑みながらも目の奥は監督らしく鋭く光っていた。
「君は気付いてないだろうが、観客席には二年前の講習会に参加してた選手や監督が多く居たんだよ」
「! そうなんですか」
「ああ。地区予選を観に来るのは難しいが全国大会なら理由をつけて日本中の関係者がここに集まれる。山王工業の堂本監督が推していることもあるし、君に注目している人間は大勢居るということだ」
こういうことを言われた時、どう返せばいいんだろうか。ありがとうございますとお礼を言えばいいんだろうか。謙遜するのも生意気だと思うんだけど。
「監督、某アニメの司令官みたくなってるからもう止めてください」
「ごめんね早乙女さん。さっき観客席で関西の大学の監督と言い合いになったから、ちょっとピリピリしてんのよ」
「早乙女さんのことを駒か何かとしか思ってなさそうな言い方でしたからね」
「夏の試合でウチに負けてるからっていうせいもあるでしょうけど」
部員さんから事情を聞くと関西のとある大学のバスケ部コーチが「早乙女はウチが獲得する」みたいな発言をしてきたらしい。ちなみにその大学の名前を聞かせてもらったが、記憶にはちっとも残ってなかった。もしかしたら家で一回眺めて放置している学校資料の中に紛れているかもしれない。
「まぁそれはそれとして、君の活躍と湘北高校を心から応援してるよ。可能な限り都合をつけてこいつらも連れて君の試合を観に来るつもりだから」
そう言い終えると道明寺先生は明稜体大女バス部を率いて出口に向かった。この後の試合には用がないらしい。
そろそろ本気で一成達のところへ行きたい。次は誰かに呼ばれても気付かない振りをしようと決めたら誰にも声を掛けられなかったから人生って不思議だ。
一成達が居る柱へ向かえば、合流してすぐに「道明寺先生から何言われてたピニョン?」と坊主集団に詰め寄られた。そこそこの人数に囲まれた私を遠くから見守ってくれていたらしい。経緯を説明すると彼らは即座に理解できたようでうんうんと頷く。
「大学推薦狙ってるのは学生だけじゃなくて学校側も、ってな」
「全国出る大学は推薦合戦で大変だよね」
「聞いていいのか微妙だけど、皆はもう大学っていうか進路決まってるの?」
松本とイチノの発言でふと気になり、それとなく尋ねてみると横に居る一成が何てことないことのように言った。
「ここに居るメンツは全員推薦で大学が決まってるピニョン。よっぽどの不祥事を起こさない限りは春から大学生ピニョン」
「えっ」
一成は進路が決まってたのか。
そういう話聞いてなかったけど、よくよく考えれば私も尋ねてないし何も話してなかったな。
進学を考えていたから受験で困らないよう成績は維持してたけど目の前のバスケに一生懸命で先のことを考えてなかった。
まさかのウィンターカップ会場で受験生である現実を思い出す私って、もしかしなくてもヤバイのでは? 背中を冷や汗が伝っていくのを感じていると、一成が手の平で私の頭をぽんと叩きながら言う。
「夢子、そう焦るなピニョン。お前と俺達では全く事情が違うピニョン」
河田と松本も当たり前のように続ける。
「んだなぁ。山王工業のレギュラーってだけで早々に進学先が決まる傾向があるってだけだべ」
「道明寺先生があれだけ気にかけてるんだ。間違いなく明稜は早乙女を欲しがるだろうさ。どっちにしても早乙女の成績なら一般受験だって問題ないだろ。東大受けるなら分からないけど」
「東大はさすがに無い」
東大合格を目指す世界線の私なら手にしているのはバスケットボールではなく参考書だろう。
「一般受験でも推薦でもどっちでもいいけど、夢子が行きたい大学に進めればいいと思うピニョン」
「一成……」
「バスケがやりやすい環境なら嬉しいピニョン。それに、遅咲きの夢子を獲得しようと大学が慌ててる様は見てて面白いピニョン」
「うん。それは一理ある」
「勝ち進むごとにその熱量は上がるよな」
「うし、夢子には推薦合戦をもっと盛り上げてもらうとするべ」
ピーチクパーチク騒ぐ坊主達に、私はつっけんどんに言い返した。
「私の感動を返しやがれ!」
金ヶ峰高校と湘北高校の試合は59-98という点差で湘北が勝利した。
流れる汗でユニフォームは湿り、脚を中心に身体がずっしりと重い。
でもこれは試合を完走しきったからこそ、本気を出さなければ味わえないものだ。
第45話 高校三年、ウィンターカップのお話②
すぐに後の試合が始まるためベンチを占有することはできない。荷物を早々にまとめて体育館を出なければ次の高校の迷惑になる。息をつく暇もなく更衣室に入って着替えを済ませ、私と先生が先頭に立って体育館のロビーへ部員達を誘導した。
ウィンターカップの試合は都内にある複数の体育館で行われている。どの体育館でどの学校が試合をするかは事前にポスターやパンフレットで告知されているため、準々決勝や決勝のようにロビーや廊下がごった返すことはない。
あまり居ないスペースはないものかと辺りを見回していると、白いジャージを着た数人の坊主頭が片手を上げて挨拶してきた。
「一成! 皆も!」
「お疲れ様ピニョン」
「夢子、絶好調だったな! どっと疲れたべ」
「観客も面白そうに観てたぞ」
「湘北の奴らも嬉しそうだったしな」
一成を筆頭に慣れ親しんだ山王バスケ部員が表情を緩ませながら勝利を祝い、労ってくれた。
「ゆっくり話したいところだけど、湘北で話したいこともあるピニョン? 俺達は向こうで待ってるからここで話せばいいピニョン」
後ろで私達を見守っている湘北勢を一瞥すると、ぺこりと頭を下げた一成は仲間を引き連れて少し離れた柱のほうへと歩いて行った。
その気遣いを有難く受け取り、部員達に私のそばへ寄るよう手でこまねく。「キャプテンから話をどうぞ」と振ったが、彼女は自分でなく私から話してほしいというような視線を向けてきた。断る理由もないので引き受ける。
「まずは一回戦お疲れ様でした! ウィンターカップを何度も経験してる金ヶ峰を相手に39点も点差を付けれたのはまぐれじゃない。皆が朝晩頑張って練習して、技術が向上したからこその結果です」
荷物を足元に置き、部員達は私の話に真剣に耳を傾ける。一言も聞き逃すまいと集中している。試合後なんだからもっと力を抜いてもいいんだけどなぁ。
「相手の戦力バランスやファウルに助けられた部分は勿論あります。だけど、それを差し引いても各々の武器を最大限に活用できたのはとても良かった。この試合でしか得られないものがあったと思います」
いくら真剣に練習をしていても試合の緊張感とは別物だと思う。
奇跡は起こらない。練習で出来ないことが試合で出来ることはほぼ無い。
でも。試合にしか生じないギリギリの空気が、想像以上の実力を発揮させるきっかけに繋がることは有り得るだろう。
苦手なスリーポイントを敢えて打ってみるだとか。いつもより低く重心を落としてディフェンスをしてみようだとか。実験的に試すだけの行動であっても結果に結びつくなら上々だ。たとえ点が取れなくても、その行動を起こすことにこそ意味がある。
「私は今日の試合とても楽しかった。一人でもバスケを続けてきて、ここのバスケ部に再入部して皆とプレーが出来て良かったって心から思いました。この楽しさを少しでも長く味わいたい。この先もひとつひとつの試合に全力で挑みましょう。私からは以上です」
言い終えると、先生と部長が滂沱の涙を流していた。
「どうしたんですか二人とも。引退試合にはまだ早いですけど」
「気にしないで……あと私からはもう言うこと無いわぁ……全部早乙女さんが言ってくれたから」
「私も同じく。今日、すっごく楽しかった。すっごく疲れたけどそれ以上に楽しかったの。練習の成果が出せて良かった。やってきたことが強い学校にも通用するって分かって、本当に嬉しかったの。だからありがとおぉ」
「だ、誰かタオルを部長に!」
「部長、目ェ腫れるから擦らないでください!」
床に泣き崩れるんじゃないかと心配した部員達が部長を取り囲む。部長と頑張ってきた三年生は貰い泣きしていた。一回戦を突破したばかりなのに、傍から見たら惜敗した高校なのかと勘違いされそうな状況である。
気を取り直した先生がハンカチで涙を拭いながら今後の行動について説明する。
「今日の試合に関する詳しい反省は夕食後のミーティングでやります。この後のことだけど、体調が悪い人は副顧問の杉本先生と一緒に宿泊所に戻って休んでください。試合を観る元気がある人は明日の二回戦で当たる可能性がある高校の試合を観に行きます。試合は一時間後くらいだから、それまでは自由行動とします」
自由行動があるのか。一成達と話せる時間がつくれそうで良かったと安堵する。
「全員集合してからバスに乗るから、試合後はなるべく早めに外の自販機横に集まるように」
「「「はい!」」」
「では解散!」
部員の数人と一緒に試合を観る約束だけをして、私は足元に置いていたリュックに手を掛ける。肩に背負いながら歩き出そうとしたその瞬間、名前を呼ばれたので振り返ると明稜体大の道明寺先生が立っていた。後ろには見たことのある大学バスケ部の女生徒も居る。
「道明寺先生!」
「やあ早乙女さん、お疲れ様。さっきの試合も大活躍だったね」
「ありがとうございます。まだ一回戦なのにご覧になってたんですね」
「君の本気が見られる数少ない機会だからね」
道明寺先生は微笑みながらも目の奥は監督らしく鋭く光っていた。
「君は気付いてないだろうが、観客席には二年前の講習会に参加してた選手や監督が多く居たんだよ」
「! そうなんですか」
「ああ。地区予選を観に来るのは難しいが全国大会なら理由をつけて日本中の関係者がここに集まれる。山王工業の堂本監督が推していることもあるし、君に注目している人間は大勢居るということだ」
こういうことを言われた時、どう返せばいいんだろうか。ありがとうございますとお礼を言えばいいんだろうか。謙遜するのも生意気だと思うんだけど。
「監督、某アニメの司令官みたくなってるからもう止めてください」
「ごめんね早乙女さん。さっき観客席で関西の大学の監督と言い合いになったから、ちょっとピリピリしてんのよ」
「早乙女さんのことを駒か何かとしか思ってなさそうな言い方でしたからね」
「夏の試合でウチに負けてるからっていうせいもあるでしょうけど」
部員さんから事情を聞くと関西のとある大学のバスケ部コーチが「早乙女はウチが獲得する」みたいな発言をしてきたらしい。ちなみにその大学の名前を聞かせてもらったが、記憶にはちっとも残ってなかった。もしかしたら家で一回眺めて放置している学校資料の中に紛れているかもしれない。
「まぁそれはそれとして、君の活躍と湘北高校を心から応援してるよ。可能な限り都合をつけてこいつらも連れて君の試合を観に来るつもりだから」
そう言い終えると道明寺先生は明稜体大女バス部を率いて出口に向かった。この後の試合には用がないらしい。
そろそろ本気で一成達のところへ行きたい。次は誰かに呼ばれても気付かない振りをしようと決めたら誰にも声を掛けられなかったから人生って不思議だ。
一成達が居る柱へ向かえば、合流してすぐに「道明寺先生から何言われてたピニョン?」と坊主集団に詰め寄られた。そこそこの人数に囲まれた私を遠くから見守ってくれていたらしい。経緯を説明すると彼らは即座に理解できたようでうんうんと頷く。
「大学推薦狙ってるのは学生だけじゃなくて学校側も、ってな」
「全国出る大学は推薦合戦で大変だよね」
「聞いていいのか微妙だけど、皆はもう大学っていうか進路決まってるの?」
松本とイチノの発言でふと気になり、それとなく尋ねてみると横に居る一成が何てことないことのように言った。
「ここに居るメンツは全員推薦で大学が決まってるピニョン。よっぽどの不祥事を起こさない限りは春から大学生ピニョン」
「えっ」
一成は進路が決まってたのか。
そういう話聞いてなかったけど、よくよく考えれば私も尋ねてないし何も話してなかったな。
進学を考えていたから受験で困らないよう成績は維持してたけど目の前のバスケに一生懸命で先のことを考えてなかった。
まさかのウィンターカップ会場で受験生である現実を思い出す私って、もしかしなくてもヤバイのでは? 背中を冷や汗が伝っていくのを感じていると、一成が手の平で私の頭をぽんと叩きながら言う。
「夢子、そう焦るなピニョン。お前と俺達では全く事情が違うピニョン」
河田と松本も当たり前のように続ける。
「んだなぁ。山王工業のレギュラーってだけで早々に進学先が決まる傾向があるってだけだべ」
「道明寺先生があれだけ気にかけてるんだ。間違いなく明稜は早乙女を欲しがるだろうさ。どっちにしても早乙女の成績なら一般受験だって問題ないだろ。東大受けるなら分からないけど」
「東大はさすがに無い」
東大合格を目指す世界線の私なら手にしているのはバスケットボールではなく参考書だろう。
「一般受験でも推薦でもどっちでもいいけど、夢子が行きたい大学に進めればいいと思うピニョン」
「一成……」
「バスケがやりやすい環境なら嬉しいピニョン。それに、遅咲きの夢子を獲得しようと大学が慌ててる様は見てて面白いピニョン」
「うん。それは一理ある」
「勝ち進むごとにその熱量は上がるよな」
「うし、夢子には推薦合戦をもっと盛り上げてもらうとするべ」
ピーチクパーチク騒ぐ坊主達に、私はつっけんどんに言い返した。
「私の感動を返しやがれ!」
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