短編
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✳︎白雪がイザナに会って釘を刺された後だと思ってください
「あまり気を悪くしないで下さいね。イザナ殿下は、えっと、少し過敏になっていて、」
「いえ、曜子さんが謝ることじゃないですよ。それに、言いたいことは……分かりますから」
珍しく口ごもる少女を曜子はためらうように見つめていた。
「あなたは優秀な薬剤師です。……イザナ殿下もきっと、すぐに理解されるはずです」
「ありがとう、ございます……」
そうして、白雪は固く口を閉ざしてしまった。
カチャリとカップの音が部屋に響く。
「……冷めちゃいましたね。新しいのを持ってきます」
俯いたままの小さな赤髪を眺めて曜子はそっと立ち上がった。
静かに扉を閉めて振り返ろうとした瞬間だった。
「お嬢さん、どうだった?」
びくりと音のした方に目をやる。……上だった。
「……相変わらず、神出鬼没ですね。せめて正面から現れて下さい」
思わずため息が漏れた。
「そりゃ失礼」
するりと下に降りてきた。完全に直す気はないといった顔だった。こっちは出てくるたびに、いちいち驚くというのに。
「……。まあ相当参ってましたね。あの白雪さんでも、流石に相手が悪いですから……」
「まあ、あの王子サマじゃねぇ」
「イザナ殿下もゼン殿下を想ってのことでしょうが、あの方は敵を作りやすい性格ですから……」
「で、曜子嬢は?どうすんの」
「どうもこうもありません。そりゃあ立場上はイザナ殿下の下に付いてますが、だからってこのまま放っておく訳にもいかないでしょう」
白雪とは友人であり、何度もその知識に助けられた同じ国を想う仲間でもある。
ゼン殿下にもお世話になった身だからこそ、二人を訳も聞かずいきなり引き剥がそうとするのをそのまま黙って見てはいられない。
「何とかしてでも、白雪さんを認めさせてみせます」
たかが薬剤師とイザナ殿下は考えているかもしれないが、彼女の仕事を見れば考えは変わるはずだ。
そこまで言って、じとりと観察するようなオビの視線に気がついた。
「な、んですか。何か言いたいことでも?」
「お人好し」
「……それはどうも」
皮肉めいた言葉の割に、オビはやけに面白そうに笑う。
なんなんだ、この人は、と何回目かのため息を、寸でのところで止めた。
「そういうあんた、嫌いじゃないよ」
ぽかんと、思わず口を開けてオビを見る。さっきよりも、明らかに面白がった顔に変わっている。
からかわれているのだ。
「はあ!?いや、もう!そういうのはいいですから!」
「とにかく!私はお茶を淹れてきますから、あなたはゼン殿下を呼んできて下さい」
いいですね!
と捨て台詞を吐いて曜子は足早に去って行った。
「ハイハイ」
面白い、面白いとほんのり赤くなった曜子の顔を思い出しつつ、書類の山に埋もれる主人を呼びにオビは動く。
これだから曜子をからかうのはやめられない。声をかけるたび、肩を揺らして目を見開くのも面白いが、さっきの顔は予想外だった。
まさかあそこまで恥ずかしがるとは思わなかった。思ったより意識されているのかもしれない、とニヤける。
あのお人好しに付き合って、二人の恋路を応援しに行こう。
上手くいったら、彼女も喜ぶだろうから。
「あまり気を悪くしないで下さいね。イザナ殿下は、えっと、少し過敏になっていて、」
「いえ、曜子さんが謝ることじゃないですよ。それに、言いたいことは……分かりますから」
珍しく口ごもる少女を曜子はためらうように見つめていた。
「あなたは優秀な薬剤師です。……イザナ殿下もきっと、すぐに理解されるはずです」
「ありがとう、ございます……」
そうして、白雪は固く口を閉ざしてしまった。
カチャリとカップの音が部屋に響く。
「……冷めちゃいましたね。新しいのを持ってきます」
俯いたままの小さな赤髪を眺めて曜子はそっと立ち上がった。
静かに扉を閉めて振り返ろうとした瞬間だった。
「お嬢さん、どうだった?」
びくりと音のした方に目をやる。……上だった。
「……相変わらず、神出鬼没ですね。せめて正面から現れて下さい」
思わずため息が漏れた。
「そりゃ失礼」
するりと下に降りてきた。完全に直す気はないといった顔だった。こっちは出てくるたびに、いちいち驚くというのに。
「……。まあ相当参ってましたね。あの白雪さんでも、流石に相手が悪いですから……」
「まあ、あの王子サマじゃねぇ」
「イザナ殿下もゼン殿下を想ってのことでしょうが、あの方は敵を作りやすい性格ですから……」
「で、曜子嬢は?どうすんの」
「どうもこうもありません。そりゃあ立場上はイザナ殿下の下に付いてますが、だからってこのまま放っておく訳にもいかないでしょう」
白雪とは友人であり、何度もその知識に助けられた同じ国を想う仲間でもある。
ゼン殿下にもお世話になった身だからこそ、二人を訳も聞かずいきなり引き剥がそうとするのをそのまま黙って見てはいられない。
「何とかしてでも、白雪さんを認めさせてみせます」
たかが薬剤師とイザナ殿下は考えているかもしれないが、彼女の仕事を見れば考えは変わるはずだ。
そこまで言って、じとりと観察するようなオビの視線に気がついた。
「な、んですか。何か言いたいことでも?」
「お人好し」
「……それはどうも」
皮肉めいた言葉の割に、オビはやけに面白そうに笑う。
なんなんだ、この人は、と何回目かのため息を、寸でのところで止めた。
「そういうあんた、嫌いじゃないよ」
ぽかんと、思わず口を開けてオビを見る。さっきよりも、明らかに面白がった顔に変わっている。
からかわれているのだ。
「はあ!?いや、もう!そういうのはいいですから!」
「とにかく!私はお茶を淹れてきますから、あなたはゼン殿下を呼んできて下さい」
いいですね!
と捨て台詞を吐いて曜子は足早に去って行った。
「ハイハイ」
面白い、面白いとほんのり赤くなった曜子の顔を思い出しつつ、書類の山に埋もれる主人を呼びにオビは動く。
これだから曜子をからかうのはやめられない。声をかけるたび、肩を揺らして目を見開くのも面白いが、さっきの顔は予想外だった。
まさかあそこまで恥ずかしがるとは思わなかった。思ったより意識されているのかもしれない、とニヤける。
あのお人好しに付き合って、二人の恋路を応援しに行こう。
上手くいったら、彼女も喜ぶだろうから。
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