短編
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「宗谷くん」
「うん、オッケー」
「やっぱりその色、似合うよ。ウンウン、いいねえ」
こらえ切れずにといった様子でにやける曜子を眺める。
そうなのか、と今まであまり見たことのない色のネクタイを見下ろす。
朝、出かけようとすると、曜子がいつのまにかドアの前に立っていた。
その手にはどこから見つけてきたのか、ネクタイを何本も持っていた。本当に家にあったのかも自分でも思い出せない柄もあったから、もしかしたら持ち込んできたのもあるのかもしれない。
「それ、」
「はーいお客さん、こちらへどうぞ」
何事だ、と聞くより先にどんどんと洗面台の前へと誘導される。
「ちょーっと、じっとしててね」
鏡の前の自分に次々とネクタイがあてがわれていく。
曜子が真剣な表情で鏡を睨むから、黙ってその動くつむじの流れを見つめていた。
「うーん、これかな」
やっとか、と思ったけれど実はそんなに時間は経っていなかったらしい。曜子が満足そうに決まったものをくるりと巻きつける。
そんね曜子がやけに満足そうだったので、たしなめる訳にもいかなかった。
「いきなりどうしたの」
「んー宗谷くん、今日はバシバシ撮られるだろうから、気合い注入しようと思って」
「……ありがとう」
「あんまり感謝がこもってないな〜〜」
まあいいか、と曜子は背を向けて片付けを始めた。
曜子にいちいち今日何かがある、と言ったことはないし、聞かれたこともなかった。
でも多分知っている、いつもそうだった。
大事な対局日の朝には少し変わったことが起こる。
少しだけ手の込んだ料理、どこからか引いてきた大吉のおみくじ、不思議な形の鉱石が鞄に忍んでいることもあった。
今日はネクタイか、と首元の見たことのないネクタイをさらりと触る。なんとなく心地が良かった。
今度は何か、曜子にあげようか。
忙しなく動く曜子を眺めながら、何をあげても嬉しそうに笑う曜子を想像して宗谷は静かに微笑んだ。
「うん、オッケー」
「やっぱりその色、似合うよ。ウンウン、いいねえ」
こらえ切れずにといった様子でにやける曜子を眺める。
そうなのか、と今まであまり見たことのない色のネクタイを見下ろす。
朝、出かけようとすると、曜子がいつのまにかドアの前に立っていた。
その手にはどこから見つけてきたのか、ネクタイを何本も持っていた。本当に家にあったのかも自分でも思い出せない柄もあったから、もしかしたら持ち込んできたのもあるのかもしれない。
「それ、」
「はーいお客さん、こちらへどうぞ」
何事だ、と聞くより先にどんどんと洗面台の前へと誘導される。
「ちょーっと、じっとしててね」
鏡の前の自分に次々とネクタイがあてがわれていく。
曜子が真剣な表情で鏡を睨むから、黙ってその動くつむじの流れを見つめていた。
「うーん、これかな」
やっとか、と思ったけれど実はそんなに時間は経っていなかったらしい。曜子が満足そうに決まったものをくるりと巻きつける。
そんね曜子がやけに満足そうだったので、たしなめる訳にもいかなかった。
「いきなりどうしたの」
「んー宗谷くん、今日はバシバシ撮られるだろうから、気合い注入しようと思って」
「……ありがとう」
「あんまり感謝がこもってないな〜〜」
まあいいか、と曜子は背を向けて片付けを始めた。
曜子にいちいち今日何かがある、と言ったことはないし、聞かれたこともなかった。
でも多分知っている、いつもそうだった。
大事な対局日の朝には少し変わったことが起こる。
少しだけ手の込んだ料理、どこからか引いてきた大吉のおみくじ、不思議な形の鉱石が鞄に忍んでいることもあった。
今日はネクタイか、と首元の見たことのないネクタイをさらりと触る。なんとなく心地が良かった。
今度は何か、曜子にあげようか。
忙しなく動く曜子を眺めながら、何をあげても嬉しそうに笑う曜子を想像して宗谷は静かに微笑んだ。
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