短いつぶやき
ひらめいたテラ妹
2024/10/15 07:50パァン!と破裂音が派手に響いて、テランスはあちゃあ、と言わんばかりに整えられた前髪によって剥き出しになっている額に手を当てた。「わたくしの婚約者に色目を使うなんて最低ですわっ!」「そんな……っ私は、何も……!!」可哀想な程に真っ赤に腫れた頬を押さえて、素朴な女学生は瞳を潤ませて声を裏返らせる。手を上げたブラウンの長い髪を縦ロールにした同じく女学生……テランスの妹は、なんですって!とまたキィィと金切り声を上げた。「交際関係のない殿方、しかも婚約者のいる男性に腕を組んだり気安く話しかけたり!貴女には常識というものがなくって?!いくらわたくしが中流階級だからって、見下すにもほどがありませんこと!?」「落ち着いて……」たまらずテランスが妹を制する。「ですがお兄様……!!」妹の方はまだ言い足りないと吊り上げた目で兄まで睨みつけている。勘弁してくれ。ここにいないディオンに癒しを求めたい気分だった