「ああ、たしかに素晴らしい作品だ。美しい。繊細でいて尚且つ大胆な切り口がある。揺れ動く心情が表現されて、見る者を魅了する」「しかしこれは沢山の犠牲の上に成り立つものだ。知っているかね？この作者は本当に素晴らしい物を創り出す。その中で何人もの人々が筆を折った。この作者の作品に嫉妬したわけでも、羨望したわけでもない。作者自身の行いによって」「ああ全く、君は何も知らないのだな。仕方あるまいて。作者は狡猾であったし、愚者であった」「我々も被害者であり、加害者であった。中立とはなんだ？倫理とは。平等とは。考えて立ち止まる者は多かったが、不可侵の領域に気付かず、立ち入って騒ぐ者もいた」「気付かなかったのか、気付かない振りをしたのか。ただそこにあったのは、ゾーニングを主張する声だけだった」「何をぼうと突っ立っているのだね。わからないか？作者は権利を駆使しただけなのだ」「ダブルスタンダードとはよくいったものだ。状況に応じて判断を変えて何が悪い？何が正義で、何が悪なのか？言ってみたまえ」「おかしな事など何も無いさ。それぞれの言葉が正しく、間違いなどひとつもない。当人にとっての真実なのだから」「ああ、ああ、実に素晴らしい作品ではないか。積もる犠牲の上に立つに相応しい、立派な王妃トゥッリアのようだ」「このような偉大なる作品を創る者を、たかが犠牲を減らす為だけに失うなどとは、ナンセンスだとは思わないかね？」