テ゛ィス゛ニープリンセスママまとめ

隠れ家での暮らしにも随分慣れて、ディオンも衰弱していた頃とは見違える程に心身ともに回復し、おおよその傷が癒えたことで隠れ家内の現状把握にも取り組むようになり、住人達の手伝いを日課とするようになった。
張り切って手伝いをしすぎて他の住人の仕事を奪わないように、と気をつけるとやはり手が空いてしまうようで、リハビリが終了となった後からは鍛錬を始め、隠れ家内に数名待機させている聖竜騎士団団員に紛れて軽い運動もしているようだった。
止めはしない。ディオンが元気に楽しく暮らせているのならなんだって。
ただ、元気が溢れすぎて予定より早く仕事を終わらせてしまった結果、暇を持て余し、退屈を覚えて湖の果てを眺めるようになったのは、テランスのちょっとした悩み事だが。
「私もテランスと共に出かけたい。駄目か?」
そんな言葉に、180度変わった外の世界を二人(と同行する数名)で歩きたいと思う反面、このまま隠れ家とりかごに閉じ込めておきたいという恐ろしい考えを持つ自分がいる。
10数年分の独占欲が今になって表に出始めているのだと思う。三度の喪失感と再会は、そこまで自分の心の鍵を破壊してしまった。18の頃に庇われて重症を負わせてしまった時。反乱の際に起きた悲劇で自我を失われてしまった時。あの澱んだ空に羽ばたいていく御姿を見た時。
つい最近ディオンに呼ばれたからといって此処までわざわざやって来た母上にも叱られたばかりだというのに、未だうじうじと悩んでいる自分は情けない男だと思う。本人だって今すぐ外にという意味ではないと言ってくれたし、外に出てどこかへ消えてしまうわけでもない。
あくまでも物資や資材の調達や、誰かが欲している物を届けたりするだけ、なのだが。
──自分が外から帰ってきた時、君が迎えてほしい。
疲れて船を降りた先に君がいて、お帰りと出迎えてくれることに、じんわりと胸が満たされるような気持ちになっている。ということを、どう伝えればいいのかわからずにいる。


船を漕ぎながら見上げた先にいた彼に嬉しくなって手を振ると、肘で脇をついてきたガブが小言のように「外に繰り出す許可くらい出してやれよ」等と言ってきた。勿論無視をした。今日も桟橋まで降りてきたディオンに「お帰り」と微笑まれて、一日の疲れが取れていくようだった。なんでジョシュアもお前も仲良くなったと思ったら俺に冷たくなるんだよ!そう騒ぐ声もまたスルーして、ただいまを唇に乗せて頬を寄せた。
だからいつも部屋でやれっつってるだろお。こうやって行動を起こす度に面白い反応をするガブに笑いを噛み殺しているのがバレるのも、また彼を友だと思っている故だ。


「仲が良いな」
「そう?」
拗ねたように唇を尖らせたディオンが可愛らしい。
お前に部屋でやれと言われたから部屋でやる。と、仕方ないから正直にそうガブに言ってやったのに「わざわざ報告すんな!」と尻を蹴られてしまい、ディオンを連れて早々に自室に引き上げたのは、つい先程のことである。
風呂に入るよりも先にそなたを味わいたい。着替えを用意しようとした自分を引き止める、そういうディオンの我儘も、少し前までの自分ならいけません、と頑なに断っていたところだが、今ではある程度受け入れられるようになった。
断る自分に食い下がるディオンを宥めて身を清めることを先決にしていたのは、ディオンを汚してしまうという気持ちだけでなく、単に恥ずかしい、ということと、臭いと嫌がられてしまうのではないか、とか、そういった思いが拒む理由の詳細だった。
考えている内に胸に抱き着いてきたディオンがぎゅう、と脇の下から背中に手を回し、スン、と首元の匂いを嗅いでくる。
臭くないだろうか。そんな事をされるとかなりの羞恥を覚えてしまうのだが、そなたの匂いが濃くて良い、とふにゃりと蕩けた顔で言われてしまうと、多少の恥ずかしさなんぞ我慢しろと自分を叱るしかなかった。
「大丈夫か」
何のことかと思えば、ディオンの視線が尻の方に向いている。
ガブに蹴られた事の心配、というより、心配というていで尻を見たいだけなのだと思う。尻を見たいのは私の方だ。その意思を込めて、抱き着いたままのディオンの円やかな尻を両手で掴むと、ン、ぁっ、と鼻から抜ける声を出して、頬を鮮やかに色付かせた。
そろそろと背中から腹部に移動してきたディオンの手がベルトを外して、トラウザーズを少しずらした隙間から手を忍び込ませてくる。肌着の上から局部をゆっくりと撫で、むにむにと遊び出したディオンが、ふふふ、と楽しそうに肩を揺らした。
「硬くなってきた」
「玩具じゃないんだから…」
肌着を押し上げた形をなぞるように、ディオンの指先が根元から反り返りを辿って、山の先端を上下に擦る。爪で弾くように掻かれれば、布越しでもお構いなしに反応した愚息は更に熱を帯びて角度を変え、じわりと肌着を湿らせた。
おお、と感嘆したような声を出したディオンが色を濃く変えた部分を指の平で押す。亀頭を潰さないでくれ。そして滲んだカウパー液をまじまじと見つめるのはやめてほしい。どういう拷問なんだ、これは。
顔を上げたディオンの顔を見て、言おうとしていることが一瞬でわかってしまった。少しでも気を逸らしてやろうと緩く撫でるだけだった尻を押し込むように揉み、合間に指を挟ませようとすると、こら、と叩かれてしまい、ついに「テランス、」と阻止したかった言葉を吐き出させてしまった。
「舐めてもいいな?」
「駄目です」
それはさすがに。風呂の後にしていただきたく。



──思い出してみれば「いいか?」ではなく「いいな?」だったな。
結局まんまと押し切られたテランスは、これまでの経験と覚えた技術を存分に発揮したディオンの口淫を受け、飲ませてほしいと言うとろりと蕩けた顔に負け、濃艶に悦がって啼いた声と淫れた肢体に負け、「もっとほしい」が「もう無理」に変わっても止まれない程に己の欲望にも負けて、仕事から帰ってすぐにしたことが風呂でも飯でもなく濃厚なセックスだけだと深夜を過ぎてから気付いてしまった。
ラウンジから何かつまめる物を拝借してくるか。その前に、ディオンの身を浄めなければ。
そう考えて振り返った先にある丸みに、またテランスが誘惑されてしまったのは、本当にどうしようもなかった。
手のひらを押し返す弾力性。柔らかで張りのある感触。
桃のように美味しそうで形の良い尻たぶは酷く魅力的で、口に含みたくなってしまう。
大きく開いた口の中に当然入りきらないその山には、優しく歯を立てることで良しとした。
噛まれたことでぴくりと反応したディオンが目を覚ましたのか、もそもそと僅かに身動ぐ。
身体中を濡らした様々な体液とは別に、小さな痛みを覚えた尻の方を見ようとして、その上に跨ったテランスと目が合ったことに色々と察したようだった。
「また噛んだな…?」
「今日はまだだったから」
「そういう問題ではない」
呆れたようにディオンが言う。小さく溜息を吐いて、困った様に見せかけたディオンは、テランスの視線が尻に戻ったことにうっかり吹き出してしまいそうになった。
「テランス?」
「ごめん。つい」
完全に棒読みなのは、あまり悪いと思ってないからだ。
──全く、昔から事あるごとに私の胸や尻を揉むのに熱中するのは、テランスの悪い癖だ。
胸も尻も膨らんで立派に育ったおかげでサイズの合わなくなった洋服やトラウザーズを思い出す。
最早一言言わないと気がすまない、と、ディオンはにやりと口角を上げた。
「育てたそなたが責任を取れよ」
「それはもう」
食い気味に返事をしたテランスに、今更だったな。とディオンは肩を竦めた。
無意識のプロポーズほどタチの悪いものはないのだ。

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