SSS

気高く美しい貴方が私に触れる。重ねた指先が熱を孕んで、擦り寄せた身体は全身を燃え上がらせた。


「そなたと踊るのがこれほど楽しいとは。初めて知った。なあテランス」


我が君が微笑う。視線が絡まり、影が落ちる。震える心が歓喜を叫んで、握りしめた手を離したくないと強く願った。


「そなたはもう自由だ。もとより余の従者ではない。国も、立場も既に無いのだ。それでも余に、私についてくるというのなら。その時は──」
「ディオン様」


宝石のような琥珀色の眼が輝く。薄く張った水の膜は、私が離れる事への未練だろうか。あぁ、そんな心配をなさらずとも、私は。


「貴方となら何処へでも」


今度こそ失わないように。




薄紫の約束
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