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小籠包

味のしなくなったガムをティッシュに吐き出してゴミ箱に捨てた。
部活後の疲れた身体で来たのはブン太の家に近い大型スーパー。夕方とはいえども客は陳列棚から商品を取り出しては物色している。今日、ブン太がスーパーに寄ったのは母親が夕飯を用意してないからだ。今日は16:00から18:30までPTA総会が行われている。母親は生真面目にも毎年それに出席していた。大人は大変だと思う一方、「好きなもの食べていいわよ。でも弟が家にいるから外食はなしね」という母親の言葉を思い出しにやりと笑う。好きなもの。ブン太は軍資金を片手に店内に吸い込まれていった。
「中華が食いてえんだよなー」
餃子。担々麺。麻婆豆腐。それらの前を素通りして足を止めたのは小籠包。
「小籠包な」
ブン太は一袋カゴに入れた。そして焼豚を一パックとサラダを二袋。最後にお菓子をポイポイと投げ入れてレジに向かった。
「予算内で収められてよかったぜぃ」
内心ヒヤヒヤしながらレジを見守っていたが表示された金額にブン太は「よかった〜」と声を出しそうになった。がさがさ音をたてるレジ袋を持ち自宅へと急ぐ。誰もいない夜道にぐう、と腹の音が響いた。
「ただいま〜」
ブン太はダイニングのテーブルに一先ずレジ袋を置いてから手を洗う。そして再びダイニングに移動し、小籠包はレンジへと、焼豚とサラダはそのまま皿に盛り付けた。炊飯器を除けば三人分は食える米が炊き上がっている。その時ピピッと音を立ててレンジが止まった。ブン太はミトンをはめて小籠包が載った皿を取り出す。
「うまそ」
弟に夕飯の支度が出来たと声をかけて、席に着くのも待たずブン太は箸をとる。仕方ない、部活で疲れて腹がペコペコなんだから。早速小籠包を箸で掴みはぐりと口に入れる。もちもちと弾力のある皮からじゅわ〜と中のスープが溢れ出す。
「いや、うっま!」
ブン太はそう言ってもう一つ箸でとった。顔を緩ませながらそれを咀嚼する。
ブン太は次の日、ジャッカルに嬉々としてそれを報告し、ジャッカルはラーメン桑原のメニューに小籠包を追加するか…と検討し始めた。
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