通りゃんせ
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私は数学の小テストをなんとかパスした。いつもならテスト前日の夜なんて関係なくさっさと寝てしまう私だが、今回はそういうわけにもいかなかった。ヒイヒイと言いながら片手にはエナジードリンク、もう片方の手には参考書を持って机に向かっていた。数学が滅法苦手な私がここまで点数を上げたのは珍しいと先生は答案返却時にそう褒めてくれた。そうだ、普段なら怒られない程度の点数を取る私が珍しくも平均点を大幅に上回ったのだ。これで私は心置きなくお祭りを存分に楽しめることができる。ありがとう、昨日の自分。
私は余りの浮かれように少し早く駅に着いた。夕陽に照らされるホームにぽつんと一人で友達を待つ。電車からは唇を固く結んで帰路を急ぐ人がどっと出てきた。疲れが滲む乗客とは反対に、今私はとても晴れやかな顔をしているだろう。椿の模様の浴衣に合わせて通販で買った赤めのグロスを塗った。きちんとメイクをしてこうやってしていると大人の仲間入りを果たした気分になる。首を伸ばして友達を待っているとカラカラと乾いた音を立てて此方に近づいてきた。
「かわいい~椿柄ってお洒落!」
「ありがと。紺って意外だったけど似合う!大人っぽくていいね」
私達は制服ではない装いをしているお互いを褒め合う。浴衣は人をとても可愛く見せる。友達は紺の浴衣にをパールのアクセサリーをつけていた。爽やかな見た目でその辺りだけ涼しく感じる。きゃあきゃあとはしゃいでいるといつの間にか電車が到着して私達は軽やかな足取りで乗り込んだ。
少し早めに着く電車に乗ってゆっくりと回ろうと話していたが、私たちが到着したときには既に境内にはそこそこの人がいた。あれ、と二人顔を見合わせる。みんながSNSに投稿している場所はかなり人が並んでいた。仕方ない、先に屋台を回ろうと言って私達はぶらぶらする。かき氷を頼めば練乳はかけ放題だよ!と言われたので私はこれでもか、というほどにかけた。おじさんは私のその威勢の良さに大口を開けて笑う。
「お嬢ちゃん存分にかけな、遠慮しなくていいから」
「ありがとうございます。ちょっと、カメラ向けるのはなし」
「いいじゃん。練乳を大量にかける女」
友達はカメラを向けてけらけらと笑った。
「お嬢ちゃんたち、ここの地元の人間か?」
「違います、電車で来ました」
「ほう」
おじさんは無精ひげを撫でつける。含み笑いをしてこう言った。
「行きはよいよい帰りは怖いってな!気をつけろよ」
おじさんに揶揄われたあと、私達はいろんな屋台を巡った。鮎の塩焼き、焼きそば、タピオカ、チーズハットグ。金魚掬いをしようかと言ったけど、屋台の金魚たちは短命だというのでやめてしまった。狭いビニールプールで己の命の短さなど知らず泳ぐ姿はなんともいえない可愛らしさがある。庇護したくなる可愛さ。私達は金魚掬いの屋台から離れると、友達が突然「あ、イヤホン落とした」と言った。
「マジで?どこで?」
「分からない、でもタピオカ買うときにはあった。白いケース見えてたし」
「じゃあタピオカのとこ戻る?」
「うん…あーでもここで待ってていいよ。スマホ繋がるようにしててくれてたら」
「分かった。見つかるといいね」
「絶対に見つける。あれ三万円したんだから…」
友達は小走りで群集の中を走っていく。私は近くにあった岩に腰を下ろした。
「遅い」
友達は一向に連絡を寄越さず、30分程立った。苛立ちなんかよりも焦りの方が私の心を暗くする。どうしようか、もし何かトラブルにでも巻き込まれていたら。電話をするが繋がる気配はない。私は立ち上がって友達が駆けていった方を追うことにした。
待って、あの子どっちの方向に行ったっけ?
タピオカの方って言ってた、じゃあ右のほうに進めばいいはずだ。私は一瞬頭にモヤがかかったようになった。疲れてるのかな、やっぱりうちの学校の補習は無くすべきだ。今度親に相談して面談のときに伝えてもらおう、と私は歩き出す。砂利を踏む音がやけにうるさい。
私は余りの浮かれように少し早く駅に着いた。夕陽に照らされるホームにぽつんと一人で友達を待つ。電車からは唇を固く結んで帰路を急ぐ人がどっと出てきた。疲れが滲む乗客とは反対に、今私はとても晴れやかな顔をしているだろう。椿の模様の浴衣に合わせて通販で買った赤めのグロスを塗った。きちんとメイクをしてこうやってしていると大人の仲間入りを果たした気分になる。首を伸ばして友達を待っているとカラカラと乾いた音を立てて此方に近づいてきた。
「かわいい~椿柄ってお洒落!」
「ありがと。紺って意外だったけど似合う!大人っぽくていいね」
私達は制服ではない装いをしているお互いを褒め合う。浴衣は人をとても可愛く見せる。友達は紺の浴衣にをパールのアクセサリーをつけていた。爽やかな見た目でその辺りだけ涼しく感じる。きゃあきゃあとはしゃいでいるといつの間にか電車が到着して私達は軽やかな足取りで乗り込んだ。
少し早めに着く電車に乗ってゆっくりと回ろうと話していたが、私たちが到着したときには既に境内にはそこそこの人がいた。あれ、と二人顔を見合わせる。みんながSNSに投稿している場所はかなり人が並んでいた。仕方ない、先に屋台を回ろうと言って私達はぶらぶらする。かき氷を頼めば練乳はかけ放題だよ!と言われたので私はこれでもか、というほどにかけた。おじさんは私のその威勢の良さに大口を開けて笑う。
「お嬢ちゃん存分にかけな、遠慮しなくていいから」
「ありがとうございます。ちょっと、カメラ向けるのはなし」
「いいじゃん。練乳を大量にかける女」
友達はカメラを向けてけらけらと笑った。
「お嬢ちゃんたち、ここの地元の人間か?」
「違います、電車で来ました」
「ほう」
おじさんは無精ひげを撫でつける。含み笑いをしてこう言った。
「行きはよいよい帰りは怖いってな!気をつけろよ」
おじさんに揶揄われたあと、私達はいろんな屋台を巡った。鮎の塩焼き、焼きそば、タピオカ、チーズハットグ。金魚掬いをしようかと言ったけど、屋台の金魚たちは短命だというのでやめてしまった。狭いビニールプールで己の命の短さなど知らず泳ぐ姿はなんともいえない可愛らしさがある。庇護したくなる可愛さ。私達は金魚掬いの屋台から離れると、友達が突然「あ、イヤホン落とした」と言った。
「マジで?どこで?」
「分からない、でもタピオカ買うときにはあった。白いケース見えてたし」
「じゃあタピオカのとこ戻る?」
「うん…あーでもここで待ってていいよ。スマホ繋がるようにしててくれてたら」
「分かった。見つかるといいね」
「絶対に見つける。あれ三万円したんだから…」
友達は小走りで群集の中を走っていく。私は近くにあった岩に腰を下ろした。
「遅い」
友達は一向に連絡を寄越さず、30分程立った。苛立ちなんかよりも焦りの方が私の心を暗くする。どうしようか、もし何かトラブルにでも巻き込まれていたら。電話をするが繋がる気配はない。私は立ち上がって友達が駆けていった方を追うことにした。
待って、あの子どっちの方向に行ったっけ?
タピオカの方って言ってた、じゃあ右のほうに進めばいいはずだ。私は一瞬頭にモヤがかかったようになった。疲れてるのかな、やっぱりうちの学校の補習は無くすべきだ。今度親に相談して面談のときに伝えてもらおう、と私は歩き出す。砂利を踏む音がやけにうるさい。