「…藍染…」
浮竹が悲しみを帯びた、哀れむかのような表情で藍染を見る後ろで、
京楽は先程までの恩師との無益な闘いの傷に胸を痛めているその表情を編み笠にて被った。
「…どうした。何が可笑しい藍染」
夜一が藍染の悪びれる様子もなく見せた笑みの意味を問う。
「…ああ、済まない。…んだ」
少し項垂れた藍染は口元を更に緩めていた。
「! 離れろ砕蜂!!」
夜一はとっさに砕蜂に告げ、藍染から離れた。
「嬉しかったんだ……。僕と東仙は護廷十三隊の中でもこれと言った個性のない優等生で、
ギンがいじめ役を買って出てくれても大きなトラブルになる前に終わってしまうから、いつも注目される事がなくて………
だから今、こうして皆の中心に立てた事が嬉しかったんだ!」
「藍染…」
浮竹は藍染の名を再び口にした。
「馬鹿野郎…!俺達が、お前をそんな程度の存在だと思ってたと言うのか!」
「…浮竹」
眼鏡の奥に光るものを滲ませた藍染が、浮竹をしっかりと見た。
「俺達は護廷十三隊隊長。気性は違えど立場は皆同じだろう!?」
「然様…隊長たる者、優秀であるのは当然の理。儂も教え子である浮竹らとおぬしらを差別した覚えはない」
「山本…総隊長」
その光るものは藍染の頬を伝った。
「藍染!」
浮竹が駆け寄り、藍染の肩を抱いた。
「…結局、惣右介君がこんな茶番をしでかしたのは無意味だったってワケか………」
やれやれ参ったねと、京楽はため息を溢した。
「いや、そうでもない。優等生とは言え、爆発する場がなくば不良化するという事を十分に知らしめたのだ」
夜一が僅かに口角を緩めてみせた。虚化と不良化をかけた絶妙な自分のシャレに酔っている。
「それに藍染のおかげで私は夜一様と再会できたのだ」
砕蜂も藍染の反乱がもたらしたものに感謝していた。
藍染は既に浮竹の肩で鳴咽している。
浮竹は彼の背中をヨシヨシと何度も擦ってやった。
「藍染。俺達はいつまでも同士であり、良きライバルだ!」
爽やかな笑顔を見せる浮竹に、藍染はああ、と頷いた。
「あ~あ、自分でバラしてもた。ホンマ、藍染隊長は涙もろてかなんわ。…ちょっと残念やなあ…」
乱菊も市丸がヒール役であった事を知った今、憎しみを込めて市丸の腕を掴んでいる必要はなかった。
「もうちょっと、捕まっとっても良かったのに…」
市丸は寂しそうに乱菊を眺めた。
浮竹は藍染の涙が乾くのを待ってこう言った。
「藍染、あの夕日に向かって走ろう!」
「負けないよ、浮竹!」
既に傾き始めた太陽を指差す浮竹に、藍染も笑みを返した。
「ハハハッ」
「アハッアハハッ」
そうして二人は双極を駆け出した。
互いを見つめ、ライバルとして張り合い、同士として同じ歩調で。
「あ、オイ。浮竹~、藍染!…」
二人は爽やかな笑みを残して双極の果てに消えて行った。
地に堕ちたか 浮竹、藍染…!
了
************************************************雪の護廷十三隊〔一〕 風⋆花⋆雪⋆月