武礼が現世で虚を退治したのを知ったのは夏の盛りも過ぎた頃だった。
「……いつ?」
告げた直後に溜息を漏らした
まつりに
さくらが時期を問うた。
「入隊したての頃ですって。
あーもー。私、先輩面するの恥ずかしいわ…」
まつりが顔を覆いたくなるのもわかる。
入隊一年目で定期警備に同行するだけでもかなり異例の事なのに、既に単独で虚退治もこなしていたなんて……。
「
さくら姉」
姉を見つけた
武礼がにこやかな笑顔で近付いてくる。
「あ、書類!」
「そうそう!」
六番隊の玄関先で立ち話をしていた二人は用件を思い出した。
「じゃ、頼んでくるわ」
「うん、お願い…」
武礼が側に来る前に、
まつりがそそくさと奥に消えていく。
「…………」
「
武礼、現世で虚退治したの?」
どうして教えてくれなかったのかという思いと単純に凄いという驚きで、
さくらは事実を確認していた。
「ぇ?…ああ」
まつりを見送っていた
武礼は、急に話を振られて何の事かすぐには理解できなかったようである。
「虚退治じゃないよ。魂葬の演習で現世に行ったんだ」
「…そうなの?」
「うん。その時虚を発見した先輩が、あれなら俺でも退治できるからやってみろって。なんだかぼーっとした虚でさ。あっけなかったよ」
「でも、一人で退治したのよね?」
「したけど…先輩方に付き添ってもらっての事だから、言う程でもないと思って…」
黙っててごめんねと謝られたが、思わず問い詰めた感じになって
さくらの方こそ申し訳なかった。
1
「それより、またお茶の事で相談したいんだ」
新入りがお茶汲みや掃除をするのはどの隊でも同じだが
武礼はよく先輩から頼まれるそうで、茶葉や淹れ方を度々
さくらに相談している。
「いいわよ。明日非番だし明後日はお休みだし」
「俺、明後日がいい」
「
さくらー」
まつりが席官と共に戻ってきた。
さくらが頭を下げ書類を渡そうとすると「隊長に直にお渡しください」と言い、続けて
武礼に向かって隊長のお茶を淹れるよう指示した。
すると
武礼は「はい。姉の分もでしょうか?」と問いかけるではないか。
「私は」
「中を検めるのに少々時間がかかるそうで、執務室にてお待ちくださいとの事です」
席官は
さくらが茶を断ろうとするのを遮ると、こちらですと案内した。
六番隊執務室に、
さくらは初めて入室する。
大きな窓から日差しが斜めに入り込んでいる。そして壁に埋められた本棚には蔵書がぎっしり詰まっていた。
中央寄りに質のいい机と椅子が置かれており、朽木は黙々と手を動かしていた。
「…失礼します。八番隊、
天宝院さくらです。こちらが十二番隊涅隊長よりお預かりした書類です」
朽木は受け取ると、無言で封筒から書類を出した。
中がちらりとでも目に入らぬよう、
さくらは一歩下がる。
「そちらに掛けておれ」
朽木の視線の先には背の低い長椅子とそれに見合った高さの机が置かれている。
朽木家で会っている時より少し硬い…八番隊隊舎裏で会っていた頃のような口調に、
さくらは後で取りに伺いますと申し出ようとした矢先だ。
「失礼いたします」
武礼が茶を携えて現れた。
「
武礼」
「はい」
朽木の茶を置くと、すぐに話しかけられた。
「暫し、
さくらの相手をしておれ」
「承知しました」
えー!?と
さくらは叫びそうになったが、
武礼はわかっていたようで二人分の茶を持ったまま、目線でこっちに座ってと
さくらを誘う。
2
確かに一人で待つよりはいいか…と、
武礼に倣
(なら)って長椅子に腰を下ろすと、「隊長のお茶はこの間教えてもらったお茶だよ。
さくら姉のは甘いやつね」と茶を置いた。
「茶菓子は付けなかったのか?」
書類に目を通しながら朽木が
武礼に話しかける。
「もうすぐ昼休憩ですし、隊長がお召し上がりにならないのに姉だけに付けるのも…と思いまして」
平然と答えている
武礼の判断は正しいと
さくらも心の中で肯いた。
「
さくらが所望するなら構わぬ」
朽木は見ていないだろうが、
さくらはぷるぷると頭を小さく振った。
それから口許に手を添えて小声で話そうとすると、
武礼は「普通に話して大丈夫だよ、
さくら姉」と何を言いたいのか問うてくる。
朽木と弟の距離感に戸惑っていると
さくらは言いたかったのだが、朽木にも聞こえるように言えるものではない。
時計の長針が90度程動いたところで朽木が署名の為に筆を手にした。
「ありがとうございました…」
諸々の意味を込めて書類を手にお辞儀すると「ご苦労であった」と涼しい顔で労われ、
さくらは弟と一緒に退室した。
「
さくら姉、あんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「どんな顔すればいいのかわからなくって…」
朽木との契約を知らぬ
武礼は、
さくらのぎこちなさを初対面故と受け取って当然であった。
「失礼します。伊勢副隊長、只今戻りました」
書類を受け取った伊勢は、そのまま京楽に手渡した。
八番隊の特に女性隊士は八時間労働が基本だが、昨日と今日は十五席が不在な為か
さくらは久しぶりに当番で丸一日隊舎で過ごした。
一人で進められる仕事は殆どなく、隊首室の掃除の他は片付けや整理整頓ぐらいしかできないので伊勢もお遣いを頼んだのだろう。
当番終わりの仕事として、涅が多忙でなかなか作成が進まなかった書類が完成したので十二番隊まで受け取りに行くように頼まれた。
そこで初めて間近で涅を見たわけだが、その姿と振る舞いは―――京楽が普通に見えるほどおしゃれだったと、心に書き留めた。
その書類を手に戻ると、そのまま六番隊の朽木の署名をもらってくるよう言いつけられた
さくらは、些かサービス残業をしたという訳だ。
さくらは遅めの昼食をとりに食堂に向かった。
3
明日は隊内非番で、明後日は休日だ。
特にプライベートの予定もなくまるっと二日以上も時間ができたのは久しぶりで、明後日は予定ができたものの今から何をしようかなぁ…?と食後に思案しながら歩いていると、久しく足を向けていない方向に目が行った。
「…修練場、使ってみようかしら?」
しかし使っている一年目の隊士が居るかもしれない。
白夜を取りに部屋に戻る前に、使えるかどうか確認しに赴いた。
「ぁ……」
一年隊士かはわからないが、二人の男性が修練場に居る。
「
天宝院?」
そっと踵を返そうとした矢先に見つかったらしい。
声をかけられ、知り合いだったかと
さくらも相手を見た。
「
町端先輩」
男の一人は以前隊舎庭で会った事のある
町端だった。
「いい処に…」
「?」
「いや。今、いいか?」
「はい…」
夏の盛りを過ぎたとはいえ、修練場は通路よりも暑かった。
窓は全開にしてあるのだが風も通らないので湿度が高いのか、暑さが煩わしい。
町端は
さくらが目の前まで来ると、もう一人の男と面識があるか問うた。
「はい、三十二席ですよね。存じ上げております」
男は八番隊末席で、丸っこい体形をしている。身長も
さくらと同じぐらいだった。
「実はこいつの始解の強化をしててさ」
「…然様ですか」
さくらも
町端も平の身。末席と言えど席官をこいつと呼んだ事に少し驚いて他人行儀な相槌を打つ。
「なぁ、
天宝院に始解見せてやれよ」
席官は乗り気ではなさそうなのに、
町端は発破をかける。
4
いや…、と当たり前だが渋る末席に
さくらもデスヨネーと同意する表情を無言で見せるしかない。
それでも
町端は末席の始解を説明し、
さくらにどう思う?と感想を尋ねてくる。
一応、どちらも先輩だ。
あまり波風立てずにこの場を去りたい。
なるべく
町端の望む問いから離れず、かと言って付かず、上手く不即不離の態度を保ちたい。
始解について、何か……と
さくらなりに思案した結果。
「あの…此処、暑くないですか?」
はっ?と二人が
さくらを見、それから顔を見合わせた。
「うん、まあ…暑いよな……」
町端が末席に同意を求めるように呟いた。
「
町端先輩、お願いしますっ」
さくらはぶんっとポニーテールをした頭を下げたので、長い髪が前に垂れ下がる。
「え?」
「始解してくださいっ」
「俺が???」
「そうですっ」
これには末席も驚いた。
町端の始解は曲がりなりにも炎熱系。
この暑い時に更に暑くなりたくなど、ない。
「
町端先輩、快適温度でお願いします。ついでに湿度、下げてくださいっ」
先輩に頼みごとをしているわりには
さくらも少々言葉が雑だったが、それ以上に要求が突拍子もなかったので窘
(たしな)められることもなかった。
男二人は今一度、顔を見合す。
末席は
さくらが現れてから少なくともテンションが上がる様子はなかったが、普段女性に頼み事などされ慣れない
町端はちょっとヤル気になっていた。
じゃあ、とりあえず…と末席の修練中だったはずが
町端が始解する。
5
末席は火傷をしないように
町端の側からゆるりと手を遠ざけた。
対して
さくらはいつでも
町端の始解に飛び込む用意はできている。
橙色の顔ぐらいの大きさの始解に、
さくらが手を突っ込んだ。
流石に
町端も熱いのではないかと今回は小さめにしたようだ。
「先輩、もうちょっと大きくー」
さくらが始解を広げてと手で表現する。
少しずつ
町端は始解範囲を広げていった。
「……どうだ?」
さくらの腰から上を始解で包んだ状態で感想を聞くと、
さくらは全身を包み込んで欲しいと言う。
「やっぱり、快適ですよ」
「……本当か?」
己の始解でありながら
さくらの感想が信じられない
町端は、恐る恐る自分も始解に包み込まれる。
「ね。外気温より低いし、湿度も」
「ああ…」
問題ないと知った
町端は、末席も有無を言わさず包み込んだ。
一瞬目を瞑った末席は大丈夫だと知ると無言で始解の中から外に手を伸ばし、その差を比べた。
「
町端先輩の始解は、春のひだまりです♪」
さくら以外が言えば皮肉にも聞こえる賞賛だった。
「…あ。私ったらまた先輩方の鍛錬のお邪魔を」
さくらはお詫びとお礼をして、それではと修練場を後にした。
6
『それで修練場は使えなかったのか』
「白夜連れて戻ったら、またあの相談の続きされそうだしぃ…」
以前の主ならばなす術も無く先輩に振り回されていたであろうと、
さくらの成長を垣間見た白夜は口元が緩んだ。
『私は主がお気に入りのその方に会ってみたいところだ』
「
町端先輩に?」
『正しくはその方の斬魄刀だがな』
さくらが犬サイズの白夜を団扇で扇ぐと、炎のような毛がふわっふわっと揺れる。揺れているが、物理的に風になびいているわけではない。
扇いでもらえるのが嬉しくて、白夜の気持ちが揺らすのだ。
「でも、やっぱり
町端先輩の始解なら総隊長にも対抗できるかも。でしょ?」
『私はあの方の杖が斬魄刀に戻っただけで震え上がったぞ…』
今思い出しても山本の始解は恐ろしいと、白夜は毛を逆立てて身震いした。
「…白夜の能力は、どんなのかしらね……」
楽しみだと言いたげに、
さくらが微笑む。
『……………』
「いいよ。言いたくないなら言わなくても」
『――――――………』
白夜は言わないのではない。伝えているのだが
さくらの耳には届かないのだ。
始解すべき時が来たら
その時、初めて
さくらにも聞こえる。
さくらはまだその事を知らなかった。
7
先日――と言っても六番隊で会う数日前――
白哉が刀剣油を所望したので、本日
さくらは朽木家に指導報酬のその品を持参していた。
「こちらが お約束の刀剣油です」
スタンプカードを一杯にすれば一枚でちょうど刀剣油と交換できるように
さくらは作ったが、以前白哉が使った為二枚目に交換済みの印を五個つける必要がある。
こんなこともあろうかと済印を作っておいた
さくらは、朽木からスタンプカードを受け取ると中を開いた。
刀と筆の判子は墨を塗って押してある。その上に同じ墨で済印を押しては何がなんだかわからなくなるので小さな朱肉を購入しており、それでスタンプカードに桜の花びらを模した判子を押そうとした。
「…紅桜にしても朱
(あか)過ぎる」
さくらが蓋を開けた朱肉を見て、白哉が口出ししてきた。
確かにそうだが、朽木家の大きくて高価な朱肉でも色はそこまで変わらないし朱肉を薄めても千本桜の淡い色合いにもならない。
一隊長を一言居士
(いちげんこじ)かとあしらうにもいかず
さくらがどうしようかと悩み始めたのを見て、少し待てと白哉が席を外した。
戻ってきた白哉は、平たい長方形の箱を手にしていた。
表面に手描きの兎と朽木ルキアと名が書かれている。
白哉が蓋を開けるとそれは朱肉…いや、現世のスタンプ台であった。
それも小さくて可愛らしい四角い升目で、
さくらは目を見張った。
赤、青、
黄、
緑、
桃、
白、
黒、
紫、
茶、
橙、
水色、
黄緑の十二色揃っている。
なんと色鮮やかなことであろう。
8
「ルキアには先程、新しい物を買うように伝えた」
そう言われて初めて白哉が伝令神機を持っているのに気付いた。
「…良いのですか?」
「これも現世で購入してから暫く経っておる。使わねば価値も失せよう」
最高級の練朱肉しか使ったことのない白哉は、現世のスタンプ台も腐りやすい物だと思っているのかもしれない。
それに移り変わりの激しい現世のこと。もっといい物が売っているかもとルキアも喜んでいたと言われ、試し押しを勧められた。
さくらが木を彫って作った判子を桃色のスタンプ台にぽんぽんと付け、押してみる。
白い紙に小さな桜の花びらが一片。
さくらはもう一度インクを付け、円を描くように押していけば淡い桜の花が一輪、咲いた。
楽しいっ―――!!
半紙を両手で持ち上げて、光に透かして眺めてみる。
しかもインクは桃色だけではない。これでは葉も枝も作りたくなってくるではないか。
トゥルルルル…トゥルルルル…
不意に白哉の伝令神機が鳴った。
「兄様、二十四色入りと三十六色入りがありました!!!」
スピーカーにしていないのに、興奮したルキアの声が部屋に響く。
「では好きな物を二つ買って参れ」
「二つですか?」
「一つは
さくらに、だ」
「ぇ―――」
「承知しました!!ツッ」
そう言うが早いか通話が切れた。
9
「あの…」
「やはり色が傷んできておる。こちらは練習用にし、後日新しい物を受け取るが良い」
「でも、二つも――」
「私との契約履行に欠かせぬ品だ」
遠慮するなという事なのだろう。
それでも喜びと申し訳ない気持ちで
さくらが受け取るのを躊躇っているのを察した白哉は、もう少し試し押しをしてはどうかと勧めた。
「はい――」
ぽん
『ちいさいのう』「大きい花びらも作ろうかな」ぽん
ぽん
『朱肉も小さい』 ぽん
「…そうね。これぐらいが丁度いいかも?」スタンプを押して遊んでいる際に、
さくらが机上の端に笑みを向けた。
以前こちらの世界にて斬魄刀の姿も見えるが精神世界に入れてもらえないと言った
さくら。
その後斬魄刀は具象化していなかったと言ったが、まだ姿が見えているのだろう。斬術が上手くいった時など、
さくらが空
(くう)に向かって微笑む。
それが具象化でないならば何なのか。気にはなるが白哉にも答えは出ていなかった。
「どう?」出来上がった版画を持ち上げ、小さく首を傾げること暫し。
『上手いものだ。あの夜の始解を思い起こさせる』「ほんと?」「対話も順調のようだな」
恐らく獣姿の白夜が覗き込んでいるのだろう、と察する白哉が呟く。
すると
さくらは「そうでしょうか?精神世界に入れて、以前より仲良くはなれたと思いますが…」と自信なさ気であった。
10
「確かに互いを分かり合う為の対話は仲良くするとも言えよう。其方らは既に対話は成っていると私には見受けられる。しかし次の同調とは寧ろ屈服に近い。仲良くしているばかりでは先には進めぬ」
「ぇ…同調とは対話の"次"なのですか?同時進行ではなく?」
さくらが誤認していると気づいた朽木は、辞書を引いて同調の箇所を見せた。
《名・ス自》他のあるものに調子をあわせること。他と同じ意見・態度になること。とある。
『私はとうに、主に同調しておる』「斬魄刀との対話とは意訳すれば協調。同調は屈服ほど強い言葉ではないが、斬魄刀が主にあわせるという点では屈服に近いと私は解釈しておる」
「あの、刀身が短くなったやつ?」『然様。主の隊長の申す通りに』白哉の話を目を見開いて聴き入っていた
さくらは、淡く開いていた唇を漸く動かした。
「じゃあ私達、対話は済んでいるの?」「今まで協調と同義だと思うておりました」
『勿論だとも』「そうか」
「でも…それなら私、どうして始解できないの?」さくらは未だ、白哉から目を逸らさない。
『理由は主にあるのではない。ある条件下で私は解放される…』「そう…なの?そうだったの!?」「朽木隊長、今日は大変勉強になりました」
『だが、その条件は口頭では伝えられぬのだ……』漸く両手を揃えて深々とお辞儀をした。
「ううん。いいの。それがわかれば、いいの…」白哉はすぐ「頭を上げよ」と言おうとしたのだが、嬉々として感謝に満ち溢れている
さくらが…
もし、
さくらが顔を上げて微笑んだならその頬に触れてしまいそうで…
『主?』「…………」
「私が至らなくて始解できないんじゃないなら待てるわ。いつまでだって」然すればそのまま笑顔を包み込んでしまうであろうと…
白哉は己の唇と指先の動きを止めた。
さらりと髪を流しながら
さくらが顔を上げた時、白哉は既に視線を外していた。
11
九月某日、
さくらは京楽に呼ばれ、雨乾堂に付き添って出向いた。
一頻り京楽と話し合った後に浮竹は「そうだ」と言って何やら包みを出してきた。
「朽木から、これをお前にと預かっている」
その平たい長方形の物がスタンプ台であることは、
さくらには中を見ずとも明らかであった。
「ルキアさん…これを届ける為に現世から戻られたのですか?」
「いや。暫く戻らないからと送ってきたんだ。夏祭りも後半しか居られなかっただろ?」
「そんなにお忙しいのに…申し訳なかったです」
さくらが手の中のスタンプ台に視線を落とす。
「それ何だい?遅めのお中元?」
「おちゅうげんって、何ですか?」
包みで中は見えないのに、京楽が
さくらにぐっと顔を近づけ覗き込む。
「
さくらはお中元を知らないか。現世では夏にお世話になった人に贈り物をする習慣があるんだ」
「それじゃあ私がルキアさんに贈り物をしないといけません」
浮竹の説明に、
さくらもこれはお中元ではないと知る。
「一般的には仕事の上司とかに贈る物だよ」
先程
さくらに近付いた体勢のまま、京楽が説明を加える。
「う~~ん…ルキアさんは先輩ですが、上司では…ない?」
「うん。贈るならボクにかなぁー?」
「お前、それが言いたかっただけだろう」
笑顔で自分を指さす京楽を、浮竹は鋭く指摘した。
「だあーってぇー。
さくらちゃん、僕の誕生日に何もプレゼントしてくれなかったんだもん」
「え。隊長、お誕生日だったんですか?」
「そうだよー。
さくらちゃんとはもう一年以上の付き合いなんだから、またひとつ歳取ったんだよー?」
「お誕生日、いつですか?」
「七月十一日」
とっくに過ぎているじゃないですか。と
さくらは言いかけたが、それでも祝って欲しいなぁーと京楽の顔に書いてある。
「…それじゃあ十一日に、二月遅れのお誕生日祝いをしましょうか」
「嬉しいねぇ。なんなら毎日祝ってくれてもいいよ~~」
「なら俺も、もう一度お前に贈ろうか」
「義骸は間に合ってま~す」
京楽は大きな身を屈めて
さくらに隠れるようにして浮竹の申し出を断った。
木犀草の花言葉:あなたは素晴らしい可能性を秘めている・陽気・快活・魅力・性格のよさ・あなたを慕う・見掛け以上の人
************************************************京楽隊長は五百歳は越えてるんじゃないかと思い、江戸時代(1603年~)の太陰太陽暦で365日の代わりの日数を言ってもらおうとしたら、太陰太陽暦って6種類。しかも354日前後~384日前後と30日も違うそうで、断念し「毎日」としました。
阿散井副隊長のお誕生日が8月31日なら太陰太陽暦に31日はないので、尸魂界でも現世と同じ太陽暦かなぁ?とも考えたのですがね。
そもそも。ホントは雨乾堂に行くのは
さくら様だけだったのに、完成したと思った途端に京楽隊長が「ボクの出番はなしかい?」と話しかけてきたのでああなりました。
詳しく描写はしませんでしたが雨乾堂での京楽隊長、かなり
さくら様にくっついてます。^ ^
不即不離はわかるかと思いますが、一言居士は言の葉折り本に記載しました。『あなたは素晴らしい可能性を秘めている』『見掛け以上の人』って誰のことでしょうねぇ?
早くそこまで書きたいです。
ご訪問ありがとうございました。
2019.09.04
〔34〕花菱草までご覧いただいた方へ→P10~11です。
百花繚乱 風⋆花⋆雪⋆月