ガラッ
「
さくらー。終わったか?」
浮竹は医薬品取扱専門詰所の戸を定時きっかりに開けた。
一体、何時に自隊を出たら恋人の常駐する四番隊の詰所に『定時に』着くのか。
今日も夕食時に、少々話さなくてはいけない。
「浮竹た……いぃぃ!」
とりあえず一言と
さくらが口を開いた時には、浮竹に抱き上げられていた。
先日卯ノ花に、仕事中
さくらに抱きつかないよう『浮竹は』注意されたばかり。
会えば
さくらを抱き締めたくなる浮竹は、それ以来一応仕事中は不要に
さくらに会わないように努力してくれているのだ。
我慢している分、反動が来るらしい。
昨日は定時二分前には浮竹は
さくらの目の前にいたのだ。
そして今日も浮竹は
さくらを抱っこして医薬品取扱専門詰所を後にする。
しかしこれなら休憩時間ごとに抱きつかれるほうが
さくらとしてはマシかもしれない。
唯でさえ目立つ薄桃色の短衣の
さくらが浮竹に抱き上げられれば、目線に入るのは
さくらの足。
上機嫌な浮竹は会う隊士皆に愛想を振りまき十三番隊へと向かうので、尚更人目を引く。
<blink>ダッダッダッダンダンダッ</blink>
しかも足音を気にしないで渡殿や廊下を進むのだ。
一昨日から昨日、昨日から今日へと少しずつ時間のずれはあるものの、四番隊から十三番隊までの恒例行事と化しつつあった。
<blink>ダンダンダッダッダンダッダンッ</blink>
「またお前か」
煩い足音に嫌でも気付いたらしい。
今日も庭に下りていたらしく、日番谷が草履を脱ぐため踏み石に立っていた。
「お、冬獅郎~。元気か?」
「菓子ならいらねーからな」
浮竹が行動に移す前に釘を刺した。
そして頬を染めて浮竹に抱かれている
さくらをちらと見る。
見ると言っても
さくらの顔は反対側であり、目の前には二本の脚が見えるのだが。
「仲がいいのも大概にしとけよ。いい歳して」
ふんっと鼻息荒くそっぽを向く。
「いやあ、済まん」
浮竹はどういう意味ともなく謝ってみせる。
とりあえず
さくらが腕の中にいればご機嫌で、深く考えていないのか日番谷が親切に注意してくれているとでも思っているのか終始笑顔だ。
「じゃあ、またな」
菓子も断られた浮竹は、遊びに行く子供のような笑顔を残して日番谷の横を通り過ぎて行った。
「……ふん」
咳払いとも溜息とも鼻息ともつかないものを吐き、日番谷は草履を脱いだ。
<blink>ダッダッダンダッダンダッダン</blink>
「あー!うっきーだー」
髪の色と同じく頬を染めたやちるが、十一番隊から飛び出して来た。
「
さくらちんも~!」
やちるは二人の周りを飛び回る。
昨日、
さくらが金平糖を与えた為、やちるはすぐさま懐いてしまったのである。
「ねーねー、
さくらちん。金平糖あるぅ?」
やちるの狙いは当然、それだった。
「今日は…。昨日は瓶を入れ替えてたまたま持っていただけでして…」
副隊長相手に高いところから失礼だとは思いつつも、浮竹は下ろしてくれない。
「俺が持ってるぞ」
「やったぁ!うっきー大好き~♪」
昨日
さくらが残していった金平糖を、浮竹は懐に持っていた。
やちるの金平糖好きを知らない
さくらは一包み与えただけで残りを懐紙に包んだまま、浮竹にもあげていたのだ。
浮竹の懐から失礼して、
さくらがやちるに金平糖を差し出した。
嬉しそうである。
なんだか、早くこんな子供が欲しくなる二人vV
「あのね」
やちるは金平糖を頬張ると
「うっきー、
さくらちん抱っこするのはいいけど」
親切心からだろう。
「見えてるよ」
?? 何が??
やちるの主語のない説明に首を捻る二人。
「白なのはわかってるけど」
金平糖を味わいながら、やちるが指差したのは
?? ―――!!
「
さくらちんの、腰巻」
「―――――い…」
さくらの悲鳴が上がる。
「 いやああああああああああああ !!」そして
「下ろしてください浮竹隊ちょーぉ!!」
泣き叫んだ。
「でも、見えるの私ぐらいだから大丈夫!」
確かに目線がそう低い隊士はいまい。
泣きべそをかく
さくらをやちると浮竹は宥める。
くすん くすん
床にぺたんと座り込んで、
さくらは顔を覆って泣いている。
浮竹はとにかく
さくらに謝りたくった。
………待てよ?
謝りながら、感じていた違和感を思い出す。
さくらはやっと涙が止まりかかっていた。
この状態で先程の……
いや昨日も確かそう言えば……。
「あーん、もう抱っこは嫌ですぅ」
感情のままに訴える恋人に浮竹は済まん済まんと謝りつつ、
どうして日番谷が昨日も今日も一段低い踏み石の上にて俺達を引き止めたのか……。
言わないでおこう
さくらの為にも
そして
日番谷の為にも……
浮竹の親切心が、そう働いた。
fin*
************************************************はい、リクエストいただきました日番谷隊長出演ストーリーです。
日番谷隊長も男ですから…ってな話で申し訳ありません。
「こんなシロちゃんでは駄目っ!」
とお怒りでございましたら、ご希望のシナリオをお申し付けくださいませ。
2007.10.12
花の護廷十三隊〔一〕 風⋆花⋆雪⋆月