さくらは風呂上がりに知ったことがある。
浮竹は今までろくに髪も乾かさず眠っていた、ということを。
まあ暖かくなってきた今なら、就寝まで暫く放っておけば半乾きにはなるだろう。
しかしいくら気候のいい時期とは言え、世話好きな
さくらはうずいた。
「十四郎様」
「うん?」
呼ばれた理由を短い返事で尋ね返す。
「こちらへ……」
さくらは自分の膝を指した。
あまり指先の方向を気にせず、
さくらの目の前に浮竹は座った。
1
「どうした」
新妻に呼ばれ、機嫌よく尋ねる。
更に
さくらは膝でにじり寄り、浮竹が首にかけていた手ぬぐいを持ち上げた。
「濡れた手ぬぐいをいつまでもかけていらっしゃるより、何枚か替えられる方がよろしいかと…」
そうして自分が用意していた手ぬぐいで、浮竹の髪を包んでやった。
包んだ手ぬぐいの中に指を差し入れ、項あたりの髪を一束取り出すと、また別の手ぬぐいにて包み込む。
さくらはその時、大した理由はなく向かい合って髪を拭いてやった。
しかし浮竹からすれば、膝立ちした
さくらの胸に顔が当たりそうな体勢。
何をされているかよりも、今の二人の距離のが気になった。
浮竹の髪を手ぬぐいにキュッと、押し付けること三束目。
キュッと自分が抱きしめられて、初めて
さくらはそのことを意識した。
「十四郎様……」
浮竹の顔がぴったりくっついた状態では、髪を扱うには不都合だ。
「背中に回りますね」
さくらがそう言うと、浮竹は顔を埋めたまま、すりすりと首を振った。
2
「じゃあ…」
さくらが応じるようなニュアンスの言葉を口にしたので、浮竹は顔を上げた。
にこっと笑顔を返す
さくらは、浮竹の心中を解しているかに見えた。
ようやく浮竹が腕を緩めた。
さくらはその場に座り、浮竹の頬を両手で包み込んだ。
「
さくら…/ / /」
浮竹は
さくらに導かれるままに、顔を
さくらの膝に乗せられた。
期待以上に大胆な展開。
と思ったら、
ど でん 。
ひっくり返され仰向けに寝かされた。
さくらは再び髪の一束を手に取り、乾かし始めた。
自分の膝の体温も使って乾かそうというのだ。
風呂上がりの、新妻と二人っきりの、触れ合い。
わかってもらえないこの気持ちがもどかしい。
しかし浮竹は、
さくらを黙って見上げるしかない。
「…………」
その視線に
さくらも気付いた。
「もう少しですから……」
もう少しで、髪の根元を乾かし終えられる。
もう少し、
もう少しで………
さくらの膝枕で大人しく浮竹は大の字になっている。
3
もう少し、もう少し……
「これくらいにしておけば、よろしいかと……」
終わった!!!!!
浮竹は飛び起きると、
さくらのまだ乾かしきれていない髪に触れた。
「
さくら ///」
お預けがちょっと長かった浮竹は……
「――――じゅ…十四郎様!?」
いや、誘惑が多すぎただけだ。
「え?あの…ちょ…」
まぁ、結果的には同じことで―――
「あ、ああぁ―――!」
夫婦の夜は始まりましたとさ。vV
教訓:男と女の思考は常にすれ違っている。
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