ここは六番隊、
宿舎の一室。
この六番隊朽木隊長の所望により
抹茶をお手前することになった、
天宝院さくら。
「……頂戴する」
深々と頭(こうべ)を垂れる
さくらの前の碗を手にし
碗を眺め ゆっくりと次の所作に移る朽木。
静かに頭を上げ、隊長の持つ碗を手を指先を目線を唇を臨(のぞ)む
さくらに
「結構な、手前」と隊長は返した。
その言葉に応じ、再び
さくらは頭を下げてみせた。
1
朽木隊長に平隊員の一室は似合わない。
だからって、
こ・おーおーん・な
だ だ っ 広 い
隊長の自室で
お茶を入れなくてもいい気がするのは
武礼だけではないだろう。
一番の問題は業務時間内ということだ。
仕事はどうした?と、
武礼は隊長に問える立場では当然ない。
ただ実直な
武礼としては、すでに副隊長のことを言えなくなっている朽木に疼いていた。
姉は朽木隊長が非番か当番かなんて知らないだろう。
だいたい、隊長格の非番なんて無いに等しい。
2
武礼は午後になって一度も足を崩していない。
その姿勢に耐えられないのではなく、非番なのにこの上下関係に耐えられなくなってきていた。
後に非番だから自由気ままにできるものではないと知るのだが、
初めての非番がこんなことになるとは想像だにしていなかった。
「今日は姉弟揃って非番か」
とうに茶を嗜み終えていた隊長が、漸く口を開いた。
短く返事する
さくら。
さくらは自分から話を切り出す性格ではないうえに、口数少ない隊長を気にも留めず、相手が口を開くまで待つことができた。
3
再び沈黙の時間が流れる。
「其方、此処をどう見る」
朽木が僅かばかりに顔を動かし、宿舎の庭園を示した。
一応、
武礼は雅趣に富んだ庭だと隊舎を褒めたことで、隊長から宿舎の庭にも招くように言われた経緯については話していた。
「……月のための隊舎庭園、日のための宿舎庭園、といったところでしょうか」
一見どうということのない造りの庭だが、朽木が夜遅くまで仕事が長引いた際に和める庭と、日中影の移ろいを眺めるのに申し分ない庭を意図したことを、
さくらは見抜いた。
4
「その言葉、園丁に伝えよう」
朽木は庭師の趣味だとはぐらかした。
僅かに隊長の口許が動いた気がした。
武礼はようやっと、朽木隊長の微々笑―――
通常言うところの笑みを垣間見た。
春というのに、
静かな時しか流れない。
「よく、似ておるな」
やっと次の会話が始まった。
朽木の言葉に、二人は同時に顔を上げていた。
庭の話からどれくらい経っていたかは定かではない。
「顔も仕草も性格も、よく似ておる」
「然様ですか」とまた短く
さくらが返す。
5
長い
長い 沈黙
「私には妹がいる」
まぁと
さくらは感情を表し、どのような方ですか、朽木隊長によく似ていらっしゃるのでしょうかと問うた。
興味を惹かれたらしい。
朽木は
それが義理の妹であること。
亡き妻の妹であること。
阿散井恋次と幼馴染であること。
十三番隊に所属していること等、隊長にしては饒舌に語った。
「機会があれば、会ってみるがいい」
「楽しみにしております」
滔滔(とうとう)と返事する
さくらに、朽木の言葉に含まれる意味合いは通じてはいないだろう。
6
僅かに
武礼が、朽木隊長らしからぬと感じる程度だった。
しかし誰しも姉に好意をよせて不思議ではない為、いつものことと取り合わなかった。
まさか自分がこの男の下へ配属されたこと自体、意図的なものであったなどと、夢にも思っていなかった。
→Writer's notE→→
************************************************さ「く、朽木隊長……」
朽「……………」
さ「な…何かおっしゃりたいこと、ございませんか?」
朽「…………」
さ(怒らせたかな…?)
朽「――――」
さ「…………ι」
朽「貴様…漸く私に話を振ったな………」
さ(怒ってる!?)
朽「…………」
さ「遅くなってすいませんι 何か言いたい事があればどうぞおっしゃってください」
朽「……特に無い」
さ(無いんかい!)
これだから朽木隊長にコメントを求めたくなかった、さくらなのでした。
朽木隊長 風⋆花⋆雪⋆月