夜の雪
二人で見る 初めての雪
漆黒の闇につらつらと
止めどなく舞う
その静けさ
その姿
私の隣で一心に
雪を眺める貴方に似て
凜として
冷え冷えとして
いたたまれなくなる。
ただ…
隣に居ることしかできない私は
隣に居る必要(
こと)もない気がした。
1
貴方の隣を離れようとした矢先
「体を冷やしたか」
私など視界に入っていないのに
そう 問われるのですね。
「…少し」
この身よりこの心
心底冷とうございます。
「二人で見る初めての雪景色故に、見入ってしまっていたのだな」
その眼には私しか居なくて
その手は私にしか触れなくて
「長く付き合わせた。…済まぬ」
その心に私との時間だけを刻まれているとは
思いもしませんでした。
2
手を温めてくれていた白哉様が不意に私の足を救い上げた。
「何……を?」
「邸に戻るのだが?」
「で、ですから、お邸に戻るのに何故!?」
「手がこれだけ悴(
かじか)んでおるのだ。足も冷えて邸に戻るまでの道程も辛かろう」
「お、お邸までぐらい歩けます」
「朽木家の庭は広い。更には其方がこれ以上機嫌を損ねぬよう、私は夫として努めねばならぬ」
嫌か?と訊かれる星よりも近い綺麗な眼に吸い込まれそうで……。
「機嫌を損ねてなど――」
素直になれない私を抱きかかえたというのに、猶も手を温めようとしてくれる。
長い指は綺麗で、爪先までも気品に溢れ
そして私への想いが溢れてる。
3
「――私の手、冷たいでしょう…?」
「だからこそ温めておる」
一度(
ひとたび)今のお気持ちが解れば、貴方の全ての言動に愛を見つけてしまいます。
「こんなに冷えた手では、すぐに温まりません。寧ろ白哉様の手が冷えてしまいます」
「……先程より、其方の手を冷たく感じぬ」
「ですから私が白哉様の熱を奪っているんです」
「ならば良かろう」
「――…ぇ?」
「奪えるものを奪うが良い。私は其方に惜しみなく、全てを与えよう」
「白哉、様――?」
手を握られたまま、頬を重ね合わせられる高さまで抱き直された。
4
「頬も、髪も、こんなに………済まぬ」
「…白哉様の所為ではありませんから」
「私の所為だ。私が其方と雪景色を見たかったが故に、体を冷やしてしまった」
「―――そんなに、雪景色を見たかったのですか?私と」
「ああ」
力強く、即答された。
「其方が寒さを厭わず愛でる雪を、私も目に焼き付けておきたかったのだ」
「…雪ぐらい、ご存知でしょう?」
況してご自分の邸の庭です。
「聞こえなかったか?"其方が愛でる雪"を我が身に感じたいと言ったのだが」
「―――びゃ…」
「舞も花も蛍も紅葉も其方と同じものを見、同じ時を過ごし、感じられた。しかし寒がりな其方とこの季節を愛でることはないと思っていた……」
上手に子供を宥められた時のように笑われた。
そんなに寒がる私は幼かったですか?
5
「…雪は以前から好きでした。でも私、白哉様と縁を結ぶ頃には冬が好きになっていたんですよ?」
「それは…何故だ?」
「だって、白哉様がお生まれになった季節ですもの」
「―――」
驚き足を止めてしまった貴方の首に、抱きついた。
「雪も冬も白哉様も大好きです…」
少し恥ずかしかったので、貴方にだけ聞こえるように言わせてください。
「
さくら…」
其処に温かい部屋が待っている。けれど
邸までの
この雪景色が永遠であってもいいと――
今は、思います。
「でも…寒いのは、苦手なんです」
「わかっておる」
白哉様はもう少しだと、再び雪を踏みしめ小さな笑みを添えてくださった。
fin*
************************************************夫婦になったんだからさ、二人っきりなんだからさ、
これぐらい朽木隊長も甘…いえ優しくっても風ゴテでもいいかなー?って思ったのですが。
花ゴテレベルでしたでしょうか?f^_^;
それにしても朽木家の庭、目茶苦茶広いですね。(笑)
おかげ様で新年早々(2009/01/02 12:23)80000アクセスに達しました。
本年もご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
2009.01.02
朽木隊長 風⋆花⋆雪⋆月