「
さくら、ちゃああああん」
医薬品取扱専門詰所に姿を現すと同時に叫ぶ京楽に、
さくらは絶句した。
余りにも突然のことでその場にいた浮竹も、京楽を嗜めることができなかった。
京楽は其処にいる浮竹の横を素通りし、
さくらの胸に顔を埋めるように嘆いた。
さくらとて流石にこれには「ただいまは浮竹隊長のお時間です」と叱る。
叱っているのだろうが傍から見れば宥めているようで、
京楽も「ごめんねえ。でもボク頭痛くてさあ。なんだか吐き気もするんだけど……」と
さくらに症状を訴える。
体調の思わしくない者を無下に扱うわけにはいかない。そうかと言って本来診なければならないのは浮竹である。
1
さくらはこういう時、もっとも困惑した表情を浮かべる。
優先順位はわかっていても強く主張できない性格なのだ。
だから男達も
さくらを囲んで恋の火花を散らしたりはしない。
さくらと二人で向き合って、じっくりアプローチしたほうが彼女の気持ちを自分に向けさせる可能性が大きかった。
割り込んだところで
さくらの気は惹けない。
しかし京楽は知ってか知らずか、真逆をいく。
こんな時、折れるのはいつも浮竹だ。
「
さくら、京楽を先に診てやってくれ」
仕方なく京楽を浮竹の斜め横の椅子に座らせ、
さくらは京楽の話と体の声に耳を傾けた。
2
「昨日、お酒を嗜み過ぎたようですね」
さくらは京楽の二日酔いがたいしたことはないと判断した。
「頭痛を緩和するために軽い鎮痛剤。それとお酒の分解に効く漢方と、胃薬をお出しいたします」
そういった薬は今から調合せずとも常時用意されているので早かった。
「ぶへっっ!! な
何これ…にが…」
吐き出したいのを必死で堪えた。
「に苦いよ
さくらちゃん。苦すぎっ!!!」
京楽は
さくらにアーンして呑ませてもらった薬だったので何とか呑み込んだが、相当辛そうだった。
3
「熊の胆(
い)です。胃に効くお薬ですよ」
熊の胆嚢を乾燥させたもので、味はかなり苦い。
「…
さくら、ちゃあん…」
自分の腕に縋って懇願する京楽が可哀想に見える
さくらはやはり甘い。
「はい…「あ~ん」」
京楽はいつもの如く金平糖を口に入れてもらった。
そして京楽は、ちゃっかり
さくらの指を唇で食んだ。
「も、いっこ頂戴」
金平糖をガリガリ噛んで、次を強請(ねだ)る。
4
さくらは京楽に食まれた指の初めての感触に、身動きできなくなっていた。
京楽は尚も強請り、勿論ただ欲しがるだけでなく口に入れてくれと大きく開けて待っている。
さくらが上気した面持ちのまま、震える指でふたつめの金平糖を京楽の口にやる。
「んが―――――!!」
瓶から直接、京楽の口内に 浮竹は金平糖を流し込んでやった。
硬直する
さくら悶える京楽
憤慨する浮竹
「京楽、いい加減にしろ!!!」
その日、四番隊詰所の一角にて暫し隊長同士の諍いとなったが、京楽を発見した七緒によってそれは幕を閉じた。
→Writer's notE→→
************************************************京:ボクの話で浮竹との初共演だね……って、どうしていつもボクはこうなの~?
浮:お前らしいな。
京楽隊長らしいですね。
京:
さくらちゃんはどう思ってるのかな?
浮:どう思ってるだろうな。
どう思ってるのでしょうか?
さくら様、京楽隊長の気持ちに気付いてあげて下さいね!
京楽隊長〔一〕 風⋆花⋆雪⋆月