「非番かな」
詰所も在庫室も覗いたが姿が見当たらない。
暑気払いでもしないことにはやっていられない暑さだ。
さくらが非番ならば何処かへ他出でもしたかと、諦めかけた時だった。
おや?
目の前を通り過ぎる女性隊員がいた。
手に水筒と手ぬぐい。腰に斬魄刀。
髪を一つに結った、お目当ての女性だった。
どうやら少し遅い昼食を済ませたばかりらしい。
向かう場所は想像がついた。四番隊修練場だ。
四番隊にも修練場があるのは急場に患者を寝かせる為だとからかわれるほど、
そこは人気のない場所だ。
1
噂どおり、そこには
さくら以外誰もいなかった。
しかもこの猛暑の最中である。
誰が態々汗を流すであろうか。
さくらは修練場を独り占めして斬撃の練習を始めた。
これは……。
京楽は、参ったねという言葉を飲み込んだ。
あの日の瞬歩を思い起こさせるかのように、
さくらは斬魄刀を振るう。
2
美しく 軽やかに
舞うように
何故なのか
これほどの実力が備わっているのであれば霊圧もそう低くはないはずだ。
これほどの技術があるのならば、斬魄刀を解放できないわけがない。
それなのに 何故
さくらからは何も
感じられないのだろう
京楽は覗くのをやめた。
堂々と戸口に立ち、
さくらを傍観した。
3
ふと、京楽の艶やかな着物の色が
さくらの視界に入った。
足首をキュッと捻り、身体の反転を止める。
「京楽、隊長…」
鍛錬している姿を見られて、驚いたよりも恥ずかしかったらしい。
いつもより赤い顔をして、斬魄刀の扱いに困っている。
「この暑いのに。
さくらちゃん、偉いね」
いつものおちゃらけた口調と表情で、まずは
さくらの心を解してやった。
ニヤけた顔で
さくらにヘラヘラと歩み寄る。
「あの…?」
どうして京楽が此処に現れたのか理解できずに、
さくらは両手で斬魄刀を握りしめたままだ。
4
「いやあ。あんまり暑いんで、何処か涼める場所を探してたんだよね」
修練場など窓を開けたところで熱気が逃げるわけでもなく、
この時季は何処よりも居心地の悪い場所だろう。
「そうしたら
さくらちゃんを見つけたの」
「涼しい処ですか…」
さくらは京楽の言葉を真に受けて、護廷十三隊内で涼しい場所を思い巡らせる。
「いや、もういいの。こうして
さくらちゃんに会えたしね」
瞳を伏せがちな
さくらの顔を覗きこむ。
さくらは漸く斬魄刀を鞘に収めた。
5
「もう鍛錬しないの?」
隊長の目の前で披露するものではない。
さくらは京楽の質問に肯定の言葉を返した。
「ボクがいると邪魔かな?」
そんなことはありませんと言うが、本心ではないことが読み取れた。
いかに入隊時優秀であろうともその後一向に振るわない者もいる。
逆に入隊後頭角を現す者もいる。
さくらにも、そんな焦りがあったのだろうか。
「ボクでよければ、見てあげるのに」
京楽はずいっと近づき、邪なコトを企んでいる表情を見せた。
さくらは驚いて京楽を見つめる。
「宜しいのですかっ?」
さくらにしては早い反応だった。しかもいつになく大きな声だ。
そして、厚意として受け取っている。
申し出た京楽の方が驚くぐらい、
さくらは期待に満ちた表情を見せた。
その顔に、京楽は心を入れ替えた。
6
「
さくらちゃん、強くなりたいんだね」と京楽が問えば
「はい」
綺麗な声だった。
自らを高めるために強くなりたいのだ。
今の自分に甘んじていないのだ。
努力しているのだ。
濁りのない 澄み切った思いだった。
京楽は
この熱気の中でも床に汗の跡を付けずに、
裸足の指先に力を入れ、構えた。
→Writer's notE→→
************************************************浮竹隊長、京楽隊長が
さくら様に斬術指導ですって。(^^)
浮:さくら、それはあり得ん。書き直すんだ!
BLEACHの原作に則って書くんだろ?
んー。でも京楽隊長って真面目で賢い女の子が好みじゃありません?
でもって、自分好みに育てていくのも楽しんでいそうですし。
京:二人で何、話し込んでるのっ。
ボクは今、大変なんだからね!
浮「自業自得だ」
さ「自業自得です」
さぁ、
さくら様。引き続き京楽隊長の受難(?)をお楽しみください。
京楽隊長〔一〕 風⋆花⋆雪⋆月