七月のとある日
京楽はようやく伊勢副隊長を撒いた。
「
さくら、ちゃん」
上機嫌な声で、またしても突然
さくらの前に姿を現した。
いい加減、そんなに
驚かないでよ……
京楽は嫌われているのかとも思った。
しかし
さくらは本当に感じられないのか、特に霊圧を消していたわけでもない京楽を目を見開いて迎える。
「今日は、こっち?」
さくらはいつもの詰所ではなく、医薬品の在庫室に籠っていたのだ。
「はい。本日届いたばかりなので確認を」
詰所では以前からいる女性隊員が調合を行っているのだろう。
二人が当番ならば通常の医薬品業務はのんびりしていても一日の作業は片付けられる。
しかも詰所とは違い、医薬品在庫室とくればまず邪魔は入らない。
1
さくらは手元の表と棚の薬品類を何度も目と指で確認しながら作業を進めていた。
「ボクも手伝おうか?」
さくらの肩越しに表を覗き込み尋ねる。
さくらの頭上に京楽の顎。
桃色の帽子芯の内側に留めた黒いピンが、色気を漂わせる。
「こちらより…八番隊の隊首業務をなさった方がよろしいのではないですか?」
至極尤もなことを言う
さくら。
「んーんー。ボクは
さくらちゃんの仕事が手伝いたいんだよね」
至極下心のあることを言う京楽。
2
「お気持ちは大変嬉しいのですが――」
京楽の物欲しそうな表情に、関することなく言葉を続ける。
「自隊の業務を顧みてください。それでも尚お手空きでございましたら」
一度目を伏せ、それから一縷の望みを見るような縋る眼差しを向ける。
「お言葉に甘えさせていただきます」
甘えて―――!!!!
今っ すぐっ!!!
涎がだあだあ出そうな顔つきで、
さくらに食い入る情けなき護廷十三隊八番隊長。
すぐさま心中を言葉にしようとするが、この瞬間に何故か……
恐らくは京楽のみならず誰もが
「わかった」
さくらに対して格好つけたくなるのである。
3
「ありがとうございます」
そう言うと
さくらは随分と甘えるような表情を見せ、何となく自分が
さくらから頼られている優越感を味わうのだ。
普段なら矜持の欠片もない言動を物ともしない京楽でさえ、これである。
誰よりも流されやすい女のようでありながら、それだけに自分の体裁を崩すことなく落とせるのではないかと
さくらの一言を受け入れると、途端に男は骨抜きにされるのである。
「京楽 隊長」
さくらが在庫点検表を胸に抱く。
4
「いつも ありがとうございます」
艶やかな感謝の言葉が淡い唇から漏れる。
「いつもご親切にして、いただいて…」
「い、いやあ。そりゃあ、ね……」
こうも何の疑いもなく感謝されては、何も出来なくなってしまうというものだ。
「じゃあ…。 またね」
仕方なく京楽は
さくらから離れた。
「はい」
そう返事をすると、何事もなかったかのように点検を再開する
さくらを尻目にすごすごと退散した。
5
四番隊を離れたところで、京楽は一度腕を組んで一息つく。
ボクの誕生日を
一緒に過ごして
ほしかったんだけどね…
少し強く押せば真っ赤になって固まってしまう。
そうかと言って遠まわしでは本意が伝わらない。
天宝院さくらなかなか、難攻不落である。
→Writer's notE→→
************************************************京:うわーん、ボクの誕生日が終わっちゃうじゃないの。
致し方ありませんね。
京:作者のさくらは意地悪だね。
Σなっ、それって私の所為ですか~?
あ、浮竹隊長。
何か言ってやってください。
浮:京楽…俺よりよっぽど進展早いぞ?
京:女性に関しては浮竹とボクとじゃあ比べ物にならないの。
浮:お前なぁι
確かに。(キッパリ)
浮:なっ、さくらお前まで!
さくら様。
今後、両隊長の恋の駆け引きの違いもお楽しみください。
京:浮竹のは駆け引きになってないんじゃないの?
確かに。(キッパリ)
浮:さくらお前まで!
――以下エンドレスな為省きます。
京楽隊長〔一〕 風⋆花⋆雪⋆月