溜息が一斉に漏れる。
「あそこまでいっといて、接吻(くちづけ)もナシかよ」
四番隊まで送り届け、
さくらが世話に困った金魚をぶら下げて自舎に戻る隊長の背中を見て隊員の誰もが肩を落とした。
ブツブツと不満を言いながら、自分達も隊長と同じ方へ向かった。
「チェッ。
武礼(おとうと)の野郎も話がわかるヤツだってのに」
「協力的だよね」
「隊長達いい感じだったのにさ」
「んなのにウチの隊長ときたら。全く」
「おまえらの掌で転がされては堪らん」
え?と気づいた時は遅かった。
柱の影で待ち伏せされた隊員全員が引いたのは間違いない。
浮竹隊長――――
いつになく怖いです。
金魚
ぶら下げてるけど……
1
「もう二度と、
さくらにちょっかいかけるな」
「ですが隊長っ」
隊員達も言いたいことが山ほどあったので、ここぞとばかりに口を開いた。
「とにかく!」
その一言で、全員が口を噤む。
隊長の風格には敵わなかった。
「おまえらの気持ちは嬉しいがそっとしておいてくれ」
いつもの穏やかな口調に戻っていた。
「俺をからかう分には構わん。しかし
さくらは」
高い目線が、
下に落ちる。
「
さくらを、無理矢理巻き込まないでくれ」
さくらがどれほど繊細な子で、
どんな気持ちで何を乗り越えてきたかなんて、
説明するだけ野暮だった。
「俺は俺が納得のいくように、したいんだ」
夜の静寂が十三番隊を包み込む。
浮竹は隊員達からの反論が無いのを自分の目で確認すると
「さーて、金魚鉢は何処へしまったんだか…」
踵を返して自舎へと歩き出した。
続
************************************************浮竹隊長〔一〕 風⋆花⋆雪⋆月