うたのプリンスさまっ
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『好きです』と、貴方に伝えたのは随分と前のこと。初めは、『ダメ』 『無理』と拒否の台詞ばかりが返ってきていた。
「だから、無理だって言ってるでしょ?まだわからない?」
「それでもいい!!ダメでもいいから……側にいたい」
その後、聞こえた溜め息に身体を震わせた。
――こんなにしつこいんじゃ、今度こそ嫌われるかもしれない……。
ぎゅっと目を閉じた私に、貴方が言ったのは『好きにすれば』という言葉。呆れてそう言ったのかもしれないと、おそるおそる彼を見たけれど、貴方の目元はとても優しかった。
それから過ごした数ヶ月はとても楽しいものだった。初めこそ、何を話せば良いのかわからなくて、ただただ近くにいるだけ。それが二言三言話すようになった。そして、話す内に相手の好きなものを知り、更に話題が増える。どれだけ笑いが溢れただろう。貴方は大きな口を開けて笑う人ではないけれど、ところどころに見えた優しさや笑顔は、一緒の時間を楽しんでくれていたのなら良いのにと思っている。貴方はトップアイドルで忙しい人だから、途切れ途切れの時間ではあったけれど、貴方と過ごす日々は本当に輝いていて、とても楽しい時間だった。
何時だっただろうか。『好きです』と伝えて数ヶ月。もう一度、伝えたのだ。『貴方のことがやっぱり好きです』と。前は即座に出た拒否の言葉は、今回聞くことは無かった。不思議に思いながら貴方を見れば、とても辛そうな顔をしているではないか。
「藍ちゃん……?」
「瑠奈……どうして、そんな……ボクは……っ!!」
頭を抱えて、今にも泣き出しそうな貴方を放ってはおけなくて、駆け寄り抱き締める。私より幾つも背が高いはずなのに、腕の中にいる貴方は迷子になった幼子のようで。
「ごめん……ごめんね……」
私は彼を抱き締めながら、ただただ『ごめん』と謝ることしか出来なかった。しばらく経ち、ようやく落ち着いてきたらしい貴方の背を撫でる。
「大丈夫?ごめんね……」
「……謝らないで。ボクの問題だから」
「藍ちゃんの……?」
どういうことなのかわからず、貴方を見つめることしか出来ない。貴方は少し悩みながらも、ひと呼吸おいてゆっくりと告げた。
「ボクはロボットだから」
そう、静かに。いつものような綺麗な声で。
「きっと、ボクの中にあるこれが恋心なんだと思う。ボクだって、キミと一緒に過ごしたいから。でも……どうしたって、出来ないんだ」
内容をいくら反響しても、理解が追い付かない。けれど、貴方が嘘を言っているようにも見えなくて。
「それで……ずっと『ダメだ』って言っていたの?」
「……そうだよ」
ふいと逸らされた視線に『そういうことだったのか』と納得する。貴方は、私達が違う存在だとわかっていたから遠ざけようとしたのだ。それもきっと、自分の為ではない。優しい貴方のことだから――。
「それでも、藍ちゃんを好きになって……私は良かったと思ってるよ」
「瑠奈。……お願いだから、そんな泣きそうな顔しないでよ」
改めて言葉にすれば、目の奥が熱くなる。先程まで、貴方を抱き締めていたのは私だったのに。今は貴方が、私を守るかのように包み込んでくれている。『泣きそうな顔』と貴方は言ったけれど、それは貴方だって同じこと。ずっと、辛そうな顔をしているから。
「それは藍ちゃんもだよ。……今、こうして一緒にいられることが幸せなんだね」
少し力がこもった背中に回る腕は、まるで私の存在を確かめるかのようで。好きな人が抱き締めてくれる。貴方も好意を抱いてくれていることを知れた。それだけでも、嬉しいことじゃないか。
「うん……。寿命が違う僕達でも、手は繋げるよ」
「そうだね。こんなに暖かいのに……」
そっと重ね合わせた手は、私より大きくて温かい。人と変わらないそれを、愛おしく思う。
「百年経っても、消えない歌を作ろうか」
「藍ちゃんが作ってくれるなら、きっと綺麗な歌なんだろうね」
そう話しながら笑い合う。ぽろりと零れた涙は嬉し涙か、それとも――。
これからずっと時間が経ったとき、私が先にいなくなってしまうのか、それとも藍ちゃんがいなくなってしまうのかはわからない。
けれど、藍ちゃんの作った歌を歌いながら一緒にいた日々を思い出せば、少しでも寂しくなくなるんじゃないか――なんてね。