ポケモンSV・剣盾
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「ビートくーん!!」
「え……また来たんですか……」
音が付きそうなほど勢いよく手を振る先にいるのは、アラベスクタウンのビートくん。彼の近くへと駆けて行けば、一歩引かれてしまった。
「また来ちゃった!」
「……そんな頻繁に、用事なんてありますか?」
「ん?ビートくんに会うのが用事かな」
語尾にハートが付くのではないかと思いながら、聞こえてくる自分の声は甘い。もちろん、彼に恋してるからに他ならないのだけれど――そう思っていれば、また一歩後ろへ引かれた。
「ぼくは忙しいんです。早く帰ってください」
「えー!ビートくん冷たいー!!」
「そんなこと言っても、ぼくはばあさんのクイズで忙しいんです!」
「…………」
「そんなに見つめても無理ですよ」
未練がましく見つめていれば、先に釘を刺されてしまった。残念過ぎる。
彼に出会ったのは、アラベスクタウンに数日滞在していた時だ。あの時、ポプラさんに連れられてアラベスクタウンへやってきたビートくんを見た。綿菓子のようにふんわりとした髪に、少しつんとした辛さもあるのに可愛らしい。そんな彼に目を奪われた。それからというもの、彼に会いたくて頻繁にアラベスクタウンを訪れている。
彼から感じるのは引き気味の感情だけれど、最初に比べれば大分話してくれるようになった。それでも、”もう少し“ ”あと少し“と先を望んでしまうのは、人の欲というもので。そうして近付いては、一歩二歩と彼は遠ざかってしまうのだが――。
「……そっか!残念だけど、仕方無いねー!」
そう私自身に言い聞かせるように、そして優しい彼が気負わないようにと明るく戯けて見せる。この熱い気持ちの行き場はないけれど、”仕方が無い“のだ。
「それじゃ、今日は帰ろうかな!マリィちゃん達と約束もあるし……」
「え⁉」
「どうかした?」
「……いいえ。何も」
ここに長くいれば、持て余した気持ちが溢れ出しそうで、それを抑える術が見つからない私は逃げることを選んだ。驚いたように彼がこちらを見つめていたけれど、今までよりあっさりと私が引いたからかもしれない。
「それじゃあね!」
「はい、また……」
手を振り、くるりと彼に背を向け駆け出す。
――早く遠くへ行かなきゃ……気持ちが、抑えきれなくなる前に。
ここから少しでも離れた場所へ向かいたくて、これでもかと走り続ける。自らのことに気を取られていたからだろうか。寂しそうに手を振り返す彼の表情や、『また』と次回を表してくれたことに気付かなかった。
帰宅し、そのことに気付いた頃には、日が変わっていて。熱で赤くなる顔をそのままに、深夜だからと叫ぶことが出来ずに悶えていたら、テブリムに黙らされていたのはまた別のお話。