追った貴方の見てる先
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無人島での合宿も終わり、『そろそろちゃんとした合宿所に行くんだな』と思いながら散歩をしてたとき。曲がり角から誰かが飛び出してきて、ぶつかった。
――こんなとこで走んなよ!!
文句の一言でも言ってやろうと思ったけど、相手を見て、その言葉はどっか飛んでいってしまった。
「っ……ごめ……なさ……!」
正直、すっげー焦った。最近、元気がないとは思っていたけど、それでもいつも気丈な瑠奈さんが泣いてるから。どうしたら良いのかわかんなくて、慰める方法も思い付かないまま、昔泣いてたときに親がやってくれたのを思い出して抱き締めてみた。
びくりと震えた身体。気丈でも、身長は俺より少し低いくらい。力も手も、俺の方が強いしデカい。テニスをして鍛えているから、女子で俺より強いやつなんてそうそう見ないけど、それでも気丈な先輩はずっと凛と立っているように見えていた。そんな先輩が、ずっと我慢してたみたいに泣いてる理由がわかんなくて。ただ、抱き締めながら頭を撫でるしか出来なかった。
「瑠奈さん……大丈夫っすか?」
「……ごめんね、赤也」
「全然いいっすよ!……むしろ、こんな瑠奈さんを放っておけないっていうか……」
少し力が抜けたのか、強張っていた身体がそっと寄り添ってくる。それに、きっと部長なら放っておかなかっただろう。部長は、瑠奈さんとすごく仲が良いから。そう、思っていたのに。
「……んだ、あれ……」
俺の言葉に顔を上げた瑠奈さんは、すぐに顔を背けた。俺の視線の先にいたのは、手を繋いだ部長と辻本。
――何で二人が一緒にいんだよ……。幸村部長は、瑠奈さんが好きなんじゃなかったのかよ……!
腕の中で震えてる瑠奈さんが可哀想で、ここ最近ずっと元気がなかった理由も納得した。瑠奈さんは、部長の事が好きなんだと思っている。それに、部長もそうなんだと思っていた。それほどに二人は仲が良かったし、周りもそれを知っていた。
「すんません、瑠奈さん……。俺が海側にいれば……!」
「赤也……?」
――海側にいれば、この状況を阻止出来たかもしれないのに。
俺は、瑠奈さんと部長、好きな二人に幸せになってほしかった。でも、今の現状は――。
「赤也。瑠奈に何してるんだい?」
「瑠奈さん、大丈夫ですか?」
幸村部長が辻本とこっちに来た。この道は、船着き場へと続いているから、辻本を送る道すがらなんだろう。辻本は、ただ心配して聞いているだけだろうけど、部長の声は冷たくて、少し怒っているようにも感じる。
「別に何もしてないっすよ。瑠奈さんを抱き締めてるだけで」
「……何で抱き締める必要があるのか、俺にはわからないんだけど」
『そのまま行ってくれ』と思っても、部長は気になるようで。仕方なく、言うことにする。
「……瑠奈さんが傷付いてるからですよ。俺は慰めてるだけです」
「傷付いて……?瑠奈、どうしたんだい?何かあったなら俺が……」
近付き、瑠奈さんに手を伸ばそうとした部長から瑠奈さんを隠す。その行動に幸村部長が怒ってきているのがわかる。だとしても、反抗してでも俺は守りたかった。
「赤也、退いてくれ。俺は瑠奈に話してるんだ」
「嫌っすよ!」
「退くんだ赤也」
「精市さん……」
「彩夏、ごめん。少し待っていてくれるね」
「……はい」
彼女がいながら、瑠奈さんを気にかける。傍から見れば良い人だろうけど、慕っている相手からされれば、残酷も良いところだ。
「……幸村部長、彼女が出来たならそっち優先すりゃ良いじゃないですか!部長は瑠奈さんの彼氏じゃないんすから!関係ないじゃないっすか!!」
「関係なくなんてないよ。俺は瑠奈が大事だから」
「それは“友達”としてだろ!前ならあんたに瑠奈さんを渡せた!でも、あんたは今辻本と付き合ってんだ!!」
思わず出た言葉の数々。それにハッとする幸村部長は、今を理解したのだろうか。早くここを離れようと瑠奈さんの手を取る。
「……現実見てくださいよ。瑠奈さんは、俺が守りますから。……瑠奈さん、行きましょう」
「……うん」
瑠奈さんの手を引いて歩を進める。ちらりと後ろを振り返れば、悔しそうな幸村部長と不安そうな辻本がそこにいただけだった。
あの場からある程度離れたのを確認し、立ち止まる。思い出すのは先程のこと。言ったことに後悔はしてないけど、この後の事を考えれば不安はある。
「……あんな啖呵切っちまったら、後で怒られるかな」
「……どうだろ?でも、赤也カッコ良かったよ」
「本当っすか!」
「本当本当。……ありがとうね、ちょっと元気出た」
そう言って少し笑った瑠奈さんに安心する。やっぱり、あんたには笑っててほしいから。
「俺、ちゃんと守りますから。だから瑠奈さん、隣にいてくださいよ」
「赤也……。このサバイバルで赤也逞しくなってるから、ビックリだなぁ。ありがとう」
微笑んでくれた瑠奈さんの手を握り、また歩き出す。
今はこの関係でもいい。いつかは、ちゃんとこの気持ちを伝えて変えてやる。
それまでは、隣にずっと……。