追った貴方の見てる先
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「いねぇなぁ……」
――こっちの方に行ったのを見たって聞いたけど……。
聞いた情報を元に、人を探しながら宛もなく歩く。『もしかしたら別のところだったかも』と考え出した頃、曲がり角で人とぶつかった。
「っ……ごめ……なさ……!」
そのぶつかった相手こそ、俺が今探していた子で。見れば、目から止めどなく涙が溢れているのを隠すように、パッと顔を逸らした。
「ぶつかってごめん……。もう行くから……」
泣いている瑠奈を一人にしたくなくて。ここを去ろうとした瑠奈を引き寄せ抱き締めた。
「ブン太……?」
「……何も見てねぇから、思いっきり泣けよぃ」
「……っ……ごめん……」
背中に手を回し、ぽんぽんと一定のリズムで叩いてやれば、小さく肩を震わせて嗚咽した。瑠奈を抱き締めてあやしていると、向こうから幸村くんと辻本が手を繋いで、こっちに向かっているのを見る。幸村くんは上手くいったのか。『良かった』と思いながら、微笑ましく幸村くん達を眺める。
――まー、瑠奈を泣かせることになっちまったけど、計画通りだろぃ。二人を引き離すことに成功、ってな。
思わず口角が上がりそうだ。俺だってずっと瑠奈を見ていた。なのに、こいつはいつだって幸村くんを見て応援していた。幸村くんだって、それを嬉しそうにしていたのを知っている。
そして、ここに来る途中の船でも二人は変わらず仲が良さそうにしていた。それが、どれだけ辛かったか――。瑠奈が行方不明になった時は、俺も超焦ったし、探すのに時間をかけすぎて幸村くんや真田に怒られたりもした。幸村くんも心配していたのは知っている。でも、幸村くんは“部長”でみんなを纏める立場だから、捜索に時間をかけることは出来なくて。だから、幸村くんもイライラしてたのかもしんねーけど。
そんな時に辻本が現れた。辻本は幸村くんとよく行動していたし、約束したりもしていて仲が良さそうで。何日か経ってから、ジャッカルと幸村くんのところへ行ったら、軽く邪魔者扱いされた事もあった。この時にはイライラは落ち着いていて、幸村くんの好意が、少しずつ瑠奈から辻本に移っているんだと思った。
――……これ、俺チャンスじゃね?
そう思ったら、いてもたってもいられなくて、どうにか辻本と幸村くんをくっつけるよう動くことに必死だった。『頑張ってたら俺にだって』と、瑠奈が見つかった時のことを考えれば苦でも何でもなかったから。そんなことを考えながら行動していたときに、瑠奈が見つかった。安心したのと同時に、『早くしなければ』と焦ったことを覚えている。幸村くんの思いが瑠奈に戻る前に、と。
見つかってからは、真っ先に瑠奈を誘って一緒に色んなところへ行くことも出来た。そうこうしていれば、様々なことが重なったこともあるだろう。日が経った頃には、幸村くんが瑠奈よりも辻本を優先しているのは誰の目から見ても明らかだった。その時くらいからだったか。瑠奈が傷付いた顔をしてたから、下心をひた隠しにして『大丈夫か?』なんて声をかけて近付いた。あの時、瑠奈は『大丈夫だから』としか言わなかったけど、気持ちが揺れているのは見ていてすぐにわかった。『大丈夫だ』と言いながらもずっと傷ついて、最後の送別会も花火も、二人が一緒にいるのも瑠奈は見ていたくらいだ。
――もう苦しいんだろぃ?
そう言って、どれだけ瑠奈を抱き締めてやりたかったか。『今日、辻本が告白する』という噂を聞いて、瑠奈を探して今に至るわけだけど。多分、瑠奈は告白場面を見ちまったんだろう。
幸村くん達との距離が近くなる。声を殺して泣いているこいつを幸村くんに見せたくなくて、ぎゅっと力を入れた。幸村くんが俺達に気付いて今にも怒りそうな顔をしていたけど、横に辻本がいるのに気がついて、こっちを気にしながらも横を通り過ぎ、船着き場まで向かっていく。
――……勝った。
そう思えるくらい、瑠奈は今身近にいる。俺の腕の中だ。離したりなんかしない。好きな人の存在を確かめるように、抱き締めなおした。
「……ブン太、ありがとうね」
「良いって。それより、顔洗ってこいよ。ベタベタだろぃ?」
「うん、そうする。……本当に、ありがとう。ブン太がいてくれて良かった」
ようやく瑠奈が落ち着た頃。そんな会話をし、駆けていくのを見送る。
――最後は笑ってくれたから、良かったか……。
なんて思っていれば、ガサリと音が鳴る。その音の方からやってきたのは幸村くんだった。
「お、幸村くん。どうしたんだよぃ?」
何も知らない風を装って聞く。さっきの表情を見ていたのに、だ。けれど、幸村くんもどこか余裕が無いように見える。
「……瑠奈を泣かせたのか?何で丸井が抱き締めているんだ。彼女でもないんだろう?」
「それこそ、瑠奈は幸村くんの彼女でもねぇだろぃ?関係なくね?」
まさか返されると思っていなかったのか、たじろぐ珍しい姿を見た。俺達は二人共、瑠奈の彼氏ですらない。だけど――。
「彼女……じゃないけど、瑠奈は俺の大事な……」
「悪いけど、俺、瑠奈の事好きなんだよ。俺なら、絶対泣かしたりなんかしねぇ。……幸村くん、瑠奈が大事なら応援してくれるだろぃ?」
彼女持ちの幸村くんには出来ない立ち位置に、俺は立てる。『はい』としか言えないよう、気が抜けない相手に宣戦布告を仕掛けて。
絶対に譲れない想いを抱きながら、目の前の恋敵を睨んだ。