前に一歩、進んだ先に
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産まれたときからずっと一緒で、私達は無二の家族で、兄妹で。離れることなんて絶対ないって思ってた。
だけど、そんな事は難しくて。私はただ、離れてしまうことが怖くて。そして、頑張ってる君達の力になりたくて。だからここまで、頑張ってこれたんだ。
これからも、ずっと支えていきたい。
そう思うから――
だから、一緒に未来を見ててもいいですか?
事の始まりは、中学一年生の頃だった。
「明日からツッくんに家庭教師が来るのよー」
「えぇ!?」
「私は!?」
「瑠奈ちゃんも、勉強が解らなかったらその人に聞いてね」
母さんがツナの為に頼んだ、家庭教師が家に来たことから始まる。その家庭教師こそが、ツナをマフィアのボスにしたリボーン。来た当初、もちろんツナの為に頼まれた家庭教師だということもあるけれど、リボーンはツナに付きっきりだった。マフィアに関することだって、『瑠奈は女だから』 『ボス候補はツナだけだから』という理由で、何も聞かせてもらえなかった。
じゃあ、何故今知っているのか。いつも怪我をして帰ってくるツナが心配で、私が独自に調べ上げたからに過ぎない。それに、あんなにもビクビクしていたツナが、獄寺くんのような怖い人に、『おはようございます、十代目!』と声をかけられているのだ。誰だって気になるところだと思う。
それに、風紀委員長も然り。この間なんて、家の庭で水やりをしていたら、風紀委員長が私達の家の屋根を上ってツナの部屋に行くのだから、当然ビックリするじゃないか。おかしいと思うでしょう?
そうしたことから調べだしたマフィアのこと。今思えば、中学生の私がよくそんなことを出来たなと思う。もしかしたら、リボーンか誰かが裏から見ていてくれたのかもしれないけれど。出来てしまったものは仕方ない。調べた内容を掻き集め、読み進め、事を知ったときは本当に驚いたし、“何故教えてくれなかったのか”とショックを受けた。私達は双子で、今まで隠し事なんか何一つ無かったのに。なのに何も、私には言ってくれなかったんだ――と。
そんなショックを引きずる中、ボンゴレのことや内情をきちんと知ったのが、確か指輪の争奪戦が終わった時だったと思う。酷い怪我をして、ベッドに横たわるツナに泣きながら怒ったのだ。
「何で……何で私には何も言ってくれないの!?双子で、産まれた時から一緒で……唯一の兄妹でしょ!!支える事くらい、させてほしかった。私がしちゃいけなかったの?」
「瑠奈……ごめん。俺、ずっと瑠奈を巻き込むと思って……傷つけたくなくて……こんな酷い世界を、見せたくなくて……」
「……ごめん!ツナ、ごめん……ありがとう……っ!!」
調べてからというもの、一人だけツナに置いていかれた気分だった。それが面白くなくて。あとは、どんどんとツナが世界を広げていることに嫉妬もあったのかもしれない。でもツナは、私の事をずっと思ってくれていたんだ。私に“マフィア”という血の世界を見せないように、ずっと頑張ってくれていた。そんな思いを知った後じゃ、自分の中に渦巻いていた感情なんか、とてもちっぽけなもので。ツナに謝ったのと同時に、ツナを――いや、ツナ達を支えられる立場になるんだって、中学生ながらに思ったのだ。
その後の私の行動は早かった。学校の授業が終われば、図書館に行って医学書を読んだり、保健室の先生に応急処置の仕方を学んだりした。分からないなりに、調べながら、噛み砕きながら。
何故医学に行ったかと言えば、まずきっと私は戦うことに向いていない。情報収集の道も考えたけれど、それよりも怪我をした時に治せるようにしたい。そう思った結果の行動で。この頃には、リボーンも私の行動を認めてくれたのか、勉強によく付き合ってくれた。
「またやってんだな」
「まぁ……色々と知っときたくて」
「そうか。そういえば、この医学書とかは良いみてーだぞ」
ちらりと見せられた医学書。図書館にあるものや、書店にあるものは、ざっと見た後にある程度目星を付けて読んでいる。だから、リボーンの持っている医学書の表紙を見るのは本当に初めてで。
「え!!何それ!?見たことない!」
「ボンゴレに伝わる医学書だからな」
「……お願い!見せてください!!」
「ダメだぞ。見るのはまだまだ先だ」
「ケチっ!」
フフンと言ったようにサッと隠されるのを見ると、自慢しに来ていたのも否めないけれど。でも、普段の勉強を手伝ってくれたこともあり、私は医学大付属の高校に進学することが出来た。ツナや京子ちゃん、みんなと別々の学校に行くのは寂しかったけれど、これでみんなを少しでも支えられるようになるなら。そう思えば、不思議と頑張ることが出来た。
そして高校二年生の時。自室に来たリボーンは、いつもの調子で小さな箱を渡す。
「瑠奈、これを持っておけ」
「これは……指輪?」
「そうだぞ。これから、いるようになってくるからな」
箱を開ければ、中に入っていたのは指輪だった。それは、ツナがよく額に灯している“死ぬ気の炎”のように炎を灯せる指輪なのだそうだ。そして、その炎には属性があり、特性まであるのだとか。
――私は、何になるんだろう。ツナと同じオレンジ?それとも……。
期待にドキドキしながら指輪を嵌めた時のことは、今でも覚えている。だけど、中々炎を灯すことが出来なくて。そんな簡単なことじゃないと思ってはいたけど、やっぱりこういうことに関しては才能が無いのかもしれない。なんて、よく凹んだこともあった。こっそり練習していたのがツナに見つかって、何故指輪を持っているのかと問い質されたりもしたけれど。練習している時や凹んでいる時。そんな時に、いつも側にいてくれたのはツナだった。
「もう嫌だ。炎とか灯せない……」
「そう言わないでさ。もうちょっと頑張ってみようよ?」
「……でも、“覚悟”って何なのかイマイチ解らなくて」
「そういえば、俺もそこで躓いたなぁ……」
「そうなの!?」
「うん。ディーノさんから、指輪に炎を灯せるって聞いたときだったから、中三の時だったかな?……でも瑠奈はさ、覚悟なんてとっくの昔に決まってるんじゃない?」
「そんな事……全然……」
「だって、そうじゃないと自分から、このマフィアの世界に行こうって思わないと思うんだ」
そう言って、少し悲しそうに笑ったツナ。そこでやっと気付いた。ツナが巻き込まないようにしてくれていた中、自分から飛び込んだこの世界。その飛び込んだ理由こそが、私の覚悟だったんだと。
“みんなを支えたい”
ただ、純粋にこれだけのこと。それに気付けば、炎が灯る事も早かった。そして、私の指輪に灯った炎は――
“調和”
ツナと同じ大空だった。
それからしばらく経ち、高校を卒業した私はツナ達より先にイタリアへ向かうことになった。表向きの理由は、ヨーロッパで医学を学ぶ為。つまりは留学ということになっているけれど、本当の理由はボンゴレの医療班になったからだ。医療班になれたのは、偶然だったのかもしれないけれど。
経緯の一つとして挙げられるのは、私が卒業した時、ヴェルデという人から渡された、私用に作られた晴の治療用匣と新しい指輪のこと。
――何故晴れなんだろう?確かに匣は大空でも開けられるけれど……それにこれは、大空の指輪なのだろうか?
そう思って灯した指輪には、黄色の晴の炎。私は、晴の炎も灯せたようだ。だとしたら、これはとても嬉しい。
『本当は晴だったら』
医療に携わる上で、活性の特性を持つこの属性をどれだけ望んでいたか。これで医療班として、更に手助けする事が出来る。それを気付かせてくれたヴェルデに、本当に感謝した。
こうした属性に関する経緯やヴェルデからの匣、度々あったらしいリボーンの報告から、知識含め九代目達に評価されたらしく。晴れて、ボンゴレの医療班になれた。ただ、医師としての勉強はまだまだで、出来ることは匣による治療と応急処置くらいに限られたけれど。それでも、やっとツナ達を支えられる。助けられる所にまで来たんだと思うと、出来ることが少しだけだとしても嬉しかった。これから先、ここで経験を積んで、いずれは医師としてちゃんと治療出来るようになる。そうすれば、出来る幅も広がる。そう考えれば、これからも頑張れるから。
「よし、もうひと頑張り」
そんな時、ふと頭を過ったのはツナのこと。そういえば、ツナには『ヨーロッパに行く』としか言わなかったから、ここにいるって知ったら驚くかもしれない。いや、『心配したんだぞ』と怒るだろうか。そう思うと、ツナには悪いけれど口元が緩んでしまって仕方ない。中学生だったあの頃は、ツナが前を駆けていたのに。いつの間にか、私が前を走っていたね。
――早く、私は先に待ってるよ。
心の中でツナに呼びかけながら、日々仕事に励んだ。
あれから、辛いことも楽しいことも乗り越えて、早いもので月日はどんどんと過ぎていった。その間に変わったことと言えば、私は医師としてちゃんと治療も出来るようになった。今では医療班のトップに立っている。本当は、自分自身でも驚いている。ツナというボンゴレボスを支えようとは思っていても、医療班のトップに立つ事なんて絶対ないと思っていたのだから。それでも、今の立場は悪くない。彼等をサポートする分には申し分ないし、確固とした立場なのだから。仕事に関しては、忙しくなるから少し悩ましいところなのだけれど。
「瑠奈様、九代目よりご連絡です」
「九代目は何と?」
そんなある日の仕事中、私に伝えられた情報。とうとう明日、ツナがイタリアにやってくるというものだった。“ボンゴレボスの継承式”という名目で。
――やっと、この日が来るんだ。私がずっと待っていた、この日が。
気持ちが高揚する中、聞いた話によれば、明日は医療班として継承式に立ち会うことが出来るらしい。これはとても嬉しいこと。明日が、楽しみだ。
そしてやってきた、継承式当日。人がたくさんいる中をきょろきょろと探す。すると見つけた見知った集団。
「あっ、ツナにみんな!久しぶりだね」
「……えぇ!?瑠奈!?」
「何でお前……!!」
「留学先って、ここだったのなー」
今、私の目の前にいるのは、面白い反応をしているツナと守護者の人達。山本と雲雀さんを除いたみんな、幽霊を見たかのような驚き方するのだから。確かに“ヨーロッパ”という括りじゃ、ここにいることはないって思うだろうけれど。それでも、その反応が面白くて笑ってしまった。一緒に来ていたリボーンは、知っていたから驚くことなんてなかったけれど。それだけは残念だったな、なんて思ったのも束の間。不意にツナに抱き締められて、『どうしたんだろう』って思っていたら、ツナの身体が震えていることに気付いた。
「っ心配したんだぞ!ヨーロッパに行くって言ったきり、連絡寄越さないしさ!!」
「……うん、ごめん」
私の、想像通りの事を言ったなと思ったのと同時に、とても心配をかけたんだと理解した。経験積むのに必死で、連絡をサボってしまったから。
――悪いこと、したかな……。
罪悪感は募る。そんな時なのに、思い出すのが『何でマフィアの事を教えてくれなかったんだ』って、ツナに怒ったあの時と何処か似ていて。今は立場が交代して、私が怒られているけれど。だけど、ツナの肩越しにはみんながいて、笑ってたり、呆れてたり、今見えている何気ない表情や言葉があって。それが何か嬉しくて、思わず出た言葉は――。
「ありがとう」
「……バカだよ、瑠奈は」
お礼だったんだ。みんなといられる時間をありがとう。私がここにいる意味をくれてありがとう。中学生のあの時、ツナが教えてくれなかったら。そして、私が調べなかったら。きっと今、ここに私はいなかった。みんなのこんな表情を見ることも、言葉を聞くことも無かった。みんなを支えたいって思う道なんて、無かった。私は、ここにいられて良かったって思うから。心配はかけてしまったけれど、伝えたいのは心からのありがとうで。
「バカで良いよ……ほら、継承式始まるからさ。行っておいで」
「……うん。行ってくる」
私から少し離れたツナは、優しく微笑んでいた。そして、奥に入っていくツナに付いていく守護者達。
「十代目の晴れ舞台、ちゃんと見とけよ!」
「俺達の晴れ舞台でもあるのなー」
「堅苦しい式は、こう……苦手なのだ」
「瑠奈が見ててくれるなら、俺はきちんと行って来ますよ」
「……群れてる」
「雲の人も、みんなも、連絡がなくて瑠奈を心配してた……無事で、良かった」
みんなが奥に行くとき、すれ違い様に言葉をかけてくれる。まるで昔のようで、余計に懐かしさが込み上げる。特に、一番最後に話してくれたクロームは、言葉にもあった通り、心配してくれてたんだと思った。クロームと話した時間はほんの少しだったけれど、話し終えると安心したように微笑んで、奥に進んで行ったから。
――ツナだけじゃなくて、みんなに心配をかけていたのか……。
クロームは『雲の人も』と言っていた。ということは、あの雲雀さんもだから――本当に優しいよ、全員が全員。
「だからこそ、支えたいんだろ?」
「ははっ、思ったこと読まないでよ。……でも、そうだね。だから、しっかり支えたい」
いきなり背後から聞こえたリボーンの声に、先に出た笑い声。
――思ったこと読むのは相変わらず、か。
だけど、リボーンは読んだ先を言葉で言ってくれるから、私も素直になれる。そして、良い意味で私は意思を改めて確認出来る。
「……さ、私達も継承式行くよ」
「仕方ねーな」
出会った当初より大きくなったリボーンを連れて、私達も継承式が行われている奥へ進んだ。
それから、あの後見た継承式は楽しかった。主役のツナが、こちらまでわかるくらいに緊張していて。それもあってか、途中転びかけたりもしていて。そんな姿に九代目達も笑っていたものだから、継承式という堅いはずの式だったけれど、比較的和やかだったと思う。ツナは顔が真っ赤だったけれど。
そんなツナは今、イタリアの本部でボスとしての仕事に励んでいる。仕事を始めた当初は、書類ばっかりで泣き言を言っていたけれど、今は任務もあるから大丈夫そうだ。私は、薬や包帯などの備品の確認が終われば、ツナのところに来ている。最近は怪我人や病人がいないから、部下の管理を除けば比較的暇ということもあってだが。
「暇なら手伝ってほしいよ……」
「手伝いたいのも山々だけど、私はボスじゃないからね」
「……はいはい。ちゃんと頑張るから」
そう言いながら、コーヒーを片手に手元の書類へ目をやるツナ。その光景に『あぁ、ボスなんだなぁ』なんて実感する。昔は“ダメツナ”なんて言われてたのに、その面影はまるでない。成長、だと思う。これで、恋愛に対しても成長していればいいのに。
「で?京子とは発展なし?」
「ブッ!ゲホっゲホ……い、いきなり何言うんだよ!!」
「いや、恋人同士になったのかなぁ……と」
そんなに驚くことだっただろうか。飲みかけたコーヒーまで吹き出す始末。だけれど、こんな反応するって事はまだまだなんだろう。
「そういう瑠奈はどうなんだよ?俺、そういう話あんまり聞かないけど」
「私はいいの!まだ付き合うとか結婚とかいいし」
「……だとしても、守護者の誰かじゃないと俺は認めないからな!」
「何その『俺より強い男じゃないと認めん!』みたいなの。父さんか!」
驚きだった。そんな、父さんみたいな事を言われると思わなかったから。守護者の誰かじゃないと認めないということはだ。
「……って事は、獄寺くんと山本くん、京子のお兄さん、雲雀さんでしょ。それから、骸にランボか」
「あー、でもランボは無しだからな!」
「そりゃね。約10歳差だよ?んー……あ、じゃあ他なら良いんだ」
「……でも、骸とか雲雀さんとかお兄さんが義弟って、緊張しか無いよ」
「そりゃ、そうだろうなぁ」
その面子なら確かに緊張だろう。骸は何かとツナを狙いそうだし、雲雀さんは噛み殺されないか心配になるだろうし、お兄さんは『極限だー!!』と元気過ぎて、私も付いて行けるかどうか。
「まぁ、いつかは誰かと結婚するだろうから、その時を楽しみにしててよ」
「楽しみにって……何か複雑なんだけど」
こうして雑談して、笑い合う。少し前までは無かった光景で、こんなちょっとした事が幸せに感じる。
――この時間、この光景を、私は支えたかったんだな。
壊れないように、そして――これからも大切に守っていきたい。ううん、守っていく。ツナ達と一緒に。
私がそう思うと同時に、もしかしたらツナも似たような事を考えていたのかもしれない。だって、ツナの瞳に映る私の表情と、目の前のツナの表情があまりにも似ていたのだから。それをツナも気が付いたのだろう。どちらからともなく、二人で笑い合った。
そんな幸せが、ずっと続けばと望んでいた。
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