刀剣乱舞
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「主、明日の編成だけど……何をしているのかな、お前は」
「……見てわからないか?執務だ」
夕餉が終わり、宵に差し掛かる時間。明日、遠征に行く部隊について相談があり、執務室を訪れた。戸を開ける前に声をかけなかった俺も悪いが、主が座っているであろう場所に、まさか違う者が座っているなど誰が予想出来ようか。しかも偽物くんは、『当たり前だろう』とでも言いたげに、こちらを見ずに答えてくる。不可。その様子に何か言いたくもあるが、ここは抑えて本歌の余裕を見せなければ。
「何故お前が執務をしているんだ。主は?」
「……いるだろう。ここに」
「……は?」
思わず、気の抜けた声が出たのは仕方がないと思う。この部屋には、どう見たって俺と偽物くんしかいない。
――……いや、神経を研ぎ澄ませれば、かすかに気配は感じるな。気配はあるが、姿はないということか。
今の現状を把握すれば、むしろ刀の俺を相手によくここまで気配を消せたものだと感心する。優だ。
「それで?どこにいるのかな?」
「だから……ここにいると言っている」
ちらりと後ろにやった視線。そこにあるのは、偽物くんが被っている襤褸布。まさかと思い、襤褸布を捲れば、偽物くんにぴったりと抱き付き、くっついている主の姿がそこにあった。
「わかるわけないだろう!!」
「……本歌なら、わかると思っていた」
「何の信頼だ!」
人がいるような膨らみなど、捲る前は無かったのだ。わかるか。思わず突っ込んでしまった上に、偽物くんからの謎の信頼も何だったのか。それにしても、偽物くんにこんなにもぴったりと――。
「……で、主は何をしているのかな?」
「………」
「無視か」
声をかけても無言な主に、思わず言ってしまった。だが、それを制すように偽物くんがこちらを見る。
「……止めてやれ、本歌。主は……何かをぱそこんで見てから、情緒不安定なんだ」
「情緒不安定?」
「そうだ。……だから、そっとしておいてやってくれ」
自分に回された腕を愛おしそうに撫でる偽物くん。
――何だこれは?俺は睦み合いを見せられているのかな……?
遠目でこの現状を見てしまうけれど、俺は主に相談することがあるのだと自らに言い聞かせる。気を取り直さなくては。
「良いかな?情緒不安定だからといって、そうやって甘やかすものではないよ、偽物くん」
「俺は偽物じゃない!」
「反論すべきところはそこか?」
「本歌が偽物と言うからだ……」
片方の手では襤褸布を目深く被れるよう引っ張り、もう片方では主の手を握る。話が逸れる上にだな――。
「おい、べたべたするのは止めろ」
「べたべた……?何がだ?」
「さっきから主の腕や手を握ったり撫でたり……。何なんだ!!」
「これは……俺も、主に触れると安心するからだ。……まさか本歌、嫉妬か……⁉」
「そんな訳無いだろう」
流石にここまで話が進まないと、もう諦めたくなる。先程、気を取り直そうとしたあの気持ちは何処へ行った。
大きな溜め息を吐き、呆れを取り繕えないまま、二人を見る。
「明日の編成、俺が勝手に決めるけれど良いね?」
こくりと頷いた主に、ようやく反応が返った安心感があった。偽物くんが気付くとうるさそうだから、顔には出さないが。
「偽物くんは、主を甘やかすんじゃないよ」
「時には甘えも必要だろう」
「何にでも限度があるんだよ!主の執務をするのは優しさではない、甘やかしだ!!」
『怒られた……』と少し小さくなった偽物くんと、そこにくっつく更に小さな主。全く、この二人に対しては、つい保護者のような気持ちで見てしまう。
「……これをあげるから、早く寝るんだね」
厨で当番から貰った饅頭二つを机に置く。結局は、『甘やかすな』と自ら言いつつも、俺自身二人にはどこか甘いのかもしれない。
「本歌」
部屋を出ようとした俺に声をかける偽物くん。こちらを見る眼差しが、真っ直ぐとして真剣で。その眼力に、思わず俺も身構える。
「……何かな?」
「俺は……粒餡の方が好みだ」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。時間が止まるとはこの事か。が、少しずつ意味を飲み込んでいき、理解が頭に追い付いた瞬間。
「どっちでも良いだろう!!不可だ不可ぁ!!」
『うるさい』と他の刀がやってくるまであと少し。