刀剣乱舞
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僕が顕現されて、三度目の冬を迎えた。そんなにも感慨深いものではないけれど、思い返せば冬は色々と思い出があるように思う。
一度目、顕現された当初は寒さに慣れなくて、顔を真っ青にしていたらしい。篭手切がかなり心配してくれていた。それを見兼ねて、燭台切がほっとちょこれーとという物をよく作ってくれた。あれは、今でも大好きだ。血が巡る気がする。
二度目の冬は、確か防寒に徹底していた。裏起毛の服を貰ったり、毛布を支給してもらったり。当時、編み物が一部の刀剣男士で流行って、色んな男士が毛糸の作品を作っていた。僕も、加州にまふらーを作ってもらった。緑と水色の縞模様のまふらー。これは貰ってからというもの、外に出るときはずっと使っている。加州もそれを見て満足そうにしているから、使用しているだけだというのに、僕も何処か嬉しかった。
そして三度目の今年。冷え込みはあるけれど、身体が寒さに慣れてきつつあるのか、昨年や一昨年ほど辛いと感じることはない。防寒はしっかりするけれど、それでも昨年よりはもこもことしていないから。こうして年を重ねて、人の身体に慣れていくんだろう。戦いだけではなく、日常のこんな小さな事まで。
「そろそろ休憩にするのはどう?」
「…あぁ、もうそんな時間か」
外で行っていた鍛錬。主が声をかけてくれて、時間を確認する。思ったよりも進んでいたそれに、そこまで集中していたのかと少し驚く。温まってきた身体に、ひんやりとした空気が心地良い。息を吸えば、身体の内も冷やしてくれるようだった。
「精が出るね」
「そうだね。どんどんと周りは強くなっていくから、僕も強くならないとと思うよ」
「そっか…。ありがとう」
「何故、お礼を言うんだ?」
「そう思ってくれることが嬉しいからかな」
照れくさそうに笑う主。僕としては当然の事だと思うけれど、主からすれば違うのかもしれない。いくら経っても、人の心は読めなくて難しい。けれども、それがまた何処か楽しく思えてきているのも事実だ。
「わ…雪…?」
「本当だね」
ちらり、ちらりと降ってくるのは白い華。そっと手を伸ばせば、僕の手の上にも舞い落ちる。そして、そこにいなかったとでも言うようにすうっと消えていく。集まれば、雪だるまやかまくらのように、あんなにも頑丈で形作ることだって出来る。なのに、個々としてはこんなにも儚い。人というものを見ているように感じた。
「今年、見るのは初めてだね」
「あぁ、そうだね」
「今年は松井も雪遊び出来そう」
「どうして?」
単純な疑問だ。どこから雪遊びの話になったのか。そして、何故“今年は”なのだろう。
「だって、最初の冬は部屋から出たがらなかったし、去年は着込みすぎて動きにくかったでしょ?」
「そう…だね」
「だけど、今年は動きやすそうだし…。それに、私が作る雪だるまや雪うさぎ、良いなって見てたじゃない」
“寒さに慣れたらやってみてほしかった”と伝えてくれる主に、嬉しさが込み上げる。僕を気にしてくれていたこと、そして視線や感情に気付いてくれていたこと。そうか、こんなことだけでも嬉しいのか。人というものは。
「…今年は、いつかの貴女のように僕が作った雪のうさぎを贈らせてほしい」
「うん、楽しみにしてるね」
思い出の一つで上げ損ねていた。外に出たがらない僕が、少しでも冬や雪を楽しめるようにと主が作ってくれた雪うさぎ。時々作っては、僕の部屋の廊下に置いてくれていた。思わず、笑みが浮かんだのも覚えている。
今、満面の笑みで応えてくれた主に、今年最初の雪で作って僕から贈ろう。いつも一匹でいた雪うさぎ。今年からは二匹寄り添わせて。
そう思うと、雪が積もるのが待ち遠しい。早く、本丸が白に包まれればいい。そう思いながら空を見上げた。