ヒプノシスマイク
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扉の前。深呼吸をしてインターホンを押す。すぐに音が鳴り、それに反応してパタパタと中から小走りで近づく音。持った鞄に力が籠もり、扉が開くまで最後の悪足掻きと前髪を整える。
「はーい!あ、瑠奈オネーサン!来てくれたの?上がって上がって!」
カチャリと鳴ったと思えば、満面の笑みで迎えてくれたのは乱数。手招きされて、お邪魔すればカラフルな色が飛び込む部屋。
「ごめんね、突然来ちゃって」
「ううん、ボクも今一仕事終えたところだったんだ!瑠奈オネーサン、すっごくタイミング良かった」
そう言って笑ってくれた彼に、思わず心が締め付けられる。彼と出会ってから、どれだけ応援し、どれだけ想いを馳せたか。
今日は、乱数の誕生日。そして、バレンタインデーでもあった。この日の為に、しっかり用意したチョコレートを鞄に入れて、想いを伝えたい。そうやって、ここまで来たのが経緯だ。
「あ!何か飲み物入れるね!」
「全然、大丈夫だから…!あの、乱数…」
渡すタイミングを見計らって、鞄の持ち手を弄りながら、そわそわとしてしまう。声をかけたと同時に鳴った電子音。断りと共に出た電話は、どうやら彼のポッセのようで。
「えー!今オネーサン来てるのにぃ…。もー、しょーがないなぁ…。……うん、わかった。あとでねー!ごめんね、瑠奈オネーサン。帝統と幻太郎から呼び出しが来ちゃって…」
「…そっか」
しゅんとした表情を見るに、どうやら残念がってくれているらしい。その事に、心が嬉しさで満ちるようで。けれども、やはり彼にとって優先すべきは仲間の彼らなのだ。ふと、聞きたくなったことを思わず口にした。
「ね、乱数。いつも楽しい?」
「ん?すっごく楽しいよ!一度きりの人生だもん。好きなこといーっぱいして楽しまなきゃでしょ!」
「うん」
「幻太郎と帝統も、一緒にいてわくわくするし、ラップしてるのも楽しい!」
「みんな、いつも楽しそうだなって思ってた」
「でしょでしょ!あ、それでね。幻太郎と帝統と、ポッセでどんどん勝ち上がって行くから!!オネーサン!僕達を応援してね!!」
シブヤを代表する彼と、それを支える彼のポッセ達。こんなに真っ直ぐ上を目指している。そんな彼等が頑張ってる中、私の気持ちなんて言えないよ。
いつの間にか力が抜けた手は、鞄からずり落ち、膝の上に重なっていた。
「もちろん、応援するよ」
「ホント⁉嬉しいなー!」
この笑った顔が好きだ。辛くても、ずっと前だけを見てる瞳が好きだ。その、“好き”と伝えたい気持ちを精一杯飲み込んで。
「…実は今日、これだけ言いたかったの。お誕生日おめでとう、乱数」
「ふふっ、瑠奈オネーサンありがとう!」
彼からしたら、数いる“オネーサン”の一人だとしても。今後、この気持ちを伝える事が無かったとしても。生きる事を楽しんでいる、好きな彼を応援する気持ちは、間違いなく揺るぎのないもので。贈った言葉は、心からのおめでとう。ぼやけた目の前で笑ったであろうピンクは、とてもとても鮮やかで綺麗だった。
帰り道。食べたチョコレートは、苦すぎて涙が滲んだ。