当たり前
おなまえ
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※王馬視点
そこそこ仲の良いクラスメイトから告白された。
別に嫌いじゃない。でも、好きかと言われるとそれも違う。それくらいの相手だった。
正直、薄々好意を抱かれていることには気がついていたけど、自分からは告白できないタイプだろうと高を括っていた。
意外な一面だなぁ…なんて、その出来事をどこか俯瞰的に見ていることを自覚しながら、オレはあっさりと彼女を振った。
「みょうじちゃん、おっはよー」
「…お、おはよう」
翌日の朝、いつも通りに声をかけてみる。
当然と言えば当然なのかもしれないけど、彼女からの返事はいつも通りのものではなかった。
友達として見る場合の彼女は嫌いではなかったし、からかいがいのある、つまらなくない人間だと思っていた。
なんとなく、微かな寂しさを感じた自分に違和感を覚える。
別に、あの時彼女を振ったことを後悔しているわけではないのに。
と、そこまで考えて、普通、友達を無くせば多少の喪失感が襲ってくるものでは?と、この感覚は至って正常なものなのだと思い直した。
けれども、この時の違和感は日に日に大きくなっていくこととなる。
『ホント、最原ちゃんって変なとこ抜けてるよねー?ねぇ、みょうじちゃ……あれ?』
『王馬クン、みょうじさんならついさっき教室から出ていきましたよ』
『王馬くん、みょうじさん知らない?』
『知らなーい。…って、なんでそんなことオレに聞くの?』
『だっていつも一緒にいるから…あれ、でも…そういえば最近は一緒じゃないね』
思っていたよりも、オレの日常にはみょうじちゃんという存在が深く関わっていたらしい。
それこそ、周りから言わせてみれば、『そこそこ仲が良い』なんてものではないくらい、一緒にいて当たり前とすら思われていたような、そんな存在で。
自分自身、ふとした瞬間、最近学校がつまらないと感じていることに気がついたりして。
もしかして、重大な選択肢を選び間違えた?
でも、確かにあの時あの瞬間、オレはみょうじちゃんのことを好きだとは思っていなかったことも事実で…。
だから、あの時別の選択肢なんてオレの中にはなかったんだ。そもそもなかったものを選んでおけば、なんて後悔するのはおかしな話。
それなのに、ふと気がつけばあの日あったかもしれない別の未来を想像してしまう自分がいて、いや、だからそもそも別のルートなんかなかったんだ、と考えを改めて…というのを繰り返している。
「と、まぁ…こんな感じ」
「なるほど…腑に落ちたけど、それで…結局王馬くんはどうしたいの?」
色々と様子のおかしなオレたちを心配した心優しい最原ちゃんは、放課後2人になったタイミングで何があったのかを聞いてきた。
別に隠すことでもないし、目の前の男は探偵という職業柄、むやみやたらと噂を広めるような人間でもないことは知っている。
人に話せば整理が着く、なんてこともあるかもしれないと思って今日までの出来事を聞かせたわけだが。
「それが分かんないから、仕方なく最原ちゃんに話してあげたんじゃん」
わざとらしく大きなため息をついて見せれば、最原ちゃんは困ったように頬をかく。
「…でも、さっきの話だと…いや、うーん…」
「何、思うことがあるなら言えば?」
同い歳の探偵は口を開いて閉じてを数回繰り返したあと、控えめに話し始めた。
「過去の王馬くんには、確かに今選んだ選択肢しかなかったのかもしれない」
「そうだね。そんなこと考えたこともなかったし」
「…でも、今の王馬くんには?もし、もう一度みょうじさんが同じことを言ったとしたら、今も王馬くんの選択肢はひとつしかないのかな?」
「え?」
もう一度、みょうじちゃんが?
いや、そんなことはありえない。
だって、あの子はそもそも自分から告白なんてしそうにないような、そんな性格の人間だ。
多分、あの時だって相当勇気を振り絞ってあの場に立っていただろうことは分かっている。
それが分かっていたから、いつものように茶化すことはしなかったわけだし。
「…いや、ありえない話じゃん。それをああだったらこうだったらって考えることに、なんの意味があんの」
「確かに、みょうじさんがそういう行動を取る可能性は低い。だけど、王馬くんがどうしたいと思ってるのかは分かるんじゃないかな」
なるほど、と思い直して想像してみる。
もし、みょうじちゃんが「それでも好きです」とでも言ってきたとしたら。
断るか、受け入れるか。
…受け入れる?それはつまり、付き合うということ?
それは、オレもみょうじちゃんのことを好きだった場合の選択肢なはずで。
…でも、あの日のオレの頭の中には断る以外の選択肢はなかったはずで。
「…あれ?」
「どうかした?」
「うーん、悩むことなんかないはずなのに」
「…悩むってことは、断りたくないってことなんじゃないかな?」
「いや、でもそれだと…」
オレが、みょうじちゃんのことを好き…みたいじゃない?
喉元まで出かかった言葉を、声にする前に飲み込んだ。
あの日より前の出来事を思い出して、あの頃は楽しかった、なんて年寄りみたいなことを考えたりした。
たった1人が欠けただけなのに、学校生活がひどくつまらないものに感じた。
…最近、自分以外のクラスメイトとは変わらず仲良くしているみょうじちゃんを見て、内心面白くないと思っていた。
ひとつひとつの心当たりは、全てお気に入りの玩具が無くなったとか、そういう喪失感から来るものだと考えていたのに。
「…うわぁ、最原ちゃんに言われて気づくとか最悪すぎる」
「僕はその言葉の方が最悪だと思うけどね」
「うるさいなー、ダサイ原のくせに」
「なっ…それは入間さんが勝手に言ってるだけで」
「嘘だよ。まぁ…最原ちゃんにしてはよく出来たんじゃない?」
「あ、あはは…王馬くんって本当にブレないよね」
みょうじさん、まだ屋上にいるみたいだよ。
最原ちゃんの情報を頼りに、教室を出て屋上へと向かう。
そういえば、あの時もみょうじちゃんから呼び出された場所は屋上だったなぁ。
1人になりたかったのか、ご丁寧に掛けられた鍵をピッキングで外して扉を開く。
「…えっ?」
こちら側から鍵をかけたんだから、誰かが入ってくるはずはない。
それなのに来訪者が現れただけで驚いただろうに、相手がオレだったから更に驚いたんだろうか。
みょうじちゃんは目を見開いて口をパクパクとさせている。
「ここにいるって聞いたから」
どうしてここに?と言いたげな瞳に向かってそう答える。
一歩近づくごとに落ち着きを失う彼女を無視して、オレはみょうじちゃんの隣に立った。
「…色々考えたんだけど」
「う、うん…?」
「多分、当たり前だと思っちゃってたんだろうね。みょうじちゃんが近くにいるのが」
話が見えないのか、みょうじちゃんは困惑した顔のまま深く頷いた。
「みょうじちゃんがいないと、全部つまんないなーって思って。あの時、どうしてたらオレの望む今があったかなとか、そんなこと考えてさ」
「…」
「それで、好きなんだなって気づいちゃった。もう遅い?」
ピシリと固まってしまった彼女の顔を覗き込めば、じわじわと頬に赤みが差していくのが分かる。
今更言われても。そんな答えだったらどうしよう。
ここへ向かう時からずっと頭の中には不安が渦巻いていたのに、みょうじちゃんの表情を見れば、それらは全ていらない不安だったんだと思えた。
「お、遅くない…!でも、その…なんで今さら!?」
「にしし、オレもそう思う」
「私より頭良いくせに」
強張らせていた表情がほどけて、彼女は呆れたように笑っていた。
こんな風にみょうじちゃんと話すのはいつぶりだろう。
そんなに日が経っているわけでもないのに、懐かしさで胸がいっぱいになった。
そこそこ仲の良いクラスメイトから告白された。
別に嫌いじゃない。でも、好きかと言われるとそれも違う。それくらいの相手だった。
正直、薄々好意を抱かれていることには気がついていたけど、自分からは告白できないタイプだろうと高を括っていた。
意外な一面だなぁ…なんて、その出来事をどこか俯瞰的に見ていることを自覚しながら、オレはあっさりと彼女を振った。
「みょうじちゃん、おっはよー」
「…お、おはよう」
翌日の朝、いつも通りに声をかけてみる。
当然と言えば当然なのかもしれないけど、彼女からの返事はいつも通りのものではなかった。
友達として見る場合の彼女は嫌いではなかったし、からかいがいのある、つまらなくない人間だと思っていた。
なんとなく、微かな寂しさを感じた自分に違和感を覚える。
別に、あの時彼女を振ったことを後悔しているわけではないのに。
と、そこまで考えて、普通、友達を無くせば多少の喪失感が襲ってくるものでは?と、この感覚は至って正常なものなのだと思い直した。
けれども、この時の違和感は日に日に大きくなっていくこととなる。
『ホント、最原ちゃんって変なとこ抜けてるよねー?ねぇ、みょうじちゃ……あれ?』
『王馬クン、みょうじさんならついさっき教室から出ていきましたよ』
『王馬くん、みょうじさん知らない?』
『知らなーい。…って、なんでそんなことオレに聞くの?』
『だっていつも一緒にいるから…あれ、でも…そういえば最近は一緒じゃないね』
思っていたよりも、オレの日常にはみょうじちゃんという存在が深く関わっていたらしい。
それこそ、周りから言わせてみれば、『そこそこ仲が良い』なんてものではないくらい、一緒にいて当たり前とすら思われていたような、そんな存在で。
自分自身、ふとした瞬間、最近学校がつまらないと感じていることに気がついたりして。
もしかして、重大な選択肢を選び間違えた?
でも、確かにあの時あの瞬間、オレはみょうじちゃんのことを好きだとは思っていなかったことも事実で…。
だから、あの時別の選択肢なんてオレの中にはなかったんだ。そもそもなかったものを選んでおけば、なんて後悔するのはおかしな話。
それなのに、ふと気がつけばあの日あったかもしれない別の未来を想像してしまう自分がいて、いや、だからそもそも別のルートなんかなかったんだ、と考えを改めて…というのを繰り返している。
「と、まぁ…こんな感じ」
「なるほど…腑に落ちたけど、それで…結局王馬くんはどうしたいの?」
色々と様子のおかしなオレたちを心配した心優しい最原ちゃんは、放課後2人になったタイミングで何があったのかを聞いてきた。
別に隠すことでもないし、目の前の男は探偵という職業柄、むやみやたらと噂を広めるような人間でもないことは知っている。
人に話せば整理が着く、なんてこともあるかもしれないと思って今日までの出来事を聞かせたわけだが。
「それが分かんないから、仕方なく最原ちゃんに話してあげたんじゃん」
わざとらしく大きなため息をついて見せれば、最原ちゃんは困ったように頬をかく。
「…でも、さっきの話だと…いや、うーん…」
「何、思うことがあるなら言えば?」
同い歳の探偵は口を開いて閉じてを数回繰り返したあと、控えめに話し始めた。
「過去の王馬くんには、確かに今選んだ選択肢しかなかったのかもしれない」
「そうだね。そんなこと考えたこともなかったし」
「…でも、今の王馬くんには?もし、もう一度みょうじさんが同じことを言ったとしたら、今も王馬くんの選択肢はひとつしかないのかな?」
「え?」
もう一度、みょうじちゃんが?
いや、そんなことはありえない。
だって、あの子はそもそも自分から告白なんてしそうにないような、そんな性格の人間だ。
多分、あの時だって相当勇気を振り絞ってあの場に立っていただろうことは分かっている。
それが分かっていたから、いつものように茶化すことはしなかったわけだし。
「…いや、ありえない話じゃん。それをああだったらこうだったらって考えることに、なんの意味があんの」
「確かに、みょうじさんがそういう行動を取る可能性は低い。だけど、王馬くんがどうしたいと思ってるのかは分かるんじゃないかな」
なるほど、と思い直して想像してみる。
もし、みょうじちゃんが「それでも好きです」とでも言ってきたとしたら。
断るか、受け入れるか。
…受け入れる?それはつまり、付き合うということ?
それは、オレもみょうじちゃんのことを好きだった場合の選択肢なはずで。
…でも、あの日のオレの頭の中には断る以外の選択肢はなかったはずで。
「…あれ?」
「どうかした?」
「うーん、悩むことなんかないはずなのに」
「…悩むってことは、断りたくないってことなんじゃないかな?」
「いや、でもそれだと…」
オレが、みょうじちゃんのことを好き…みたいじゃない?
喉元まで出かかった言葉を、声にする前に飲み込んだ。
あの日より前の出来事を思い出して、あの頃は楽しかった、なんて年寄りみたいなことを考えたりした。
たった1人が欠けただけなのに、学校生活がひどくつまらないものに感じた。
…最近、自分以外のクラスメイトとは変わらず仲良くしているみょうじちゃんを見て、内心面白くないと思っていた。
ひとつひとつの心当たりは、全てお気に入りの玩具が無くなったとか、そういう喪失感から来るものだと考えていたのに。
「…うわぁ、最原ちゃんに言われて気づくとか最悪すぎる」
「僕はその言葉の方が最悪だと思うけどね」
「うるさいなー、ダサイ原のくせに」
「なっ…それは入間さんが勝手に言ってるだけで」
「嘘だよ。まぁ…最原ちゃんにしてはよく出来たんじゃない?」
「あ、あはは…王馬くんって本当にブレないよね」
みょうじさん、まだ屋上にいるみたいだよ。
最原ちゃんの情報を頼りに、教室を出て屋上へと向かう。
そういえば、あの時もみょうじちゃんから呼び出された場所は屋上だったなぁ。
1人になりたかったのか、ご丁寧に掛けられた鍵をピッキングで外して扉を開く。
「…えっ?」
こちら側から鍵をかけたんだから、誰かが入ってくるはずはない。
それなのに来訪者が現れただけで驚いただろうに、相手がオレだったから更に驚いたんだろうか。
みょうじちゃんは目を見開いて口をパクパクとさせている。
「ここにいるって聞いたから」
どうしてここに?と言いたげな瞳に向かってそう答える。
一歩近づくごとに落ち着きを失う彼女を無視して、オレはみょうじちゃんの隣に立った。
「…色々考えたんだけど」
「う、うん…?」
「多分、当たり前だと思っちゃってたんだろうね。みょうじちゃんが近くにいるのが」
話が見えないのか、みょうじちゃんは困惑した顔のまま深く頷いた。
「みょうじちゃんがいないと、全部つまんないなーって思って。あの時、どうしてたらオレの望む今があったかなとか、そんなこと考えてさ」
「…」
「それで、好きなんだなって気づいちゃった。もう遅い?」
ピシリと固まってしまった彼女の顔を覗き込めば、じわじわと頬に赤みが差していくのが分かる。
今更言われても。そんな答えだったらどうしよう。
ここへ向かう時からずっと頭の中には不安が渦巻いていたのに、みょうじちゃんの表情を見れば、それらは全ていらない不安だったんだと思えた。
「お、遅くない…!でも、その…なんで今さら!?」
「にしし、オレもそう思う」
「私より頭良いくせに」
強張らせていた表情がほどけて、彼女は呆れたように笑っていた。
こんな風にみょうじちゃんと話すのはいつぶりだろう。
そんなに日が経っているわけでもないのに、懐かしさで胸がいっぱいになった。
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