4日目
おなまえ
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4日目:午後
私が一人とんでもない疲労を感じている中、予定通り食堂で女子会は開かれた。
女子の全員参加が叶ったと赤松さんが嬉しそうに言っていたから、真っ先に入間さんの前の席を陣取って王馬くんに渡した発明品のことを聞いた。
「オレ様の発明は悪くねぇ!使うやつの問題なんか知るか!」とごもっともなことを言われ、どう返せばいいかと口ごもってしまった。
ただ正論をぶつけられて怯んでいただけなのに、何も言われないことにびびったらしい入間さんは急に態度を軟化させてこう言った。
「ち、違うんだよぉ…私だってその…脅されて…」
「脅す!?王馬くん…変な人だとは思ってたけど、そこまで酷いことする人だったなんて…」
「オレ様の発明品でちょーっとな…王馬にイタズラしたんだ。そしたら返り討ちにあってよ…。お気に入りの発明を人質に取られて、仕方なく言う通りにしてやったってわけだ」
「はぁ…それなら仕方ないね」
「だろ?オレ様はなんも悪くねーよな!」
「って思うわけないでしょ!そんなことになるきっかけを作った入間さんが悪いんじゃん!」
「ひぃん!ごめんなさいぃ!」
これ以上喘がれるのも本意ではないので、一先ず今後は気をつけるようにと言いつけてこの話は終わらせることにする。
そんなやり取りの一部始終を見ていた春川さんに、「あんたも大変なんだね」と同情されてしまった。
そうだよ、大変なんだよ。
話のはずみで午前中に王馬くんの組織に強制加入させられる可能性があることを愚痴混じりに零せば、まともに相手をしなければいいと言われて確かになと思った。
良く考えてみれば最初からそういう条件だったんだ。
卒業への布石として一緒に過ごしてるように見せたいだけで、同じ空間にさえいればお互い何しててもいいはずだった。
それなのになんで私は今日も昨日もくそ真面目に交流していたんだろうか。
「ありがとう、春川さん…目が覚めたよ」
「…私、普通のことしか言ってないと思うんだけど」
春川さんはなんとも言えない顔をしていたが、私は気にせず心からの感謝を述べる。
最初こそつれない態度の彼女だったけど、段々と照れたような仕草をし始めたのがギャップがあって可愛らしいと思った。
それが声に出てしまっていたせいで「殺されたいの?」なんて物騒な脅し文句を頂いてしまったけれど、それを差し引いても春川さんは可愛い…怖いけど可愛い…怖いがちょっとだけ勝ってるけど。
「ねぇねぇ、みょうじさんって王馬くんと仲が良いんだね!」
「え!?うーん…どうかなぁ…?」
赤松さんが何やら目を輝かせながらやって来た。
相変わらず仲が良いなんてことは絶対にないのだが、それを言ってしまうと卒業計画に支障が出るかもしれない。
こうも打算的な考えが咄嗟に浮かぶなんて、私もどんどん大人の階段を上ってるんだなと思った。
…それでも仲が良いと言えるほど割り切れていない辺り、子どもなところが残っているとも言えるかもしれないけれど。
「ふふ、あんなに一生懸命追いかけっこして遊べる間柄だったんだなぁってびっくりしちゃった」
「あぁ、見られてたんだね…お恥ずかしい」
「……実際のところどうなの?みょうじさん的には王馬くんはアリなの?」
周りに聞こえないための配慮なのだろう。
赤松さんが私にこそこそと小声でそう問いかけるが、そういう核心に迫る話はどう答えていいか分からないから結局困ってしまう。
ナシと言えば最終日に嘘がバレそうだし、アリと言うのもなんだか癪だ。
「あ、あはは~どうだろうね、私にもよく分かんないかなー…」
曖昧に答えて笑っておけば諦めてくれないだろうか。
赤松さんはかなり物足りなそうな顔をしているが、どうか諦めて欲しい。
女の子って恋バナ好きだね。でも残念なことに浮いた話なんてひとつも無いから申し訳ないけど他の人とお願い。
そう思いながら顔に笑顔の仮面を貼り付けていると、夢野さんがつかつかとやって来て赤松さんをビシッと指さした。
「赤松、そんなわけなかろう!王馬のようなデリカシーの欠片もない男を好きになる女がこの世にいるはずがない!ウチはそう思っておる!」
「そうですよ!王馬さんは男死の中でも殊更やっかいな男死ですからね!夢野さんのことを弄ぶなんて…転子は今でも思い出すと腸が煮えくり返りそうです!」
どこからともなく茶柱さんもやってきて、夢野さんと二人していかに王馬くんが大変な人なのかということを力説してくる。
夢野さんに卒業を求める男はロリコン野郎だから気をつけろだの、ずっとちびっ子のままだったら本当に魔法使いになれるかもしれないだの、言いそうだなぁと思うエピソードの数々に「あぁ…」としかいえなかった。
「それにそれに!あまりに酷いので転子が王馬さんを嗜め時、あの人はなんと言ったと思いますか!?……『好きな子イジメを注意するなんて野暮なことをするな』と、そう言ったんですよ!?信じられますか、有り得ません…!」
「て、転子やめい…もう、この話はその辺で…」
「夢野さんは純粋ですから、それを聞いて照れてしまったんです!あの時の夢野さんの愛らしさといったらもう堪らないほどでしたが、王馬さんがその後いつもの様に嘘だったと言ってどこかへ逃げてしまって…。夢野さんは相当なショックを受けてしまったんです!なんなんですかあの人、転子の夢野さんを弄ぶなんて…!」
「んあー!そこまで話す必要はなかったじゃろう!何をさらっとウチの恥ずかしいエピソードまで暴露しておるんじゃ!それにウチは転子のものではない!」
好きな子イジメって…。王馬くんってそんな冗談も言うんだなぁ、タチの悪い人だ。
茶柱さんは夢野さんの言葉にショックを受けて大騒ぎしていたため、赤松さんと2人で夢野さんを慰めた。
夢野さんって小さくて可愛いな。茶柱さんの言うこともちょっとだけわかるかも。
「ウチはお主らと同い年なんじゃからな」
今回は口から思考は漏れていなかったはずが、どうやら表情や頭を撫でる行為で大体バレてしまったらしい。
だけど口を尖らせて文句を言う夢野さんはやっぱり可愛かった。
「それにしても、王馬くんのイタズラ好きは困っちゃうね。みょうじさんと追いかけっこしてるときすごく楽しそうだったから、体力が有り余って発散する先を探してるのかな?」
「え、そんなに楽しんでたの?」
「うん、いつものニヤニヤした顔じゃなくてちゃんとした笑顔だったから珍しいと思って」
「そ、そうなんだ…」
性格悪いやつ、と心の中で王馬くんに悪態をついた。
私は必死過ぎて全然気がつく余裕もなかったよ。
本当にどこからそんな体力が湧いてくるのやら…。
まぁいいわ、次からはまともに相手をするような私じゃないんだから。
大人の対応ってやつだよ。そういう訳で私はみんなより一足先に大人になりますからね。
赤松さんが不思議そうに「なんの話してるの?」と言っていた気がする。
どうやら私は大人になる前に考えていることを口に出さないことから学ばないといけないらしい。
アンジーさんに神頼みのやり方教えてもらおうかな。
そう思っているとタイミング良くアンジーさんがやって来て、神さまとひとつになる方法について力説された。
ビクンビクンしてぬるぬるしてイケニエがああなって神っちゃうらしいから、私にはまだ早そうだと辞退することにした。
まずはお祈りからだね、と返されてしまったのでこれから極力アンジーさんと2人にはならないでおこうと思う。
もしもどこかに神っちゃわない神様がいるならどうか私の話を聞いてください。
無事に何事もなく卒業ができますようにと、頭の片隅で適当な祈りを捧げながらその日は眠りについた。
私が一人とんでもない疲労を感じている中、予定通り食堂で女子会は開かれた。
女子の全員参加が叶ったと赤松さんが嬉しそうに言っていたから、真っ先に入間さんの前の席を陣取って王馬くんに渡した発明品のことを聞いた。
「オレ様の発明は悪くねぇ!使うやつの問題なんか知るか!」とごもっともなことを言われ、どう返せばいいかと口ごもってしまった。
ただ正論をぶつけられて怯んでいただけなのに、何も言われないことにびびったらしい入間さんは急に態度を軟化させてこう言った。
「ち、違うんだよぉ…私だってその…脅されて…」
「脅す!?王馬くん…変な人だとは思ってたけど、そこまで酷いことする人だったなんて…」
「オレ様の発明品でちょーっとな…王馬にイタズラしたんだ。そしたら返り討ちにあってよ…。お気に入りの発明を人質に取られて、仕方なく言う通りにしてやったってわけだ」
「はぁ…それなら仕方ないね」
「だろ?オレ様はなんも悪くねーよな!」
「って思うわけないでしょ!そんなことになるきっかけを作った入間さんが悪いんじゃん!」
「ひぃん!ごめんなさいぃ!」
これ以上喘がれるのも本意ではないので、一先ず今後は気をつけるようにと言いつけてこの話は終わらせることにする。
そんなやり取りの一部始終を見ていた春川さんに、「あんたも大変なんだね」と同情されてしまった。
そうだよ、大変なんだよ。
話のはずみで午前中に王馬くんの組織に強制加入させられる可能性があることを愚痴混じりに零せば、まともに相手をしなければいいと言われて確かになと思った。
良く考えてみれば最初からそういう条件だったんだ。
卒業への布石として一緒に過ごしてるように見せたいだけで、同じ空間にさえいればお互い何しててもいいはずだった。
それなのになんで私は今日も昨日もくそ真面目に交流していたんだろうか。
「ありがとう、春川さん…目が覚めたよ」
「…私、普通のことしか言ってないと思うんだけど」
春川さんはなんとも言えない顔をしていたが、私は気にせず心からの感謝を述べる。
最初こそつれない態度の彼女だったけど、段々と照れたような仕草をし始めたのがギャップがあって可愛らしいと思った。
それが声に出てしまっていたせいで「殺されたいの?」なんて物騒な脅し文句を頂いてしまったけれど、それを差し引いても春川さんは可愛い…怖いけど可愛い…怖いがちょっとだけ勝ってるけど。
「ねぇねぇ、みょうじさんって王馬くんと仲が良いんだね!」
「え!?うーん…どうかなぁ…?」
赤松さんが何やら目を輝かせながらやって来た。
相変わらず仲が良いなんてことは絶対にないのだが、それを言ってしまうと卒業計画に支障が出るかもしれない。
こうも打算的な考えが咄嗟に浮かぶなんて、私もどんどん大人の階段を上ってるんだなと思った。
…それでも仲が良いと言えるほど割り切れていない辺り、子どもなところが残っているとも言えるかもしれないけれど。
「ふふ、あんなに一生懸命追いかけっこして遊べる間柄だったんだなぁってびっくりしちゃった」
「あぁ、見られてたんだね…お恥ずかしい」
「……実際のところどうなの?みょうじさん的には王馬くんはアリなの?」
周りに聞こえないための配慮なのだろう。
赤松さんが私にこそこそと小声でそう問いかけるが、そういう核心に迫る話はどう答えていいか分からないから結局困ってしまう。
ナシと言えば最終日に嘘がバレそうだし、アリと言うのもなんだか癪だ。
「あ、あはは~どうだろうね、私にもよく分かんないかなー…」
曖昧に答えて笑っておけば諦めてくれないだろうか。
赤松さんはかなり物足りなそうな顔をしているが、どうか諦めて欲しい。
女の子って恋バナ好きだね。でも残念なことに浮いた話なんてひとつも無いから申し訳ないけど他の人とお願い。
そう思いながら顔に笑顔の仮面を貼り付けていると、夢野さんがつかつかとやって来て赤松さんをビシッと指さした。
「赤松、そんなわけなかろう!王馬のようなデリカシーの欠片もない男を好きになる女がこの世にいるはずがない!ウチはそう思っておる!」
「そうですよ!王馬さんは男死の中でも殊更やっかいな男死ですからね!夢野さんのことを弄ぶなんて…転子は今でも思い出すと腸が煮えくり返りそうです!」
どこからともなく茶柱さんもやってきて、夢野さんと二人していかに王馬くんが大変な人なのかということを力説してくる。
夢野さんに卒業を求める男はロリコン野郎だから気をつけろだの、ずっとちびっ子のままだったら本当に魔法使いになれるかもしれないだの、言いそうだなぁと思うエピソードの数々に「あぁ…」としかいえなかった。
「それにそれに!あまりに酷いので転子が王馬さんを嗜め時、あの人はなんと言ったと思いますか!?……『好きな子イジメを注意するなんて野暮なことをするな』と、そう言ったんですよ!?信じられますか、有り得ません…!」
「て、転子やめい…もう、この話はその辺で…」
「夢野さんは純粋ですから、それを聞いて照れてしまったんです!あの時の夢野さんの愛らしさといったらもう堪らないほどでしたが、王馬さんがその後いつもの様に嘘だったと言ってどこかへ逃げてしまって…。夢野さんは相当なショックを受けてしまったんです!なんなんですかあの人、転子の夢野さんを弄ぶなんて…!」
「んあー!そこまで話す必要はなかったじゃろう!何をさらっとウチの恥ずかしいエピソードまで暴露しておるんじゃ!それにウチは転子のものではない!」
好きな子イジメって…。王馬くんってそんな冗談も言うんだなぁ、タチの悪い人だ。
茶柱さんは夢野さんの言葉にショックを受けて大騒ぎしていたため、赤松さんと2人で夢野さんを慰めた。
夢野さんって小さくて可愛いな。茶柱さんの言うこともちょっとだけわかるかも。
「ウチはお主らと同い年なんじゃからな」
今回は口から思考は漏れていなかったはずが、どうやら表情や頭を撫でる行為で大体バレてしまったらしい。
だけど口を尖らせて文句を言う夢野さんはやっぱり可愛かった。
「それにしても、王馬くんのイタズラ好きは困っちゃうね。みょうじさんと追いかけっこしてるときすごく楽しそうだったから、体力が有り余って発散する先を探してるのかな?」
「え、そんなに楽しんでたの?」
「うん、いつものニヤニヤした顔じゃなくてちゃんとした笑顔だったから珍しいと思って」
「そ、そうなんだ…」
性格悪いやつ、と心の中で王馬くんに悪態をついた。
私は必死過ぎて全然気がつく余裕もなかったよ。
本当にどこからそんな体力が湧いてくるのやら…。
まぁいいわ、次からはまともに相手をするような私じゃないんだから。
大人の対応ってやつだよ。そういう訳で私はみんなより一足先に大人になりますからね。
赤松さんが不思議そうに「なんの話してるの?」と言っていた気がする。
どうやら私は大人になる前に考えていることを口に出さないことから学ばないといけないらしい。
アンジーさんに神頼みのやり方教えてもらおうかな。
そう思っているとタイミング良くアンジーさんがやって来て、神さまとひとつになる方法について力説された。
ビクンビクンしてぬるぬるしてイケニエがああなって神っちゃうらしいから、私にはまだ早そうだと辞退することにした。
まずはお祈りからだね、と返されてしまったのでこれから極力アンジーさんと2人にはならないでおこうと思う。
もしもどこかに神っちゃわない神様がいるならどうか私の話を聞いてください。
無事に何事もなく卒業ができますようにと、頭の片隅で適当な祈りを捧げながらその日は眠りについた。
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