3日目
おなまえ
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3日目:午後
昼食後、個室に戻る間もなく食堂で王馬くんに呼び止められ、そのまま自由時間に入った。
食堂のテラスで向かい合わせに座り、ガチャガチャで出たというお菓子を差し出される。
「“すき焼きキャラメル”って…なにこれ、ちゃんと美味しいの?」
「食べてみたら?」
名称からして不味いんだろうなと思ったが、王馬くんは平気な顔で食べていたからもしかするのかも…と淡い期待を胸にそれを口に放り込む。
まず初めにすき焼きのタレに大量の砂糖をぶち込んだみたいな味が広がってくる。
そしてその奥からすき焼きに入ってそうな具材の味も後追いでやって来て、色んな味覚を刺激されて口の中が忙しい。端的に言えばかなり不味かった。
「うっ…なんか想像と違う」
「それがつまらなくなくていいんじゃん」
「…よく分かんないや」
一度口に入れたを吐き出すのも憚られて、死ぬ思いで咀嚼し続ける。
王馬くんは余裕綽々でおかわりまでしていて、本当に同じものを食べているのかと疑問に思えた。
「はぁ…これなら自分でお菓子作った方がいいよ」
「あー、そういえばみょうじちゃんってパティシエなんだっけ?全然そんな風に見えないけど」
「うるさいなぁ。見た目と才能は関係ないの」
「にしし…それはそうだね。見た目と才能が直結してるのなんてキー坊くらいなもんだし」
キー坊…あぁ、キーボくんのことか。
そんなあだ名付けるほど仲良くなったんだ。どうでもいいけど。
「…あれ、みょうじちゃんの爪ってそんな色だっけ?」
「今日天海くんにやってもらったの」
「へぇ、天海ちゃんにそんな特技があったんだ。……にしても、なんでその色にしたの?もっと可愛い色いくらでもあったでしょ」
「別に…目に入ったから選んだってだけだよ」
「ふーん」
王馬くんが両手で頬杖をつきながらニヤニヤした顔で私を見た。
「うちの組織のイメージカラーにぴったりだったから、てっきり入社希望なのかと思った」
「違うわ!そもそもイメージカラーなんて知らないし!」
思わず大きな声が出たが、王馬くんは全く意に介さ無い様子でちょいちょいと自分のスカーフを指さした。
あぁ、それがイメージカラーなのね。
それと同じって言いたいのね。
確かに私もちょっとだけ頭に浮かんだけど、そんなことを言ったら余計に色々言われるだけのような気がしてふいっと顔を背けた。
「モノクマカラーなんですー。王馬くんは関係ありませーん」
「それはそれで変わってるなーと思うだけだけどね」
「いいの。だって学園長だよ?媚び売って損ないじゃん」
「にしし…まぁそういうことにしとこっか」
「だからー!そういうことでしかないの!」
「はいはい、そうだねー」
見透かしたようなことを言われてついムキになってしまった。
これ以上続けても墓穴を掘るだけのような気がして、王馬くんも特に何も言わないし私もそれに倣う。
「…あ、なくなっちゃった」
「さっきのキャラメルのこと?」
「うん。あーあ、またメダル探さないと」
「そんなに気に入ったんだ」
一体あれの何が良かったんだろうか。
私にはあのキャラメルの良いところより悪いところを探す方が簡単なんだけど。
「まぁ別に普通のお菓子でもいいんだけどね。甘いの好きだし」
「ふーん」
「そうだ、良いこと思いついた」
「はぁ…」
王馬くんの言う良いことは多分私には悪いことだ。
嫌な予感がして彼の方を見ると、いつものニコニコ笑顔が視界に映る。
「みょうじちゃんに何か作ってもらえばいいや」
「………はい?」
「得意なんでしょ?お菓子作るの」
「いや、まぁそういう才能ですけれども」
「じゃあ作ってよー美味しいもの」
「えぇ…やだよ面倒臭いし。なんで私が」
「あれ?もしかして自信ない?超高校級ともあろうキミが、美味しいものなんて指定されたらハードル高すぎて怖気付いちゃった?」
「はぁ!?そんなわけないじゃん、私が作るんだから何をどうやったって美味しくなるに決まってるでしょ!」
安い挑発だと思ったけど、ついついカチンときて言い返してしまった。
結局、「だったら証拠見せてよ」なんて分かりきった展開が待っていて、私はまんまとお菓子を作るはめになった。
嫌々ながらもリクエストを聞き、ふわふわのスフレパンケーキを焼いてやる。
一口食べた王馬くんは、満足気な表情を浮かべて「やるじゃん」と言っていた。
ちょっとだけ承認欲求のようなものが満たされたが、こうなるまでの経緯を思い出すと今の言葉だけでは足りないような気がしてくる。
「せっかく味は美味しいのに、ぶすくれた女が目の前にいたらなんか萎えてくるね…」
「文句があるなら食べなくて結構!」
「うそうそ、冗談だってば!味はホントに美味しいよ!」
「ふん、超高校級ですからねー」
「にしし…そうだね。これならおやつ係でもいいかも」
「…あの、なんの話?」
「なんでもないよー!こっちの話!」
王馬くんは終始ご機嫌な様子で私の作ったものを食べ終えた。
また作ってね、なんて言われたけどそれにはお断りだと返しておいた。
まぁ、割と素直に喜んでくれてたし、たまに気が向いた時は作ってあげないこともないかもしれないけど。
でもそんなことを言うと調子に乗られそうだから、今のはそっと胸の中だけで呟くに留めた。
「明日は午前中でもいい?」
「え?あぁ…自由時間のことだよね。うん、どっちでも構わないけど」
「じゃあそういうことで!また明日ねー」
別れ際にそんな約束をして、王馬くんはひらひらと手を振って遠ざかっていく。
そうか、また明日もあるのか…。
今日で3日目。まだまだ先は長い。
王馬くんと接することに、私自身かなり慣れが出てきている気がするのがなんだか癪だ。
あんな人の相手に慣れてしまったら、今後変な人と出会ってもちゃんと変な人だと認識できなくなりそう。
そんなことを考えながら一旦寄宿舎へ戻り、少し休憩してから夕食をとるためまた食堂へ出向く。
いつもならまばらに人が座っているような状態だが、今日は何やら女子ばかりが固まっているテーブルがあった。
何してるんだろうと思っていると、私が入って来たことに気がついた赤松さんが手招きをしてくる。
「どうしたの?」
「ふふ、女子会の計画立ててるんだー」
「お、いいねー」
誘導されるまま彼女の隣の席に座る。
向かい合わせになった茶柱さん、夢野さんと一言二言言葉を交わしてからテーブルをぐるりと見渡す。
集まってるのは他に白銀さんとアンジーさんと春川さん。
春川さんとはあまり話したことがなくて、かなりクールな印象だったからこういう場にいるのが少し意外だった。
私の視線に気がついた春川さんは、少しだけ照れくさそうに「赤松が無理矢理連れてきただけだから」と言っていて、思っていたより可愛い人だなぁとほっこりした気持ちになった。
「明日の午後に女子だけで集まろうって話してたんだけど、みょうじさんもどう?」
「うん、行くよー」
「にゃはははー!イケニエが増えたねー!」
「もう、余計なことを言わないでください!みょうじさんに逃げられてしまうじゃないですか!」
「え…ちょっと待って、イケニエって冗談なんだよね?」
東条さんには既に話はついていて、参加を了承してくれたらしい。
入間さんはこの場にいないから赤松さんが明日誘う予定なんだとか。
女子会だなんて、一気に友達が増えるみたいでなんだか嬉しい。
みんな良い人そうだし、こんな友達ができるならここでの生活も全てが悪いことばかりではないかもしれないと思った。
昼食後、個室に戻る間もなく食堂で王馬くんに呼び止められ、そのまま自由時間に入った。
食堂のテラスで向かい合わせに座り、ガチャガチャで出たというお菓子を差し出される。
「“すき焼きキャラメル”って…なにこれ、ちゃんと美味しいの?」
「食べてみたら?」
名称からして不味いんだろうなと思ったが、王馬くんは平気な顔で食べていたからもしかするのかも…と淡い期待を胸にそれを口に放り込む。
まず初めにすき焼きのタレに大量の砂糖をぶち込んだみたいな味が広がってくる。
そしてその奥からすき焼きに入ってそうな具材の味も後追いでやって来て、色んな味覚を刺激されて口の中が忙しい。端的に言えばかなり不味かった。
「うっ…なんか想像と違う」
「それがつまらなくなくていいんじゃん」
「…よく分かんないや」
一度口に入れたを吐き出すのも憚られて、死ぬ思いで咀嚼し続ける。
王馬くんは余裕綽々でおかわりまでしていて、本当に同じものを食べているのかと疑問に思えた。
「はぁ…これなら自分でお菓子作った方がいいよ」
「あー、そういえばみょうじちゃんってパティシエなんだっけ?全然そんな風に見えないけど」
「うるさいなぁ。見た目と才能は関係ないの」
「にしし…それはそうだね。見た目と才能が直結してるのなんてキー坊くらいなもんだし」
キー坊…あぁ、キーボくんのことか。
そんなあだ名付けるほど仲良くなったんだ。どうでもいいけど。
「…あれ、みょうじちゃんの爪ってそんな色だっけ?」
「今日天海くんにやってもらったの」
「へぇ、天海ちゃんにそんな特技があったんだ。……にしても、なんでその色にしたの?もっと可愛い色いくらでもあったでしょ」
「別に…目に入ったから選んだってだけだよ」
「ふーん」
王馬くんが両手で頬杖をつきながらニヤニヤした顔で私を見た。
「うちの組織のイメージカラーにぴったりだったから、てっきり入社希望なのかと思った」
「違うわ!そもそもイメージカラーなんて知らないし!」
思わず大きな声が出たが、王馬くんは全く意に介さ無い様子でちょいちょいと自分のスカーフを指さした。
あぁ、それがイメージカラーなのね。
それと同じって言いたいのね。
確かに私もちょっとだけ頭に浮かんだけど、そんなことを言ったら余計に色々言われるだけのような気がしてふいっと顔を背けた。
「モノクマカラーなんですー。王馬くんは関係ありませーん」
「それはそれで変わってるなーと思うだけだけどね」
「いいの。だって学園長だよ?媚び売って損ないじゃん」
「にしし…まぁそういうことにしとこっか」
「だからー!そういうことでしかないの!」
「はいはい、そうだねー」
見透かしたようなことを言われてついムキになってしまった。
これ以上続けても墓穴を掘るだけのような気がして、王馬くんも特に何も言わないし私もそれに倣う。
「…あ、なくなっちゃった」
「さっきのキャラメルのこと?」
「うん。あーあ、またメダル探さないと」
「そんなに気に入ったんだ」
一体あれの何が良かったんだろうか。
私にはあのキャラメルの良いところより悪いところを探す方が簡単なんだけど。
「まぁ別に普通のお菓子でもいいんだけどね。甘いの好きだし」
「ふーん」
「そうだ、良いこと思いついた」
「はぁ…」
王馬くんの言う良いことは多分私には悪いことだ。
嫌な予感がして彼の方を見ると、いつものニコニコ笑顔が視界に映る。
「みょうじちゃんに何か作ってもらえばいいや」
「………はい?」
「得意なんでしょ?お菓子作るの」
「いや、まぁそういう才能ですけれども」
「じゃあ作ってよー美味しいもの」
「えぇ…やだよ面倒臭いし。なんで私が」
「あれ?もしかして自信ない?超高校級ともあろうキミが、美味しいものなんて指定されたらハードル高すぎて怖気付いちゃった?」
「はぁ!?そんなわけないじゃん、私が作るんだから何をどうやったって美味しくなるに決まってるでしょ!」
安い挑発だと思ったけど、ついついカチンときて言い返してしまった。
結局、「だったら証拠見せてよ」なんて分かりきった展開が待っていて、私はまんまとお菓子を作るはめになった。
嫌々ながらもリクエストを聞き、ふわふわのスフレパンケーキを焼いてやる。
一口食べた王馬くんは、満足気な表情を浮かべて「やるじゃん」と言っていた。
ちょっとだけ承認欲求のようなものが満たされたが、こうなるまでの経緯を思い出すと今の言葉だけでは足りないような気がしてくる。
「せっかく味は美味しいのに、ぶすくれた女が目の前にいたらなんか萎えてくるね…」
「文句があるなら食べなくて結構!」
「うそうそ、冗談だってば!味はホントに美味しいよ!」
「ふん、超高校級ですからねー」
「にしし…そうだね。これならおやつ係でもいいかも」
「…あの、なんの話?」
「なんでもないよー!こっちの話!」
王馬くんは終始ご機嫌な様子で私の作ったものを食べ終えた。
また作ってね、なんて言われたけどそれにはお断りだと返しておいた。
まぁ、割と素直に喜んでくれてたし、たまに気が向いた時は作ってあげないこともないかもしれないけど。
でもそんなことを言うと調子に乗られそうだから、今のはそっと胸の中だけで呟くに留めた。
「明日は午前中でもいい?」
「え?あぁ…自由時間のことだよね。うん、どっちでも構わないけど」
「じゃあそういうことで!また明日ねー」
別れ際にそんな約束をして、王馬くんはひらひらと手を振って遠ざかっていく。
そうか、また明日もあるのか…。
今日で3日目。まだまだ先は長い。
王馬くんと接することに、私自身かなり慣れが出てきている気がするのがなんだか癪だ。
あんな人の相手に慣れてしまったら、今後変な人と出会ってもちゃんと変な人だと認識できなくなりそう。
そんなことを考えながら一旦寄宿舎へ戻り、少し休憩してから夕食をとるためまた食堂へ出向く。
いつもならまばらに人が座っているような状態だが、今日は何やら女子ばかりが固まっているテーブルがあった。
何してるんだろうと思っていると、私が入って来たことに気がついた赤松さんが手招きをしてくる。
「どうしたの?」
「ふふ、女子会の計画立ててるんだー」
「お、いいねー」
誘導されるまま彼女の隣の席に座る。
向かい合わせになった茶柱さん、夢野さんと一言二言言葉を交わしてからテーブルをぐるりと見渡す。
集まってるのは他に白銀さんとアンジーさんと春川さん。
春川さんとはあまり話したことがなくて、かなりクールな印象だったからこういう場にいるのが少し意外だった。
私の視線に気がついた春川さんは、少しだけ照れくさそうに「赤松が無理矢理連れてきただけだから」と言っていて、思っていたより可愛い人だなぁとほっこりした気持ちになった。
「明日の午後に女子だけで集まろうって話してたんだけど、みょうじさんもどう?」
「うん、行くよー」
「にゃはははー!イケニエが増えたねー!」
「もう、余計なことを言わないでください!みょうじさんに逃げられてしまうじゃないですか!」
「え…ちょっと待って、イケニエって冗談なんだよね?」
東条さんには既に話はついていて、参加を了承してくれたらしい。
入間さんはこの場にいないから赤松さんが明日誘う予定なんだとか。
女子会だなんて、一気に友達が増えるみたいでなんだか嬉しい。
みんな良い人そうだし、こんな友達ができるならここでの生活も全てが悪いことばかりではないかもしれないと思った。
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