3日目
おなまえ
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3日目:午前
昨日の教訓を活かして昨晩は早めに就寝し、今日は朝のチャイムより早く起床した。
まだ早いけどすることも特にないからと外へ出ると、丁度同じタイミングで個室から出てきた真宮寺くんと目が合う。
挨拶をされて返さない訳にもいかず、結局そのまま一緒に食堂まで行く流れになってしまった。
正直彼は口元が見えないのもあって、何を考えているのかてんで分からないし苦手だ。
いや、まぁ現時点では真宮寺くんに限らず苦手な人だらけなんだけど。男子とか男子とか。
「今日は随分早いんだネ。昨日はゆっくりだったから朝が弱い人なのかと思っていたヨ」
「えっ?あ、うん…昨日は環境が変わったばかりだったせいかなかなか寝付けなくて…」
普通に答えたけれど、何でそんなこと知ってるんだ?と疑問に思って真宮寺くんに視線を向ける。
すると想定より近い距離でじっと見つめられていたようで、至近距離に真宮寺くんの顔があることの驚きと恐怖で咄嗟に後ずさった。
「おっと、悪いネ。癖みたいなものだから気にしないでくれるとありがたいヨ」
「く、癖?」
「職業病、とでもいうのかナ?つい人間観察に力が入ってしまうことがあるんだヨ」
真宮寺くんの才能は確か、超高校級の民俗学者。
そういえば「人間って良いよネ…」みたいなことを言っているのを聞いたことがある気がする。
彼曰く人間を知ることは民俗学においてかなり重要なものらしい。
だからってそんなに近寄るのは心臓に悪いからやめてくれ、と思ったが悪気があるわけではないようだし言われた通り気にしないことにする。
それにしても、真宮寺くんの目は間近で見るとなんだか不気味だ。
瞳の奥に光が灯ってないというか…。
理由はうまく説明できないが、本当に底の知れない恐怖を感じた。
当たり障りない会話をしながら食堂に到着し、2人きりは怖いから誰かいてくれと願いながら扉を開ける。
「おはよう。洋食と和食、どちらがいいかしら?」
東条さんの柔らかい微笑みに凍りついた心が溶かされる思いだった。
真宮寺くんは「和食でお願いするヨ」と言って先に席に着いた。
他に誰もいないのにあえて離れた席に座るのもあからさますぎる気がして、ひとまず彼の斜め前の席に腰を下ろす。
東条さんには洋食をお願いした。
「あれ、真宮寺くんマスク取らないの?」
「ククク…これは食事用のマスクだから心配いらないヨ」
「そ、そうなんだ」
正直腑に落ちないが、深く追求する勇気もないので東条さんが作ってくれたご飯に目を向ける。
豪華なホテルの朝食みたい。
いただきます、と手を合わせてスクランブルエッグを1口食べると、今まで食べてきたスクランブルエッグはなんだったのかと思えるほど美味しかった。
「東条さん、今日もすっごく美味しい!」
「ふふ、ありがとう」
幸せいっぱいに食べ進めていたが、ふと和食はどんなメニューだったんだろうと気になって真宮寺くんに目を向けた。
焼き魚と卵焼きかぁ…和食もアリだったな。
そのまま何気なく彼の方を見ていると、魚の身をとった箸が口元へ運ばれた時、マスクに接触するかというところでフッと魚が消えた。
「えぇ!?」
思わず声が出てしまい、真宮寺くんと目が合う。
どうしたの?と言われたけれどそれはこっちのセリフだと思った。
「い、今消えたよね…?」
「そうだネ、僕の口の中に消えたネ」
至極当然のようにそう言われて、訳が分からずポカンとしてしまう。
何をどうしたらそうなるんだ?見当もつかない。
「どうやったのか、なんて些細な問題サ」
「えっ、そうでしょうか…?」
「それとも、知りたいかい?」
帽子のツバに指をかけ、ククク…と真宮寺くんが意味深に笑う。
うわぁ、なんか深入りするとやばそう。
「大丈夫です」とだけ返事をしてそれ以降は極力彼を見ないようにしながら食事を終えた。
*****
個室に戻ると、『やっほー!今日は午後に来るね!』と乱雑な字で書かれたメモが扉に挟まれていた。
多分王馬くんだろうな、と思いつつ空いた時間の過ごし方を考えながらまた外に出る。
「あ、みょうじさーん!」
校舎に近いところで赤松さんが元気に手を振っているのが見えてそちらに向かう。
彼女の後ろに白銀さんと天海くんの姿もあって、変わった組み合わせだなぁと思った。
「今からネイルやってもらうんだけど、みょうじさんもどう?」
聞けば赤松さんと白銀さんがその話をしていた時に天海くんに出会い、実は彼もやったことがあるということが分かり、今から場所を変えてやってもらうことになったそうだ。
やったことないし、ちょっと興味あるし、暇だし。
そんな三拍子が頭に浮かび、私は二つ返事で3人についていくことにした。
「ネイルやったことないから楽しみー!」
「そ、そんなに楽しみにされると地味にプレッシャーだなぁ…」
まずはどんなものなのかと、白銀さんが赤松さんの爪に色を塗っているところを見学する。
赤松さんの爪が綺麗なピンク色に染まっていき、彼女もそれを嬉しそうに眺めていた。
「…はい、こんな感じでどう?」
「可愛い!ねぇ見て見て!」
「すごーい!どうやったの?」
「別に凄くないって。ピンクでグラデーションかけただけだよ?」
白銀さんはさらっとそう言ったけど、未経験の私からすれば充分すごいことだ。
爪がつるつるのピカピカで、そこに可愛い色が付いただけでこんなに変わるものなんだなぁと感動を覚える。
「それじゃ、みょうじさんには俺がやってあげるっすよ」
「よ、よろしくお願いします」
向かい合わせに座った天海くんが私に手を差し出してきて、なんかちょっと王子様みたいだな…なんて思いながらその上に自分の手を乗せる。
緊張してもいいけど、手汗だけはかくな私…!
爪の表面を優しく撫でられて、ただネイルアートを施してもらうだけと分かっているのに変な汗が出そうだった。
白銀さんと赤松さんはキャーキャー言いながら、他の指の爪を何色にするかという話で盛り上がっている。主に赤松さんが盛り上がっているだけかもしれないけど。
「みょうじさんも爪は短めなんすね」
「あ…うん。昔折れた時痛かったのがトラウマで」
「ははっ、俺もやったことあるっす」
どんな風にしたいかと聞かれたけれど、特に何も思いつかないから天海くんお勧めの斜めフレンチとやらをしてもらうことになった。
「何色がいいっすか?」
「んー…じゃあ白と黒」
「結構クールな感じが好きなんすね」
「あはは。そんなこともないと思うけど、パッと目に入ったから」
天海くんは小さく笑って、手際よく私の爪に色を付け始めた。
ツートンに塗り分けられていく私の爪。
なるほど、これが斜めフレンチか…。
それにしても天海くん慣れてるなぁと思いながらちらりと彼の表情を伺うと、なんだか何かを懐かしむような顔をしていた。
「天海くん、昔彼女にやってあげてたとかそんな感じ?」
「いや、彼女とかいないっすよ。今も昔も」
「そうなんだ」
「ただ身内にそういう相手がいたってだけっす」
そんな色気のある話ではないから、と言って彼は笑った。
女が多い家庭だったのかなぁ。
それにしても、兄か弟かわからないけど男の子にネイルさせるって結構女の立場が強いお家柄なんだろうか。
「できましたよ。どうっすか?」
「わ、すごい!自分の爪じゃないみたい」
「あっみょうじさんもできてる!いいね、なんだかカッコいい感じ!」
「へへへ…そうかな?あの、ありがとう天海くん」
「いえいえ」
白黒に塗り分けられた爪を眺めていると、何故か王馬くんのスカーフが頭にチラついた気がした。
いや違う違う、どっちかっていうとモノクマっぽいはずだから。
それはそれでどうなんだと思ったが、自分の中ではそういう事にしておいた。
白銀さんの爪は何色がいいか赤松さんと話し合っているうちに、当の本人は天海くんと勝手に決めてさくさく色を塗り終えてしまっていた。
3人でピカピカになった爪を見ながら天海くんもやろうよと言ってみたけど丁重にお断りされ、普通に4人でわいわい話をしながらあとの時間を過ごした。
昨日の教訓を活かして昨晩は早めに就寝し、今日は朝のチャイムより早く起床した。
まだ早いけどすることも特にないからと外へ出ると、丁度同じタイミングで個室から出てきた真宮寺くんと目が合う。
挨拶をされて返さない訳にもいかず、結局そのまま一緒に食堂まで行く流れになってしまった。
正直彼は口元が見えないのもあって、何を考えているのかてんで分からないし苦手だ。
いや、まぁ現時点では真宮寺くんに限らず苦手な人だらけなんだけど。男子とか男子とか。
「今日は随分早いんだネ。昨日はゆっくりだったから朝が弱い人なのかと思っていたヨ」
「えっ?あ、うん…昨日は環境が変わったばかりだったせいかなかなか寝付けなくて…」
普通に答えたけれど、何でそんなこと知ってるんだ?と疑問に思って真宮寺くんに視線を向ける。
すると想定より近い距離でじっと見つめられていたようで、至近距離に真宮寺くんの顔があることの驚きと恐怖で咄嗟に後ずさった。
「おっと、悪いネ。癖みたいなものだから気にしないでくれるとありがたいヨ」
「く、癖?」
「職業病、とでもいうのかナ?つい人間観察に力が入ってしまうことがあるんだヨ」
真宮寺くんの才能は確か、超高校級の民俗学者。
そういえば「人間って良いよネ…」みたいなことを言っているのを聞いたことがある気がする。
彼曰く人間を知ることは民俗学においてかなり重要なものらしい。
だからってそんなに近寄るのは心臓に悪いからやめてくれ、と思ったが悪気があるわけではないようだし言われた通り気にしないことにする。
それにしても、真宮寺くんの目は間近で見るとなんだか不気味だ。
瞳の奥に光が灯ってないというか…。
理由はうまく説明できないが、本当に底の知れない恐怖を感じた。
当たり障りない会話をしながら食堂に到着し、2人きりは怖いから誰かいてくれと願いながら扉を開ける。
「おはよう。洋食と和食、どちらがいいかしら?」
東条さんの柔らかい微笑みに凍りついた心が溶かされる思いだった。
真宮寺くんは「和食でお願いするヨ」と言って先に席に着いた。
他に誰もいないのにあえて離れた席に座るのもあからさますぎる気がして、ひとまず彼の斜め前の席に腰を下ろす。
東条さんには洋食をお願いした。
「あれ、真宮寺くんマスク取らないの?」
「ククク…これは食事用のマスクだから心配いらないヨ」
「そ、そうなんだ」
正直腑に落ちないが、深く追求する勇気もないので東条さんが作ってくれたご飯に目を向ける。
豪華なホテルの朝食みたい。
いただきます、と手を合わせてスクランブルエッグを1口食べると、今まで食べてきたスクランブルエッグはなんだったのかと思えるほど美味しかった。
「東条さん、今日もすっごく美味しい!」
「ふふ、ありがとう」
幸せいっぱいに食べ進めていたが、ふと和食はどんなメニューだったんだろうと気になって真宮寺くんに目を向けた。
焼き魚と卵焼きかぁ…和食もアリだったな。
そのまま何気なく彼の方を見ていると、魚の身をとった箸が口元へ運ばれた時、マスクに接触するかというところでフッと魚が消えた。
「えぇ!?」
思わず声が出てしまい、真宮寺くんと目が合う。
どうしたの?と言われたけれどそれはこっちのセリフだと思った。
「い、今消えたよね…?」
「そうだネ、僕の口の中に消えたネ」
至極当然のようにそう言われて、訳が分からずポカンとしてしまう。
何をどうしたらそうなるんだ?見当もつかない。
「どうやったのか、なんて些細な問題サ」
「えっ、そうでしょうか…?」
「それとも、知りたいかい?」
帽子のツバに指をかけ、ククク…と真宮寺くんが意味深に笑う。
うわぁ、なんか深入りするとやばそう。
「大丈夫です」とだけ返事をしてそれ以降は極力彼を見ないようにしながら食事を終えた。
*****
個室に戻ると、『やっほー!今日は午後に来るね!』と乱雑な字で書かれたメモが扉に挟まれていた。
多分王馬くんだろうな、と思いつつ空いた時間の過ごし方を考えながらまた外に出る。
「あ、みょうじさーん!」
校舎に近いところで赤松さんが元気に手を振っているのが見えてそちらに向かう。
彼女の後ろに白銀さんと天海くんの姿もあって、変わった組み合わせだなぁと思った。
「今からネイルやってもらうんだけど、みょうじさんもどう?」
聞けば赤松さんと白銀さんがその話をしていた時に天海くんに出会い、実は彼もやったことがあるということが分かり、今から場所を変えてやってもらうことになったそうだ。
やったことないし、ちょっと興味あるし、暇だし。
そんな三拍子が頭に浮かび、私は二つ返事で3人についていくことにした。
「ネイルやったことないから楽しみー!」
「そ、そんなに楽しみにされると地味にプレッシャーだなぁ…」
まずはどんなものなのかと、白銀さんが赤松さんの爪に色を塗っているところを見学する。
赤松さんの爪が綺麗なピンク色に染まっていき、彼女もそれを嬉しそうに眺めていた。
「…はい、こんな感じでどう?」
「可愛い!ねぇ見て見て!」
「すごーい!どうやったの?」
「別に凄くないって。ピンクでグラデーションかけただけだよ?」
白銀さんはさらっとそう言ったけど、未経験の私からすれば充分すごいことだ。
爪がつるつるのピカピカで、そこに可愛い色が付いただけでこんなに変わるものなんだなぁと感動を覚える。
「それじゃ、みょうじさんには俺がやってあげるっすよ」
「よ、よろしくお願いします」
向かい合わせに座った天海くんが私に手を差し出してきて、なんかちょっと王子様みたいだな…なんて思いながらその上に自分の手を乗せる。
緊張してもいいけど、手汗だけはかくな私…!
爪の表面を優しく撫でられて、ただネイルアートを施してもらうだけと分かっているのに変な汗が出そうだった。
白銀さんと赤松さんはキャーキャー言いながら、他の指の爪を何色にするかという話で盛り上がっている。主に赤松さんが盛り上がっているだけかもしれないけど。
「みょうじさんも爪は短めなんすね」
「あ…うん。昔折れた時痛かったのがトラウマで」
「ははっ、俺もやったことあるっす」
どんな風にしたいかと聞かれたけれど、特に何も思いつかないから天海くんお勧めの斜めフレンチとやらをしてもらうことになった。
「何色がいいっすか?」
「んー…じゃあ白と黒」
「結構クールな感じが好きなんすね」
「あはは。そんなこともないと思うけど、パッと目に入ったから」
天海くんは小さく笑って、手際よく私の爪に色を付け始めた。
ツートンに塗り分けられていく私の爪。
なるほど、これが斜めフレンチか…。
それにしても天海くん慣れてるなぁと思いながらちらりと彼の表情を伺うと、なんだか何かを懐かしむような顔をしていた。
「天海くん、昔彼女にやってあげてたとかそんな感じ?」
「いや、彼女とかいないっすよ。今も昔も」
「そうなんだ」
「ただ身内にそういう相手がいたってだけっす」
そんな色気のある話ではないから、と言って彼は笑った。
女が多い家庭だったのかなぁ。
それにしても、兄か弟かわからないけど男の子にネイルさせるって結構女の立場が強いお家柄なんだろうか。
「できましたよ。どうっすか?」
「わ、すごい!自分の爪じゃないみたい」
「あっみょうじさんもできてる!いいね、なんだかカッコいい感じ!」
「へへへ…そうかな?あの、ありがとう天海くん」
「いえいえ」
白黒に塗り分けられた爪を眺めていると、何故か王馬くんのスカーフが頭にチラついた気がした。
いや違う違う、どっちかっていうとモノクマっぽいはずだから。
それはそれでどうなんだと思ったが、自分の中ではそういう事にしておいた。
白銀さんの爪は何色がいいか赤松さんと話し合っているうちに、当の本人は天海くんと勝手に決めてさくさく色を塗り終えてしまっていた。
3人でピカピカになった爪を見ながら天海くんもやろうよと言ってみたけど丁重にお断りされ、普通に4人でわいわい話をしながらあとの時間を過ごした。
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