10日目
おなまえ
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「…いたた……もう、みょうじちゃんひどいよー」
「ひどくないわ!デコピン一発で全部チャラなんだから安いもんでしょ」
「ちぇっ、あそこで春川ちゃんたちに出会わなければ逃げきれたのに…」
私と王馬くんが最後の追いかけっこをしていた時、逃げる王馬くんの前方から現れた春川さんの手によって私たちの戦いに終止符が打たれた。
春川さんは見かけによらず意外と力が強いらしく、王馬くんの本気の抵抗をものともせず後ろから羽交い締めにして私に差し出してくれた。
これまでの仕返しに好きに制裁してやれと言われ、追いかけ始めたものの、その後のプランなんて特に立てていなかった私は、迷った末にデコピン一発でケリをつけることにしたのだった。
…正確には私からの一発と、春川さんからの一発で計二発、だったんだけれど。
「もう、まだ痛いよー」
王馬くんが赤くなったおでこを労わるように頭を抱える。
私の一発なんかより、春川さんの一発が余程効いたんだろう。
すごい音がしてたし、私がデコピンした場所と同じ箇所を狙ってたように見えたし。
「そもそも王馬くんがまた手を抜いて勝負を長引かせようとするからでしょ?うさぎとかめの昔話から何も学んでないんだから」
追いかけっこの最中、王馬くんはあからさまに手を抜いていた。
走りながらフーセンガムを膨らませちゃったり、時々後ろを向いて変顔をしてきたり…。
そんな煽り行為てんこ盛りな勝負だったものだから、春川さんに制裁されている時なんて「いいぞ、もっとやれ…!」と心の中で叫んでしまったものだ。
「…かめは最終的に自力で勝ったけど、みょうじちゃんは春川ちゃんの力で勝っただけじゃん」
「う、うるさいな…。運も実力の内って言うじゃない」
「じゃあみょうじちゃんは、超高校級のパティシエ改め超高校級の幸運だね」
「そ、その肩書きは私には重すぎるかなー…」
そんなくだらない話をしながら、ふと私は振り返って少し遠くなった才囚学園の校舎を見た。
モノクマに案内された「こんな道あったっけ?」な小道をずんずん進んできて、気がつけばもう校舎が王馬くんくらいの大きさになっている。
それを見て初めて、本当に終わったんだなぁ…とか、日常に戻れるんだなぁ、なんて実感が沸いてきた。
「帰ったら何しようかなー」
「え?あぁ…そうだよね。私たち、もう帰るんだもんね」
元の日常へ帰る。
才囚学園での出来事が起こる前の私の世界へ。
だけどそうなると、私と王馬くんの関係ってどうなるんだろう。
勝手なイメージだけど王馬くんって普通の生活なんて送ってなさそうだし、別れ道でそれぞれの帰路についた瞬間、それが今生の別れ…ということも有り得そうだ。
「とりあえずみょうじちゃんの家を特定してー、組織の皆にスカウト候補がいること報告してー」
「…ん?え?待って、そういう話?」
「それ以外に何があるの?オレってこうする!って決めたことはその通りにしたいタイプだからさー。みょうじちゃんもちゃんと覚悟しといてよね!」
「な、何をでしょうか…」
おずおずと尋ねると、王馬くんはこの数日間で嫌という程見せられたいつもの意味深な笑顔を浮かべた。
「秘密結社のメンバーになる覚悟。…と、ずーっとオレの側にいる覚悟!」
言った後、王馬くんは少し足を早めてしまったから私からはどんな顔をしていたのか見ることは出来なくなってしまった。
また追いかけっこをしてもいいところだけど、斜め後ろから見える彼の耳がほんのり赤くなっているのを見つけてしまったから、今回ばかりは勘弁しておいてあげようと思った。
「家の特定なんかしなくても、普通に連絡先交換すればいいんじゃないの?」
「あは、連絡先だったらもう知ってるよ!」
「なんで!?」
私たちはそれぞれの日常へ帰っていく。
これまでとは少し違う日常が待っていることに胸を弾ませながら。
「ひどくないわ!デコピン一発で全部チャラなんだから安いもんでしょ」
「ちぇっ、あそこで春川ちゃんたちに出会わなければ逃げきれたのに…」
私と王馬くんが最後の追いかけっこをしていた時、逃げる王馬くんの前方から現れた春川さんの手によって私たちの戦いに終止符が打たれた。
春川さんは見かけによらず意外と力が強いらしく、王馬くんの本気の抵抗をものともせず後ろから羽交い締めにして私に差し出してくれた。
これまでの仕返しに好きに制裁してやれと言われ、追いかけ始めたものの、その後のプランなんて特に立てていなかった私は、迷った末にデコピン一発でケリをつけることにしたのだった。
…正確には私からの一発と、春川さんからの一発で計二発、だったんだけれど。
「もう、まだ痛いよー」
王馬くんが赤くなったおでこを労わるように頭を抱える。
私の一発なんかより、春川さんの一発が余程効いたんだろう。
すごい音がしてたし、私がデコピンした場所と同じ箇所を狙ってたように見えたし。
「そもそも王馬くんがまた手を抜いて勝負を長引かせようとするからでしょ?うさぎとかめの昔話から何も学んでないんだから」
追いかけっこの最中、王馬くんはあからさまに手を抜いていた。
走りながらフーセンガムを膨らませちゃったり、時々後ろを向いて変顔をしてきたり…。
そんな煽り行為てんこ盛りな勝負だったものだから、春川さんに制裁されている時なんて「いいぞ、もっとやれ…!」と心の中で叫んでしまったものだ。
「…かめは最終的に自力で勝ったけど、みょうじちゃんは春川ちゃんの力で勝っただけじゃん」
「う、うるさいな…。運も実力の内って言うじゃない」
「じゃあみょうじちゃんは、超高校級のパティシエ改め超高校級の幸運だね」
「そ、その肩書きは私には重すぎるかなー…」
そんなくだらない話をしながら、ふと私は振り返って少し遠くなった才囚学園の校舎を見た。
モノクマに案内された「こんな道あったっけ?」な小道をずんずん進んできて、気がつけばもう校舎が王馬くんくらいの大きさになっている。
それを見て初めて、本当に終わったんだなぁ…とか、日常に戻れるんだなぁ、なんて実感が沸いてきた。
「帰ったら何しようかなー」
「え?あぁ…そうだよね。私たち、もう帰るんだもんね」
元の日常へ帰る。
才囚学園での出来事が起こる前の私の世界へ。
だけどそうなると、私と王馬くんの関係ってどうなるんだろう。
勝手なイメージだけど王馬くんって普通の生活なんて送ってなさそうだし、別れ道でそれぞれの帰路についた瞬間、それが今生の別れ…ということも有り得そうだ。
「とりあえずみょうじちゃんの家を特定してー、組織の皆にスカウト候補がいること報告してー」
「…ん?え?待って、そういう話?」
「それ以外に何があるの?オレってこうする!って決めたことはその通りにしたいタイプだからさー。みょうじちゃんもちゃんと覚悟しといてよね!」
「な、何をでしょうか…」
おずおずと尋ねると、王馬くんはこの数日間で嫌という程見せられたいつもの意味深な笑顔を浮かべた。
「秘密結社のメンバーになる覚悟。…と、ずーっとオレの側にいる覚悟!」
言った後、王馬くんは少し足を早めてしまったから私からはどんな顔をしていたのか見ることは出来なくなってしまった。
また追いかけっこをしてもいいところだけど、斜め後ろから見える彼の耳がほんのり赤くなっているのを見つけてしまったから、今回ばかりは勘弁しておいてあげようと思った。
「家の特定なんかしなくても、普通に連絡先交換すればいいんじゃないの?」
「あは、連絡先だったらもう知ってるよ!」
「なんで!?」
私たちはそれぞれの日常へ帰っていく。
これまでとは少し違う日常が待っていることに胸を弾ませながら。
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