2日目
おなまえ
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2日目:午前
私は枕が変わるとしっかり眠れないタイプだ。
昨日の晩は中々寝付けなくて、朝のチャイムが鳴ってもすぐには起き上がることが出来なかった。
でも、とりあえず朝ごはん食べに行かないとなぁ…。
自由時間になると食堂はデートスポットと化してしまうため、それまでに朝食を済ませないと食事はしばらくお預けになってしまう。
あまりお腹がすいているわけではないけど、午前の自由時間にもしお腹がなってしまったら恥ずかしい。
急いで身支度を終え、私は食堂に向かった。
「みょうじさん、おはようございます!」
「おはよう茶柱さん。朝から元気だねぇ」
「転子から元気を取ったら何も残らんからのぅ」
「うひー…!夢野さんに転子の元気さを評価されてしまいました…!」
「そう…なのかな?」
茶柱さんと夢野さんは確か、そこにゴン太くんを交えた3人グループで昨日の自由時間をすごしていたんだっけ。
知らぬ間に仲良くなっていたんだなぁと微笑ましい気持ちになりながら、賑やかな2人に囲まれて東条さんが用意してくれた朝食を頂く。
「ん…おいしい…!」
「あら、口に合ったかしら」
「どれもこれも本当に美味しいよ!さすが東条さん」
「ふふ、良かったわ」
昼食も何が用意しておくから、と優雅に立ち去る東条さんはどの瞬間を切り取っても絵になりそうだった。
茶柱さんと夢野さんも食事の出来栄えにご満悦のようで、なんだか幸せな気分で食事を終えることが出来た。
やっぱり女の子相手の方が気が楽だなぁ。
食後にも楽しくお喋りをしていたけれどそんな時間はあっという間に過ぎていき、気がつけばもう午前の自由時間のスタートが迫っていた。
どこもかしこもデートスポット扱いになってしまうため、一旦私たちはそれぞれの個室へと戻る。
1日1回は王馬くんと過ごさないといけないわけだけど、今からどうしようか。
そう思いながら部屋の中を右往左往していると、個室のインターホンが鳴らされた。
『みょうじちゃーん!遊ぼー』
出たよ…と思いながら扉を開けると、明るい笑顔を浮かべた王馬くんにデートチケットを差し出される。
反射的にそれを受け取ると、その手を掴まれてそのままどこかへと連れていかれる。
「えぇ…どこ行くの?」
「んー、暇つぶし出来そうだからAVルーム」
「じ、自分で歩けるよ」
「そう?あんまり嫌な顔してるから逃げるんじゃないかと思ってさ」
男の子に手を握られたのなんて幼稚園の頃以来かもしれはい。あれを手を握ったとカウントしていいのかは分からないけど。
もちろん全然緊張なんかしてないけど、王馬くんがパッと私の手を離してくれて胸を撫で下ろす。
本当に、断じて緊張なんかしてないけど。
王馬くんはそんな私の様子をチラリと見て、意味深な笑みを向けてくる。
なんだかよく分からないけど腹が立った。
「初心だね~」
「そんなことないし!手とか繋ぎ慣れ過ぎてて余裕すぎるくらいだし!」
「そう?じゃあ別に繋いでても文句ないよね」
「や!あの、今日はちょっと調子が悪いから」
「あはは!手繋ぐ調子ってなんだよ、変なのー!」
王馬くんが一瞬差し出しかけた手を引っ込めて、何とかまた手を繋ぐことにならずに済んだと安堵する。
余計な見栄は張るものじゃないと学んだ出来事だった。
「何か観たいのある?」
「私は特にないかなぁ…映画詳しくなくて。王馬くんは?」
「んー…じゃあこれは?」
王馬くんが手に取ったパッケージには、やけにおどろおどろしい文字で『バイトハザード』と書かれている。
彼の白い衣服を背景にしているせいか、パッケージ全体が余計に暗い色合いに見えた。
「それ…もしかしなくてもホラー?」
「ゾンビ映画とホラーは別物でしょ。ただのパニックアクションじゃん」
「そういう問題じゃないよ!あの、私そういうの苦手で…」
「じゃあこれにするね!はい、再生ー」
いつの間にディスクをセットしていたのか、王馬くんがリモコンをポチッと押すとすぐにスクリーンに映像が映し出された。
停止するためにリモコンを奪取しようにも、王馬くんは見かけによらず力があるようで全然歯が立たなかった。
「別に怖いなら観なけりゃいいじゃん」
「…それもそうだね」
昨日、同じ空間にいるからといって同じことをしなくてもいいと決めたことを思い出す。
それならと部屋を見渡すが、特に暇を潰せそうなものは見当たらない。
そもそもAVルームに映像を見るためのもの以外があるわけないのだ。
少し考えたら分かっただろうにと自分自身を戒めつつ、王馬くんに文句の一つでも言ってやろうと彼の方を向いた。
「ねぇ、何も無いんだけど」
「だろうねー。…あ、ちょっと待って今いいとこだから」
「いいとこ…?」
なんだろうと深く考えずにスクリーンに視線を移す。
「ひっ…ぎゃあああああ!」
「あっはははは!色気ねー!」
スクリーンいっぱいにたくさんゾンビが映り、それぞれが食べちゃうぞ!とでも言いたげなポーズをとっている。
心の準備も何もしていなかったためノータイムで叫び声が口からダダ漏れになった。
力いっぱいの絶叫がお気に召したのか、王馬くんはひーひー言いながらお腹を抱えて大笑いしている。
「最低!最悪!死ぬかと思った!」
「こんなことでホイホイ死んでたら今頃人類なんてとっくに絶滅してるよ!あー、笑った笑った」
「もう…怖いし恥ずかしいし生きていけない…」
床に伏せて頭隠して尻隠さず状態の私を見て、王馬くんはくつくつと笑う。
しょうがないなーと言いながら映像を停止してくれたのか、やっと室内に響いていたゾンビのお食事シーンの音が聞こえなくなった。
「もう消したから大丈夫だよ」
「本当に…?」
「ホントホント。これが嘘だったらオレの首絞めてもいいよ」
「いや、別に絞めたくないけど」
恐る恐る顔を上げれば、スクリーンにはもう何も映されていなかった。
「ほら、ホントだったでしょ?だから首絞めはお預けね」
「そもそも絞めたくないんだってば」
「にしし、やってみたら意外とクセになるかもよ?もし勢い余ってオレのこと殺しちゃったら取り憑いて怖がらせまくってやるけどね」
「ひぃ!絶対やらない!やりたくない!」
もし王馬くんが取り憑いてきたらとんでもないラップ現象を毎秒起こしてきそうだ。
そんなことを考えて背筋を凍らせると、彼はびびり散らかす私を見てまたケラケラと笑っていた。
「みょうじちゃんはからかいがいがあるね。昨日も言ったけど、ホント組織に入れてやりたいくらいだよ…オモチャ役として」
「深く聞かないからね」
「オレは悪の秘密結社の総統なんだ!構成員が一万人以上いる、結構すごい組織なんだよ」
「ちょっと、勝手に話進めないでよ」
「オレの組織はね、裏から世界を牛耳ってるんだ。世界中のマフィアだってオレの言いなりかもね」
なんだか物騒な話になってきた気がする。
世界?マフィア?聞き慣れない単語が聞こえてきて理解が追いつかない。
よく分からないが、私には想像もつかないような世界でこの人は生きてきたということなんだろうか。
「おっと、これ以上話すと本格的にみょうじちゃんの命に関わるからこの位にしておくね」
「命…!?」
「そうそう。世界を牛耳る悪の秘密結社の情報だよ?仲間になるならともかく、勧誘を断るならそのまま生かしておけなくなるじゃん」
「ひっ…!」
「ほらね、拒否権なくなるでしょ?」
王馬くんは屈託のない笑顔でそう言った。
そんなにこやかに話すような内容じゃないだろうと思ったけれど、これ以上この話を広げて命に関わると困るからもう何も言うまい。
これからもなるべく組織の話題には触れないよう気をつけよう。
そもそも今回も私からそんな話をし始めた訳では無いのだが、とりあえずそう誓っておいた。
昼食までの時間は平和にコメディ映画を見ながら過ごし、本日1回目の自由時間を無事に乗り切ることができた。
私は枕が変わるとしっかり眠れないタイプだ。
昨日の晩は中々寝付けなくて、朝のチャイムが鳴ってもすぐには起き上がることが出来なかった。
でも、とりあえず朝ごはん食べに行かないとなぁ…。
自由時間になると食堂はデートスポットと化してしまうため、それまでに朝食を済ませないと食事はしばらくお預けになってしまう。
あまりお腹がすいているわけではないけど、午前の自由時間にもしお腹がなってしまったら恥ずかしい。
急いで身支度を終え、私は食堂に向かった。
「みょうじさん、おはようございます!」
「おはよう茶柱さん。朝から元気だねぇ」
「転子から元気を取ったら何も残らんからのぅ」
「うひー…!夢野さんに転子の元気さを評価されてしまいました…!」
「そう…なのかな?」
茶柱さんと夢野さんは確か、そこにゴン太くんを交えた3人グループで昨日の自由時間をすごしていたんだっけ。
知らぬ間に仲良くなっていたんだなぁと微笑ましい気持ちになりながら、賑やかな2人に囲まれて東条さんが用意してくれた朝食を頂く。
「ん…おいしい…!」
「あら、口に合ったかしら」
「どれもこれも本当に美味しいよ!さすが東条さん」
「ふふ、良かったわ」
昼食も何が用意しておくから、と優雅に立ち去る東条さんはどの瞬間を切り取っても絵になりそうだった。
茶柱さんと夢野さんも食事の出来栄えにご満悦のようで、なんだか幸せな気分で食事を終えることが出来た。
やっぱり女の子相手の方が気が楽だなぁ。
食後にも楽しくお喋りをしていたけれどそんな時間はあっという間に過ぎていき、気がつけばもう午前の自由時間のスタートが迫っていた。
どこもかしこもデートスポット扱いになってしまうため、一旦私たちはそれぞれの個室へと戻る。
1日1回は王馬くんと過ごさないといけないわけだけど、今からどうしようか。
そう思いながら部屋の中を右往左往していると、個室のインターホンが鳴らされた。
『みょうじちゃーん!遊ぼー』
出たよ…と思いながら扉を開けると、明るい笑顔を浮かべた王馬くんにデートチケットを差し出される。
反射的にそれを受け取ると、その手を掴まれてそのままどこかへと連れていかれる。
「えぇ…どこ行くの?」
「んー、暇つぶし出来そうだからAVルーム」
「じ、自分で歩けるよ」
「そう?あんまり嫌な顔してるから逃げるんじゃないかと思ってさ」
男の子に手を握られたのなんて幼稚園の頃以来かもしれはい。あれを手を握ったとカウントしていいのかは分からないけど。
もちろん全然緊張なんかしてないけど、王馬くんがパッと私の手を離してくれて胸を撫で下ろす。
本当に、断じて緊張なんかしてないけど。
王馬くんはそんな私の様子をチラリと見て、意味深な笑みを向けてくる。
なんだかよく分からないけど腹が立った。
「初心だね~」
「そんなことないし!手とか繋ぎ慣れ過ぎてて余裕すぎるくらいだし!」
「そう?じゃあ別に繋いでても文句ないよね」
「や!あの、今日はちょっと調子が悪いから」
「あはは!手繋ぐ調子ってなんだよ、変なのー!」
王馬くんが一瞬差し出しかけた手を引っ込めて、何とかまた手を繋ぐことにならずに済んだと安堵する。
余計な見栄は張るものじゃないと学んだ出来事だった。
「何か観たいのある?」
「私は特にないかなぁ…映画詳しくなくて。王馬くんは?」
「んー…じゃあこれは?」
王馬くんが手に取ったパッケージには、やけにおどろおどろしい文字で『バイトハザード』と書かれている。
彼の白い衣服を背景にしているせいか、パッケージ全体が余計に暗い色合いに見えた。
「それ…もしかしなくてもホラー?」
「ゾンビ映画とホラーは別物でしょ。ただのパニックアクションじゃん」
「そういう問題じゃないよ!あの、私そういうの苦手で…」
「じゃあこれにするね!はい、再生ー」
いつの間にディスクをセットしていたのか、王馬くんがリモコンをポチッと押すとすぐにスクリーンに映像が映し出された。
停止するためにリモコンを奪取しようにも、王馬くんは見かけによらず力があるようで全然歯が立たなかった。
「別に怖いなら観なけりゃいいじゃん」
「…それもそうだね」
昨日、同じ空間にいるからといって同じことをしなくてもいいと決めたことを思い出す。
それならと部屋を見渡すが、特に暇を潰せそうなものは見当たらない。
そもそもAVルームに映像を見るためのもの以外があるわけないのだ。
少し考えたら分かっただろうにと自分自身を戒めつつ、王馬くんに文句の一つでも言ってやろうと彼の方を向いた。
「ねぇ、何も無いんだけど」
「だろうねー。…あ、ちょっと待って今いいとこだから」
「いいとこ…?」
なんだろうと深く考えずにスクリーンに視線を移す。
「ひっ…ぎゃあああああ!」
「あっはははは!色気ねー!」
スクリーンいっぱいにたくさんゾンビが映り、それぞれが食べちゃうぞ!とでも言いたげなポーズをとっている。
心の準備も何もしていなかったためノータイムで叫び声が口からダダ漏れになった。
力いっぱいの絶叫がお気に召したのか、王馬くんはひーひー言いながらお腹を抱えて大笑いしている。
「最低!最悪!死ぬかと思った!」
「こんなことでホイホイ死んでたら今頃人類なんてとっくに絶滅してるよ!あー、笑った笑った」
「もう…怖いし恥ずかしいし生きていけない…」
床に伏せて頭隠して尻隠さず状態の私を見て、王馬くんはくつくつと笑う。
しょうがないなーと言いながら映像を停止してくれたのか、やっと室内に響いていたゾンビのお食事シーンの音が聞こえなくなった。
「もう消したから大丈夫だよ」
「本当に…?」
「ホントホント。これが嘘だったらオレの首絞めてもいいよ」
「いや、別に絞めたくないけど」
恐る恐る顔を上げれば、スクリーンにはもう何も映されていなかった。
「ほら、ホントだったでしょ?だから首絞めはお預けね」
「そもそも絞めたくないんだってば」
「にしし、やってみたら意外とクセになるかもよ?もし勢い余ってオレのこと殺しちゃったら取り憑いて怖がらせまくってやるけどね」
「ひぃ!絶対やらない!やりたくない!」
もし王馬くんが取り憑いてきたらとんでもないラップ現象を毎秒起こしてきそうだ。
そんなことを考えて背筋を凍らせると、彼はびびり散らかす私を見てまたケラケラと笑っていた。
「みょうじちゃんはからかいがいがあるね。昨日も言ったけど、ホント組織に入れてやりたいくらいだよ…オモチャ役として」
「深く聞かないからね」
「オレは悪の秘密結社の総統なんだ!構成員が一万人以上いる、結構すごい組織なんだよ」
「ちょっと、勝手に話進めないでよ」
「オレの組織はね、裏から世界を牛耳ってるんだ。世界中のマフィアだってオレの言いなりかもね」
なんだか物騒な話になってきた気がする。
世界?マフィア?聞き慣れない単語が聞こえてきて理解が追いつかない。
よく分からないが、私には想像もつかないような世界でこの人は生きてきたということなんだろうか。
「おっと、これ以上話すと本格的にみょうじちゃんの命に関わるからこの位にしておくね」
「命…!?」
「そうそう。世界を牛耳る悪の秘密結社の情報だよ?仲間になるならともかく、勧誘を断るならそのまま生かしておけなくなるじゃん」
「ひっ…!」
「ほらね、拒否権なくなるでしょ?」
王馬くんは屈託のない笑顔でそう言った。
そんなにこやかに話すような内容じゃないだろうと思ったけれど、これ以上この話を広げて命に関わると困るからもう何も言うまい。
これからもなるべく組織の話題には触れないよう気をつけよう。
そもそも今回も私からそんな話をし始めた訳では無いのだが、とりあえずそう誓っておいた。
昼食までの時間は平和にコメディ映画を見ながら過ごし、本日1回目の自由時間を無事に乗り切ることができた。
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