9日目
おなまえ
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午後の自由時間に入るなり、個室のチャイムがけたたましく鳴り響いた。
相手が誰なのかなんて分かりきっているため、特に声もかけずに扉を開けた。
「話したいことがあるんだけど」
開口一番そう言って私の個室へ入り込んできた王馬くんは、それからかれこれ5分ほど「ちょっと待ってて」を繰り返しながらソファに腰掛けて何やら考え事をしている。
えっと、話したいことを今錬成しているのかな?
はたしてそれは話したいことがあると言える状態だったのだろうか。
どうすれば良いか分からずソワソワしながらベッドに座っていると、突然王馬くんが立ち上がった。
ビックリして思わず私も立ち上がると、微妙な距離感で2人立ち尽くしている今の状況がシュールに感じられて少し笑ってしまいそうになった。
「……何で笑ってんの」
「くっ……ううん、なんでも……ぷはっ、ダメだ!耐えろ私…!」
笑うなと言い聞かせれば言い聞かせるほど笑いが込み上げてくる。
笑いを堪える私の顔を指して、王馬くんも酷い顔だと言いながらゲラゲラと笑っていた。
ひとしきり笑って、笑い疲れた王馬くんがまたどかっとソファに腰を落とす。
「はー、もう。みょうじちゃんのせいでほっぺが痛くなっちゃった」
「ごめん、なんか1回面白くなっちゃったら止められなくて」
私がそう答えると、王馬くんはくすっと笑って私の方を向いた。
「ねぇ、みょうじちゃん」
「何?」
「みょうじちゃんってオレのことどう思ってんの?」
「…はい?」
どう、というのは?
王馬くんは王馬くんだよね?
そう答えると、王馬くんはそういうことじゃないと口をとがらせた。
じゃあどういうことだろうと首を傾げていると、彼はしばし悩んだ様子を見せたあとまた口を開く。
「あー…じゃあさ、ここであったこと覚えてる?」
「私の部屋でってことだよね?…えっと、意外としっかり看病してくれるんだなぁ…と思ったことは覚えてるけど」
「他には?」
「他!?えー…あっ、しょうが湯もらった!それで、馬鹿は風邪ひかないから予防のためってすごい馬鹿にされた」
「にしし、そんなこともあったね。で、他は?」
「他…他…うーん、その日ってそんなに色々あったかなぁ…?」
思い返しても他にどんな事があったのか…王馬くんが何のことを言っているのかが分からない。
あの時は熱もあったし、ところどころ記憶が抜け落ちていたりするんだろうか。
「やっぱり覚えてないか…」
「何か言った?」
「なんでもなーい!…ね、思い出せるように手伝ってあげよっか」
「そんなことできるの?」
「分かんないけど、似た状況になればなにか思い出すかもしれないよ?」
「まぁ…そういうこともあるのかな…?」
了承ってことでいいよね?と言った後、王馬くんは立ち上がって私の近くへやって来た。
そして更に近づいて…え、まだ近づくの?
どんどん接近してくる彼の顔から遠ざかれば、遠ざかった分だけ距離を詰めてくる。
いや、私が遠ざけた距離以上に近づいてきているかもしれない。
「ちょ、ちょっと待って!どこまで来るの」
「んー、前と同じとこまでかな」
「はい!?いやいや、私たちこんなに近づいたことあったっけ!?」
「あったよー。みょうじちゃんは忘れちゃったみたいだけどさ」
じりじりと迫り来る王馬くんから逃げるように後退していた私だったが、ついに壁まで追いやられて逃げ場が無くなった。
脇からすり抜けようかと考えた瞬間、それを見透かしたように王馬くんが両手を壁について進路を塞ぐ。
どうしよう。どうしよう。
まともに顔を見る勇気もなく少し視線を下げたところで、ちょうど私の額のところにふっと息がかかった。
「どう?何か思い出した?」
「へっ!?あ…いや、その…思い出してない…というか、もしかしてまた王馬くんの嘘に騙されてるだけ…なのかな、なんて」
「にしし、残念でした。今回は嘘じゃないんだよねー」
王馬くんが喋る度、息がかかって前髪が揺れる。
なんでこんなことに?という戸惑いと、緊張と恥ずかしさで本当に脳がドロドロに溶けて沸騰するんじゃないかと思うほど何も考えられない。
少しでも落ち着けないかとぎゅっと目を閉じると、まぶたの裏には今よりも近い距離で微笑みかける王馬くんの姿が見えた。
そうだ、彼に看病をされた日にも見たこの幻は一体なんなのだろう。
…だめだ、心臓がうるさすぎて考えがまとまらない。
「も、もう無理~~~っ!」
頭の中身が溶けだす前にと、私はその場にしゃがみこみ壁と王馬くんの間からなんとか抜け出した。
そしてそのまま部屋を飛び出し、顔の熱を冷ますように全力で駆け出した。
*****
「追いかけてこないでよー!」
「みょうじちゃんが逃げるからでしょー!」
寄宿舎を出てすぐのところから、私と王馬くんの2度目の追いかけっこが始まった。
そういえば前の時はこんな感じで30分くらい走るはめになった気がする。
今回も長丁場になるのだろうか…と覚悟を決めるよりも前に、裏庭の入口付近まで走ったあたりで私はあっさりと捕まった。
「な、なんで…前はもっと長く続いたのに…」
「にしし、あの時は手加減してあげてたからね」
「手加減…!?」
「捕まえられそうで捕まえられない、絶妙なさじ加減だったでしょ?」
「えぇ?…うわ、確かにそうだったかも」
初めて知る衝撃的な事実に、ここまで全力疾走してきたことも相まってぐったりとしてしまう。
「なんで、わざわざそんなこと」
「あは、なんでだろうね。なんとなく、そういうのもつまらなくないかなって思ってさ」
「なんとなく!?」
王馬くんのなんとなくが原因で私はあんなに走らされたのか。
不満のひとつやふたつ湧き出てくるものはあったが、王馬くんが楽しそうにしていたから言うのは止めておいた。
「それにしても、こんな行き止まりに逃げるなんてさ。やっぱりみょうじちゃんってバカだよね!」
「くっ…何も考えてなかった」
「にしし。そういうとこ、つまんなくなくて嫌いじゃないよ」
「なんか分かりにくい言い方だなぁ。面白くて好きって言ってくれる方が嬉しいのに」
「へー、みょうじちゃんはオレに好きって言われたら嬉しいんだ」
「えっ?」
少し間があいてから自分の発言がなんだか恥ずかしいものだったと理解する。
確かに、今の表現だとまるでそう言われたかったという意味に思えてしまう。
「ち、ちがっ、そういうことではなくて…否定表現より肯定表現の方がポジティブな意味に捉えやすいっていうか…その…!」
「はいはい。じゃあ今日はそういうことでいいよ」
「今日はとかじゃなくて!」
「オレさ、みょうじちゃんのこと好きだよ」
「すっ…な、え!?」
今何て言った?と言いたかったのに、あまりの衝撃に呂律が回らない。
いつもより2倍くらい多めの瞬きごしに見える王馬くんは全くもって普段通りで、やっぱり聞き間違いだったのだろうかと思えてきた。
「みょうじちゃんってすっげーバカで思い込み激しくて鈍臭くて、ビビりで意地っ張りでそのくせ変なとこ引っ込み思案でさ」
「ん?あれ、悪口…?」
「いちいち反応大きくて、昨日今日で実はかなり面倒臭い性格してるってこともよく分かったところなんだけど…でも、そういうところもひっくるめて好きになっちゃった」
それは一体どういうことなのか。
好きってどういう意味だっけ?家族とか友達とかにだって好きって感情はあるよね。
王馬くんがあまりにもいつも通りの喋り方だったから。
全力疾走後のムードもへったくれもないようなシチュエーションだったから。
色んな理由から、私には今のがどんな意図で紡がれた言葉なのか理解することが出来なかった。
「ねぇ、みょうじちゃんはオレのことどう思ってるの?」
自室にいた時にも投げかけられた言葉。
ここへ来てほんの少し気まずそうな表情をする王馬くんに、「そんなまさか」と思っていた可能性がじわじわと浮上してくる。
私は恋愛的な意味での告白をされたのかもしれない。
王馬くんに。あの、王馬くんに。
「ど、どどどっ…どう、と言われましても…」
「ぷっ…吃りすぎでしょ。声も裏返ってるし。はぁ…ホント、みょうじちゃん相手だと雰囲気なんてあったもんじゃないね」
「王馬くんにだけは言われたくないんですけど!?」
「たはー!やっぱりそう思う?」
なんだかおかしくなって2人笑い合っていると、本日最後の自由時間が終わりを告げるチャイムが鳴る。
戻ろうか、と王馬くんに言われそれに従う。
なんだか色々なことがうやむやになってしまった気がする。
かと言って、もう寄宿舎の目の前まで来てしまった今、自分から話を切り出す勇気もなかった。
それじゃあ、と各自の部屋へ別れる間際に王馬くんが口を開く。
「話の続きはまた明日ね」
「ひゃ、ひゃいっ!」
一晩の猶予を貰ったところで、私は自分の気持ちの整理をつけられるのだろうか。
夕食時にも私はソワソワしてしまっていたようで、赤松さんや春川さんにかなり不審がられてしまった。
少し離れたところにいた王馬くんが笑いをこらえている姿は癪に障ったけれど、誰のせいで!なんて言えるわけもなく適当なことを言って誤魔化してしまった。
明日が最終日だ。
最後の最後にこんなにも眠れない日がやって来ることになるなんて夢にも思わなかった。
ここへ来てからの数日間の思い出を振り返りながら、私はそっと目を閉じた。
相手が誰なのかなんて分かりきっているため、特に声もかけずに扉を開けた。
「話したいことがあるんだけど」
開口一番そう言って私の個室へ入り込んできた王馬くんは、それからかれこれ5分ほど「ちょっと待ってて」を繰り返しながらソファに腰掛けて何やら考え事をしている。
えっと、話したいことを今錬成しているのかな?
はたしてそれは話したいことがあると言える状態だったのだろうか。
どうすれば良いか分からずソワソワしながらベッドに座っていると、突然王馬くんが立ち上がった。
ビックリして思わず私も立ち上がると、微妙な距離感で2人立ち尽くしている今の状況がシュールに感じられて少し笑ってしまいそうになった。
「……何で笑ってんの」
「くっ……ううん、なんでも……ぷはっ、ダメだ!耐えろ私…!」
笑うなと言い聞かせれば言い聞かせるほど笑いが込み上げてくる。
笑いを堪える私の顔を指して、王馬くんも酷い顔だと言いながらゲラゲラと笑っていた。
ひとしきり笑って、笑い疲れた王馬くんがまたどかっとソファに腰を落とす。
「はー、もう。みょうじちゃんのせいでほっぺが痛くなっちゃった」
「ごめん、なんか1回面白くなっちゃったら止められなくて」
私がそう答えると、王馬くんはくすっと笑って私の方を向いた。
「ねぇ、みょうじちゃん」
「何?」
「みょうじちゃんってオレのことどう思ってんの?」
「…はい?」
どう、というのは?
王馬くんは王馬くんだよね?
そう答えると、王馬くんはそういうことじゃないと口をとがらせた。
じゃあどういうことだろうと首を傾げていると、彼はしばし悩んだ様子を見せたあとまた口を開く。
「あー…じゃあさ、ここであったこと覚えてる?」
「私の部屋でってことだよね?…えっと、意外としっかり看病してくれるんだなぁ…と思ったことは覚えてるけど」
「他には?」
「他!?えー…あっ、しょうが湯もらった!それで、馬鹿は風邪ひかないから予防のためってすごい馬鹿にされた」
「にしし、そんなこともあったね。で、他は?」
「他…他…うーん、その日ってそんなに色々あったかなぁ…?」
思い返しても他にどんな事があったのか…王馬くんが何のことを言っているのかが分からない。
あの時は熱もあったし、ところどころ記憶が抜け落ちていたりするんだろうか。
「やっぱり覚えてないか…」
「何か言った?」
「なんでもなーい!…ね、思い出せるように手伝ってあげよっか」
「そんなことできるの?」
「分かんないけど、似た状況になればなにか思い出すかもしれないよ?」
「まぁ…そういうこともあるのかな…?」
了承ってことでいいよね?と言った後、王馬くんは立ち上がって私の近くへやって来た。
そして更に近づいて…え、まだ近づくの?
どんどん接近してくる彼の顔から遠ざかれば、遠ざかった分だけ距離を詰めてくる。
いや、私が遠ざけた距離以上に近づいてきているかもしれない。
「ちょ、ちょっと待って!どこまで来るの」
「んー、前と同じとこまでかな」
「はい!?いやいや、私たちこんなに近づいたことあったっけ!?」
「あったよー。みょうじちゃんは忘れちゃったみたいだけどさ」
じりじりと迫り来る王馬くんから逃げるように後退していた私だったが、ついに壁まで追いやられて逃げ場が無くなった。
脇からすり抜けようかと考えた瞬間、それを見透かしたように王馬くんが両手を壁について進路を塞ぐ。
どうしよう。どうしよう。
まともに顔を見る勇気もなく少し視線を下げたところで、ちょうど私の額のところにふっと息がかかった。
「どう?何か思い出した?」
「へっ!?あ…いや、その…思い出してない…というか、もしかしてまた王馬くんの嘘に騙されてるだけ…なのかな、なんて」
「にしし、残念でした。今回は嘘じゃないんだよねー」
王馬くんが喋る度、息がかかって前髪が揺れる。
なんでこんなことに?という戸惑いと、緊張と恥ずかしさで本当に脳がドロドロに溶けて沸騰するんじゃないかと思うほど何も考えられない。
少しでも落ち着けないかとぎゅっと目を閉じると、まぶたの裏には今よりも近い距離で微笑みかける王馬くんの姿が見えた。
そうだ、彼に看病をされた日にも見たこの幻は一体なんなのだろう。
…だめだ、心臓がうるさすぎて考えがまとまらない。
「も、もう無理~~~っ!」
頭の中身が溶けだす前にと、私はその場にしゃがみこみ壁と王馬くんの間からなんとか抜け出した。
そしてそのまま部屋を飛び出し、顔の熱を冷ますように全力で駆け出した。
*****
「追いかけてこないでよー!」
「みょうじちゃんが逃げるからでしょー!」
寄宿舎を出てすぐのところから、私と王馬くんの2度目の追いかけっこが始まった。
そういえば前の時はこんな感じで30分くらい走るはめになった気がする。
今回も長丁場になるのだろうか…と覚悟を決めるよりも前に、裏庭の入口付近まで走ったあたりで私はあっさりと捕まった。
「な、なんで…前はもっと長く続いたのに…」
「にしし、あの時は手加減してあげてたからね」
「手加減…!?」
「捕まえられそうで捕まえられない、絶妙なさじ加減だったでしょ?」
「えぇ?…うわ、確かにそうだったかも」
初めて知る衝撃的な事実に、ここまで全力疾走してきたことも相まってぐったりとしてしまう。
「なんで、わざわざそんなこと」
「あは、なんでだろうね。なんとなく、そういうのもつまらなくないかなって思ってさ」
「なんとなく!?」
王馬くんのなんとなくが原因で私はあんなに走らされたのか。
不満のひとつやふたつ湧き出てくるものはあったが、王馬くんが楽しそうにしていたから言うのは止めておいた。
「それにしても、こんな行き止まりに逃げるなんてさ。やっぱりみょうじちゃんってバカだよね!」
「くっ…何も考えてなかった」
「にしし。そういうとこ、つまんなくなくて嫌いじゃないよ」
「なんか分かりにくい言い方だなぁ。面白くて好きって言ってくれる方が嬉しいのに」
「へー、みょうじちゃんはオレに好きって言われたら嬉しいんだ」
「えっ?」
少し間があいてから自分の発言がなんだか恥ずかしいものだったと理解する。
確かに、今の表現だとまるでそう言われたかったという意味に思えてしまう。
「ち、ちがっ、そういうことではなくて…否定表現より肯定表現の方がポジティブな意味に捉えやすいっていうか…その…!」
「はいはい。じゃあ今日はそういうことでいいよ」
「今日はとかじゃなくて!」
「オレさ、みょうじちゃんのこと好きだよ」
「すっ…な、え!?」
今何て言った?と言いたかったのに、あまりの衝撃に呂律が回らない。
いつもより2倍くらい多めの瞬きごしに見える王馬くんは全くもって普段通りで、やっぱり聞き間違いだったのだろうかと思えてきた。
「みょうじちゃんってすっげーバカで思い込み激しくて鈍臭くて、ビビりで意地っ張りでそのくせ変なとこ引っ込み思案でさ」
「ん?あれ、悪口…?」
「いちいち反応大きくて、昨日今日で実はかなり面倒臭い性格してるってこともよく分かったところなんだけど…でも、そういうところもひっくるめて好きになっちゃった」
それは一体どういうことなのか。
好きってどういう意味だっけ?家族とか友達とかにだって好きって感情はあるよね。
王馬くんがあまりにもいつも通りの喋り方だったから。
全力疾走後のムードもへったくれもないようなシチュエーションだったから。
色んな理由から、私には今のがどんな意図で紡がれた言葉なのか理解することが出来なかった。
「ねぇ、みょうじちゃんはオレのことどう思ってるの?」
自室にいた時にも投げかけられた言葉。
ここへ来てほんの少し気まずそうな表情をする王馬くんに、「そんなまさか」と思っていた可能性がじわじわと浮上してくる。
私は恋愛的な意味での告白をされたのかもしれない。
王馬くんに。あの、王馬くんに。
「ど、どどどっ…どう、と言われましても…」
「ぷっ…吃りすぎでしょ。声も裏返ってるし。はぁ…ホント、みょうじちゃん相手だと雰囲気なんてあったもんじゃないね」
「王馬くんにだけは言われたくないんですけど!?」
「たはー!やっぱりそう思う?」
なんだかおかしくなって2人笑い合っていると、本日最後の自由時間が終わりを告げるチャイムが鳴る。
戻ろうか、と王馬くんに言われそれに従う。
なんだか色々なことがうやむやになってしまった気がする。
かと言って、もう寄宿舎の目の前まで来てしまった今、自分から話を切り出す勇気もなかった。
それじゃあ、と各自の部屋へ別れる間際に王馬くんが口を開く。
「話の続きはまた明日ね」
「ひゃ、ひゃいっ!」
一晩の猶予を貰ったところで、私は自分の気持ちの整理をつけられるのだろうか。
夕食時にも私はソワソワしてしまっていたようで、赤松さんや春川さんにかなり不審がられてしまった。
少し離れたところにいた王馬くんが笑いをこらえている姿は癪に障ったけれど、誰のせいで!なんて言えるわけもなく適当なことを言って誤魔化してしまった。
明日が最終日だ。
最後の最後にこんなにも眠れない日がやって来ることになるなんて夢にも思わなかった。
ここへ来てからの数日間の思い出を振り返りながら、私はそっと目を閉じた。
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