7日目
おなまえ
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昼食時に東条さんに包みを一つ渡して、残りの一つが今私の手元にあるわけだが。
うっかりしていた。今日は午後も王馬くんに会わなくていい日なんだ。
でも作ってしまったものを持っておくのも気が引ける。
こんな時に限って昼食のタイミングは合わなかったし、どうしたものか…。
色々考えに考えた結果、自由時間の前にささっと渡してしまおうという結論に至った。
気は進まないけど、私はしっかりとお礼ができる常識的な女なんだ。頑張れ私。
と、午前中と同じくまたしても王馬くんの個室の前でうじうじムーブをかましていた。
午前中と違うのは、ここで扉が開いて王馬くんが出てこないことだろうか。
そういえば午後も予定があると言っていた気がするし、もう出かけた後なのかもしれない。
一応インターホンを鳴らしてみたが変わらず反応はなく、適当な袋にお菓子の包みを入れてドアノブに吊るして置くことにした。
*****
つかの間の王馬くんからの解放。
清々しい気持ちはあれど、特にやりたいことがある訳でもなく時間を持て余す結果になってしまった。
そういえば私、思い返せばまともに交流した相手が王馬くんくらいしかいないのかもしれない。
卒業という目的のためそういう取引をしているのだから当然と言えば当然なんだけど、自分の交友関係の狭さに軽く落ち込みながら中庭を歩いていた。
「なんか、退屈だな…」
無意識の内にそう呟いていてハッとする。
ここへ来る前は1人で過ごす時間は嫌いじゃない方だったはずなのに。
毎日毎日誰かと過ごしている内に、1人の過ごし方を忘れてしまったのかもしれない。
まぁ…単純にここでは出来ることも限られてるからってだけだとは思うけど。
王馬くんから解放された!と、晴れやかだった午前中の気分はどこへやら。
来た道をとぼとぼと引き返し、食堂へ向かうことにした。
きっとそこなら誰か一人くらいはいるだろう。
もし誰かがいたら、ちゃんと私から話しかけるんだ。
仲良くなるための第一歩!うん、頑張れ私!
「お邪魔しまーす…?」
食堂にたどり着いた私は不要な挨拶と共に扉を開く。
そっと中を覗けば、そこには最原くんと春川さんというなんとも珍しい組み合わせの2人がいた。
2人とも先程作ったお菓子の包みを持っており、何やら相談している様子だ。
「珍しい組み合わせだね、何してるの?」
「あ、みょうじさん。さっきはありがとう。これを渡しに行こうかと、春川さんと話してたんだ」
「…1体1の時に渡すと、なんか大袈裟に捉えられそうだから」
「あぁ、なるほどね」
つまり恥ずかしいってことかな?
そう思ったけど口に出すのはぐっと堪えた。…つもりだったが、やっぱり無意識に言葉にしていたようで、春川さんに軽く睨まれた。
最原はまぁまぁ、と困ったように笑っている。
「と、ところで2人は誰に渡す予定で…?」
そう訪ねてみれば、最原くんはあっさりと「赤松さんだよ」と教えてくれた。
春川さんはなにやらもごもごと口を動かしている。
照れるとこんな感じになるんだな…可愛い。
ご多分にもれずこれも口から発されていたようで、春川さんがキッと目を釣りあげた。
「うるさい!別に、百田に渡すだけで照れたりしないし」
照れながらのキレながらではあったが、春川さんもお相手を教えてくれた。
私は2人のプレゼント大作戦への同行を申し出、いざ出発…というところで思い出した。
ハイエンドヘッドホン、カジノで交換してたんだった。
「最原くん、これも赤松さんに渡しなよ」
「…え?そ、そんな、これ結構高価だったよね?受け取れないよ」
「いいのいいの!ほら、この前カジノで色々あった後に残ったコインで当てたやつなの。元手は私のコインじゃないから!」
「そ、そうなんだ。すごいね…ありがとう」
最原くんは戸惑いながらもヘッドホンを受け取ってくれた。
うん、赤松さんもきっと最原くんから貰った方が嬉しいんじゃないかな?仲良いみたいだし。
念のため最原くんには私から受け取ったことは伏せるようにと強く伝えておいた。
*****
「赤松さん、どこにいるだろうね」
「うーん…やっぱり研究教室の方だったのかな?」
私と最原くん、そして春川さんの3人で赤松さんを探して中庭を歩いていた。
百田くんは偶然にも食堂を出て直ぐに会うことが出来、春川さんは無事に贈り物を渡すミッションを完遂している。
渡す…と言うよりは押し付ける?投げつける?って感じだった気もするけど。
でも百田くんは嬉しそうだったし、春川さんも嬉し…かったのか表情からは分からないけど、多分きっとそうだったんだろう。そうに違いない。分からないけど。
「あれー?最原ちゃんもやるねー。女の子2人連れで自由行動なんてさ!」
背後から聞こえたその声に、まるで条件反射のように私の足が止まる。
「そ、そういうんじゃないよ、王馬くん…!」
「えー?そういうのってどういうの?ねぇねぇ最原ちゃん、どういうのなのか教えてよ!」
「ひゃっひゃっひゃ!童貞ダサい原にお似合いの処女くせー女ども連れやがって!…まさか…自由行動にかこつけて、これから童貞捨てに行くんじゃねーだろうな!?」
王馬くんはどうやら入間さんと一緒だったらしい。
入間さんのぶっ飛び発言も気になるところではあるが、最原くんいじりを楽しむ王馬くんの対象がいつか自分へ向けられるのではないかと、そちらの不安で頭がいっぱいになる。
せっかく今日は平和に過ごせると思ったのに…!
ちらりと王馬くんの方へ視線を向けると、バッチリと目が合ってしまった。
やばいと思って目を逸らしたが、意外にも不愉快な言葉を投げつけられることはなく。
恐る恐るもう一度彼に視線を向けたが、今度は目が合うことすらもなかった。
あれ?いつもだったらニヤニヤしながら嫌味の一つでも言ってきそうなのにな…?
そう思ったけれど、何事もないならそれに越したことはない。
ということで心の中で最原くんに合掌しながら、私はひたすら空気に徹することにした。
「…はぁ、本当最悪」
「あ、あはは…まぁ、あの2人が揃うとね…」
結局、あの2人のダル絡みは春川さんの『忙しい』の一言で切り抜けることが出来た。
最原くんには悪いけど、お陰様で今日を平和に終えることが出来そうです…。
王馬くんに対して、なんだか様子がおかしい?と一瞬思ったけど…別に私は弄られたいわけではないからこれでいいの。
むしろ結果を見ればベストかもしれない。最原くんには申し訳ないけど。
「あの2人、揃うとあんな感じなんだね。ある意味無敵な組み合わせ…」
「そうだね。凸凹コンビって感じだけど、意外とよく一緒にいるんだよね…。みょうじさんも気をつけた方がいいよ。よく王馬くんに…その」
「目付けられてるから」
「そうそう。そこに入間さんがいると色々上乗せされちゃうから」
「な、なるほど…気をつけます…」
最原くん、春川さんの話によると割とよく一緒にいて、あんな感じで歩く公害…は言い過ぎか。ちょっとしたやっかい名物的なものになってるのだとか。
…知らなかったな。私と過ごさなかったタイミングで王馬くんが何してるのかなんて、知る由もないんだけど。関係ないし。
別にいいんだけど、いいんだけど…なんだろう?まるで喉に刺さった魚の小骨みたいに、心の隅っこの方で何かが引っかかっている気がしてならなかった。
うっかりしていた。今日は午後も王馬くんに会わなくていい日なんだ。
でも作ってしまったものを持っておくのも気が引ける。
こんな時に限って昼食のタイミングは合わなかったし、どうしたものか…。
色々考えに考えた結果、自由時間の前にささっと渡してしまおうという結論に至った。
気は進まないけど、私はしっかりとお礼ができる常識的な女なんだ。頑張れ私。
と、午前中と同じくまたしても王馬くんの個室の前でうじうじムーブをかましていた。
午前中と違うのは、ここで扉が開いて王馬くんが出てこないことだろうか。
そういえば午後も予定があると言っていた気がするし、もう出かけた後なのかもしれない。
一応インターホンを鳴らしてみたが変わらず反応はなく、適当な袋にお菓子の包みを入れてドアノブに吊るして置くことにした。
*****
つかの間の王馬くんからの解放。
清々しい気持ちはあれど、特にやりたいことがある訳でもなく時間を持て余す結果になってしまった。
そういえば私、思い返せばまともに交流した相手が王馬くんくらいしかいないのかもしれない。
卒業という目的のためそういう取引をしているのだから当然と言えば当然なんだけど、自分の交友関係の狭さに軽く落ち込みながら中庭を歩いていた。
「なんか、退屈だな…」
無意識の内にそう呟いていてハッとする。
ここへ来る前は1人で過ごす時間は嫌いじゃない方だったはずなのに。
毎日毎日誰かと過ごしている内に、1人の過ごし方を忘れてしまったのかもしれない。
まぁ…単純にここでは出来ることも限られてるからってだけだとは思うけど。
王馬くんから解放された!と、晴れやかだった午前中の気分はどこへやら。
来た道をとぼとぼと引き返し、食堂へ向かうことにした。
きっとそこなら誰か一人くらいはいるだろう。
もし誰かがいたら、ちゃんと私から話しかけるんだ。
仲良くなるための第一歩!うん、頑張れ私!
「お邪魔しまーす…?」
食堂にたどり着いた私は不要な挨拶と共に扉を開く。
そっと中を覗けば、そこには最原くんと春川さんというなんとも珍しい組み合わせの2人がいた。
2人とも先程作ったお菓子の包みを持っており、何やら相談している様子だ。
「珍しい組み合わせだね、何してるの?」
「あ、みょうじさん。さっきはありがとう。これを渡しに行こうかと、春川さんと話してたんだ」
「…1体1の時に渡すと、なんか大袈裟に捉えられそうだから」
「あぁ、なるほどね」
つまり恥ずかしいってことかな?
そう思ったけど口に出すのはぐっと堪えた。…つもりだったが、やっぱり無意識に言葉にしていたようで、春川さんに軽く睨まれた。
最原はまぁまぁ、と困ったように笑っている。
「と、ところで2人は誰に渡す予定で…?」
そう訪ねてみれば、最原くんはあっさりと「赤松さんだよ」と教えてくれた。
春川さんはなにやらもごもごと口を動かしている。
照れるとこんな感じになるんだな…可愛い。
ご多分にもれずこれも口から発されていたようで、春川さんがキッと目を釣りあげた。
「うるさい!別に、百田に渡すだけで照れたりしないし」
照れながらのキレながらではあったが、春川さんもお相手を教えてくれた。
私は2人のプレゼント大作戦への同行を申し出、いざ出発…というところで思い出した。
ハイエンドヘッドホン、カジノで交換してたんだった。
「最原くん、これも赤松さんに渡しなよ」
「…え?そ、そんな、これ結構高価だったよね?受け取れないよ」
「いいのいいの!ほら、この前カジノで色々あった後に残ったコインで当てたやつなの。元手は私のコインじゃないから!」
「そ、そうなんだ。すごいね…ありがとう」
最原くんは戸惑いながらもヘッドホンを受け取ってくれた。
うん、赤松さんもきっと最原くんから貰った方が嬉しいんじゃないかな?仲良いみたいだし。
念のため最原くんには私から受け取ったことは伏せるようにと強く伝えておいた。
*****
「赤松さん、どこにいるだろうね」
「うーん…やっぱり研究教室の方だったのかな?」
私と最原くん、そして春川さんの3人で赤松さんを探して中庭を歩いていた。
百田くんは偶然にも食堂を出て直ぐに会うことが出来、春川さんは無事に贈り物を渡すミッションを完遂している。
渡す…と言うよりは押し付ける?投げつける?って感じだった気もするけど。
でも百田くんは嬉しそうだったし、春川さんも嬉し…かったのか表情からは分からないけど、多分きっとそうだったんだろう。そうに違いない。分からないけど。
「あれー?最原ちゃんもやるねー。女の子2人連れで自由行動なんてさ!」
背後から聞こえたその声に、まるで条件反射のように私の足が止まる。
「そ、そういうんじゃないよ、王馬くん…!」
「えー?そういうのってどういうの?ねぇねぇ最原ちゃん、どういうのなのか教えてよ!」
「ひゃっひゃっひゃ!童貞ダサい原にお似合いの処女くせー女ども連れやがって!…まさか…自由行動にかこつけて、これから童貞捨てに行くんじゃねーだろうな!?」
王馬くんはどうやら入間さんと一緒だったらしい。
入間さんのぶっ飛び発言も気になるところではあるが、最原くんいじりを楽しむ王馬くんの対象がいつか自分へ向けられるのではないかと、そちらの不安で頭がいっぱいになる。
せっかく今日は平和に過ごせると思ったのに…!
ちらりと王馬くんの方へ視線を向けると、バッチリと目が合ってしまった。
やばいと思って目を逸らしたが、意外にも不愉快な言葉を投げつけられることはなく。
恐る恐るもう一度彼に視線を向けたが、今度は目が合うことすらもなかった。
あれ?いつもだったらニヤニヤしながら嫌味の一つでも言ってきそうなのにな…?
そう思ったけれど、何事もないならそれに越したことはない。
ということで心の中で最原くんに合掌しながら、私はひたすら空気に徹することにした。
「…はぁ、本当最悪」
「あ、あはは…まぁ、あの2人が揃うとね…」
結局、あの2人のダル絡みは春川さんの『忙しい』の一言で切り抜けることが出来た。
最原くんには悪いけど、お陰様で今日を平和に終えることが出来そうです…。
王馬くんに対して、なんだか様子がおかしい?と一瞬思ったけど…別に私は弄られたいわけではないからこれでいいの。
むしろ結果を見ればベストかもしれない。最原くんには申し訳ないけど。
「あの2人、揃うとあんな感じなんだね。ある意味無敵な組み合わせ…」
「そうだね。凸凹コンビって感じだけど、意外とよく一緒にいるんだよね…。みょうじさんも気をつけた方がいいよ。よく王馬くんに…その」
「目付けられてるから」
「そうそう。そこに入間さんがいると色々上乗せされちゃうから」
「な、なるほど…気をつけます…」
最原くん、春川さんの話によると割とよく一緒にいて、あんな感じで歩く公害…は言い過ぎか。ちょっとしたやっかい名物的なものになってるのだとか。
…知らなかったな。私と過ごさなかったタイミングで王馬くんが何してるのかなんて、知る由もないんだけど。関係ないし。
別にいいんだけど、いいんだけど…なんだろう?まるで喉に刺さった魚の小骨みたいに、心の隅っこの方で何かが引っかかっている気がしてならなかった。
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